CPIが予想より低かったら。
FOMCが終わったら。
経済指標(小売売上高・PMI)が悪かったら。
株が上がると思っていました。
蓋を開けてみれば3日続落。FOMC直後には暴騰を見せましたが、その後は芳しくなく。個人的には重要イベントを無難にクリアしたかと思っていましたが、週間ベースでS&P500は2.09%下落しました。
まずは12日の消費者物価指数(CPI)から確認していきたいと思います。金融政策の行く末を占うCPIは、前年比7.1%と前回の7.7%・市場予想の7.3%ともに下回りました。
まだ7%と高い水準ですが、中古車は前年比でもマイナスに転じ、前月比で見ればエネルギーやメディカルサービスもマイナスに転じるまずまずの結果だと思います。やはり家賃等を含むサービス分野の水準が高く、今後の雇用統計に注目が集まります。
今後のCPIについては楽観的な見方が多いようです。最近注目を集めているウォールストリートジャーナルのニック記者は、1年前の比較ではなく直近の年率化を見ると明らかにマイルドになっているとコメントしています。
具体的には直近3か月を年率化(4倍)したものであれば、4.3%であり「7%」で見るべきではないということです。CPIの発表を受けS&P500は一時4100を超える水準まで大きく上昇したのですが、翌日のFOMCを控え、4020(前日比+0.74%)で引けました。
CPIの発表を受けた翌日、注目のFOMCは市場の予想通り0.5%の利上げでした。市場の予想通りということでマーケットは一時ポジティブに反応したのですが、9月と比較してターミナルレートが引き上げられたとの見方(=タカ派)から株価は下落に転じました。
まだ前年比7%という高いインフレ水準にあるのですから、ここでパウエル議長もハト派の発言をしなことは分かり切っていることだと思っていました。しかし、ジャクソンホール(8月)と同様にマーケットは早期の利下げ発言を待っているようで、個人的には「今までと同じスタンスじゃん。」とイベントを無難に終えたかと思っていたのですが、マーケットは違っていました。
ターミナルレート(2023年の政策金利予想)については4.6%から5.1%に上昇したことや、2023年のGDP予想も1.2%から0.5%に下落しましたが、9月から現在に掛けてFRB高官たちは散々「油断はしない(ブラード総裁は政策金利を7%まで上げるべき!と言っています。」とコメントしてきたのですから、”市場とFedの乖離”をまざまざと認識させられました。
ゴールドマン・サックスの予想では、ターミナルレートを5.00%-5.25%と予想し、2023年の2月・3月・5月で利上げを終了すると見込んでいます。一方で、先物から予想された市場の予想(期待)は、ターミナルレートを4.89%と予想しており、ここにも市場とFedの認識の乖離が存在しています。
確かに1年前を振り返って見れば「インフレは一時的」と言い出したのはFedでしたから、景気を犠牲にしてまでここまで急速な利上げを行うことには疑問が生じます。キャシー・ウッズ等らも、現在の政策の方向性には反対の意を示しています。(ポジショントークも十分あるかと思いますが。)
そしてこの1週間の締めくくりは小売売上高です。前月比0.6%減少を記録しました。市場予想の0.2%減少も下回り、11カ月ぶりの大きさで減少となりました。
「悪いニュースは良いニュース。」
とISM景況指数や失業率が下がれば株価が上がる(背景には、インフレを起因とした利上げが止まるという期待)現象が続いていたので、個人的には「株価が上がる」と思っていたのですが、期待は外れました。
株価がネガティブとなった理由としては、FOMCでタカ派姿勢=利上げはしばらく終了しないことが示され、予想以上に悪かった小売売上高を見て
「悪いニュースは悪いニュース。」
と市場が受け止め始めたというものです。(なんじゃそりゃ。)
当局が政策を過度に引き締めるリスクが高まっており、多くの投資家は2023年のリセッションをより懸念してきたというものです。
逆に株価を上げるための良いニュースは?ということになるのですが、重要イベントを「悪いニュース」で消化してしまった今、年末ラリーを点火する材料がないということになり、今年のサンタクロースからのプレゼントは期待できそうにありません。