実質金利見通しが引き上げられたFOMC。

インフレショック
Federal Reserve System Fed of USA chairman press conference concept. Tribune with symbol and flag of Fedreal Reserve. 3d illustration

21日のFOMCは市場の予想通り「政策金利据え置き」となりました。

FOMC、政策金利を据え置き-年内あと1回の追加利上げを示唆
米連邦公開市場委員会(FOMC)は19、20日に開催した定例会合で、主要政策金利の据え置きを決定。一方で、年内あと1回追加で金利を引き上げ、その後は高水準の金利をより長期にわたって維持する公算が大きいことを示唆した。

四半期経済予測(いわゆる「ドット・チャート」)では、FOMC参加者19人のうち12人が年内あと1回の利上げを支持していることが示されました。

左が2023年6月時の予想、右が2023年9月時の予想

また、2024―25年の政策金利の想定が従来から引き上げられたことが

「一時停止でなくスキップ」

という”タカ派”のサプライズとなりました。

そのため、FOMC結果公表当日は、それまでは前日終値を上回って上昇していたものの、結果公表を機に株価は下落に転じました。

足元のインフレ率が落ち着いて来たことから、市場の注目点は2023年末の水準ではなく、”その先”に移っており、2024年・2025年の政策金利予想が両者ともに+0.5%となったことがサプライズでした。加えて、想定外に米景気は底堅く推移しており、いままでの中立金利(Longer Run=2.5%)の水準では低いのでは?と言われていましたが、今回も2.5%で据え置かれました。

もし、2.5%から引き上げられていたら、現在のインフレ率はもう中立金利を下回ることとなるので、ハト派の発表に転じる=金融引き締めを辞めるということが期待されていたのですが。

足元、特に4月頃からの10年金利の上昇が目まぐるしいです。このあたりで実質金利(名目金利-期待インフレ率)がプラスに転じました。

物価上昇が落ち着いてきて

次が最後の利上げかな

という雰囲気が出てきた頃です。一方で雇用は堅調、決算もまぁ大丈夫なんじゃないか(実際4-6月期は大丈夫でだった。)ということでソフトランディングの現実味が高まり、期待インフレ率は下落するのとは逆に、10年金利(名目)が上昇しました。

結果として実質金利が上昇し、足元は2%を超えました。この水準は振り返ってみると、リーマンショック前の2006年-2008年の水準に到達し、15年ぶりの金利環境にいつの間にか変化を遂げていました。

当時も「CPI総合(点線黄色)が低下→政策金利(グレー実線)の上昇停止→CPIコア(点線赤)が低下」という流れをなぞっています。

そして利下げの直前にかけて

実質金利が2.5%突破に向けて上昇

しています。そしてその半年後のリセッションです。実質金利のピークが2007年6月で、リセッション突入が2007年12月でした。

10年金利も、実質金利の上昇に比例して上昇し5%を突破。結果として政策金利と同水準まで上昇しました。

現在も当時と同水準の政策金利を維持しています。そして実質金利が2%まで上昇しました。

今回のFOMC予想で示唆していることは、「2024年のインフレ率(PCE)が2.5%のまま」で

実質金利の見通しを0.5%引き上げ

したということです。このまま15年前のように実質金利が2.5%~2.7%の世界が再来するとなると、そこに期待インフレ率(PCE)が土台となり、結果として2024年の長期金利が5%まで上昇することを正当化することになります。これを受けて、市場は長期利回り(10年債利回り)が少なくとも4.5%を超えるだろうということを織り込み、足元の長期金利上昇が生じているのかと思われます。

ちなみに15年前の雇用統計はどう変化したかを確認すると、当時は現在と同様月次で20万人増加を記録していたものが、政策金利上昇がストップしたのを境にマイナスに転じています。失業率に至っての変化は微々たるもので、リセッションに突入してから急激に悪化します。つまり、”政策金利引き上げ時”はもちろん、”政策金利高止まり期”であっても変化を読み取ることはできないということですね。

株価についても確認してみると、政策金利高止まり期の2006年7月~2007年8月(青枠)に加え、実質金利ピーク時からリセッション突入の2007年6月~2007年12月(赤枠)においても株価は堅調だったことが分かります。

リーマンショックに関しては、その後、2008年3月に大手投資銀行(当時アメリカ第5位)のベアー・スターンズの経営危機発覚や、2008年5月30日付のJPモルガンによる買収、そして2008年9月15日のリーマン・ブラザーズ経営破綻に繋がっていきます。

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