4つの株式評価モデルを整理してみた。

CIIA・証券アナリスト

今日は株式評価モデルについて整理したいと思います。証券アナリスト(CMA)の勉強でもそうだったんですが、個人的にこの分野は、勉強してて一番テンションが上がる分野でした。

なぜテンション上がるかって?

株価が分かるから、儲かるじゃん!

という理由です。まぁ諸条件を集めるのがまずハードル高そうだし、マーケットに理論株価が織り込まれるのはいつだろうってこともあり、なかなか個人で実務に応用するのは難しそうだとは認識しています・・・

さて、株価を求めるモデルは、どれも1株当たりの将来見込まれる価値の現在価値という考え方は同じで

・価値を何で考えるか
・割引率を何にするか

といったところで、モデルの違いが出てきています。
例のごとく、私自身「なんとなく求めたものを割り引いときゃいいんでしょ」なノリでC証券アナリストの2次試験を乗り切ってしまったので、改めて整理したいと思います。

ちなみに、CMAの教科書「新・証券投資論Ⅱ実務編(日本経済新聞出版社)」によると、株式評価モデルとして取り上げられているのは、以下の通り。

  1. 配当割引モデル
  2. 株式の残余利益モデル
  3. 割引キャッシュフロー法(DCF法)
  4. EVA(Economic-Value-Added)モデル

配当割引モデル

配当割引モデルでは、将来(n期先)の配当の期待値をDn、割引率をkとすると、株式の本源的価値Vは以下の数式で表されます。

Getting Started MathML V = n = 1 D n (1+k) n

割引率kは、投資家がこの株式投資するにあたって要求する収益率であって、問題でも10%~20%の数値を使用することが多々あります。債券の割引率(1%~2%)に比べて高すぎるじゃねえか!って思っていましたけど、

・債券は利息が必ず支払われるが、株式は純利益等が相当でないと配当がでない
・会社が倒産した時には、株式の場合、なんにも保証も権利もない

といった理由から、投資家が期待する収益率が高くなるのは納得できます。
また企業から見ると、kは投資家(株主)に対するコストとも言えるので、kを「株主資本コスト」と呼ぶのが一般的です。

また、配当が毎年増えていく(定率成長する)場合の株式評価は、毎年g%成長すると考えると

Getting Started MathML V = n = 1 D n (1+g) n (1+k) n

で表されます。このg=配当成長率をどう予想するかというと、問題ではサスティナブル成長率を使います。

サスティナブル成長率= ROE × 内部留保率 = ROE × (1-配当性向)

という解答の流れはよくあるので、覚えておきましょう(自分への戒め)。

株式の残余利益モデル

先ほどの配当割引モデルは、「投資家がいくら配当を貰えるか」というベースで考えた株式評価モデルで、この残余利益モデルは名前の如く「いくら会社に利益が残るか=会社の価値はいくらか」で評価しているモデルと言えます。

Enをn期の純利益、Bnをn期末の純資産とすると、株式の価値は

Getting Started MathML V = B 0 + n = 1 E n kB n-1 (1+k) n

となります。ここで(E-KB)は、「純利益から株主に配当を払った残り」(残余利益)とよばれ、これが毎年企業価値として加算されていくといった考え方のものと、このモデルが成り立っています。

なお、なんとなく察しは付きますが、配当割引モデルと残余利益モデルは等価であることが証明できます。

割引キャッシュフロー法(DCF法)

配当割引モデルが株式を評価する手法に対して、DCFは「負債を含めた全体的価値」を評価するとのこと。

Getting Started MathML V f = n = 1 CF n (1+ k f ) n

Vfは企業価値(Value of firm)、CFは将来(n期)のキャッシュフローです。DCF法では、企業価値(Vf)になったことに注意です。同様に、割引率も株主資本コストから、負債側も加味した総資本コスト(Kf)になっていることに注意です。

フリーキャッシュフロー(CF)は、以下の通りです。

NOPAT+減価償却費-設備投資額-運転資本増加額

※NOPAT(税引後事業利益)= (営業利益+受取利息・配当金)×(1-法人税率) 

CIIA(国際公認投資アナリスト)では、公式集にCFとNOPATの式は載っていますが、補足的に載っていてかなり見つけづらいので、覚えておいたほうが効率がいいかもしれません。

注:ちなみに公式集ではNOPAT=EBIT×(1-税率)
  ※EBIT(earning before interest and tax): 利払前税引前利益(営業利益+支払利息-受取利息)

最後に割引率。キャッシュフローは債権者・株主の両方に帰属するので、負債コストと株主資本コストの両方を加味した利率になります。一般的にWACC(加重平均資本コスト:「ワック」と呼ぶのを聞きます)を使いますね。

Getting Started MathML k f = E D+E k e + D D+E (1-T) k d

Eが株主資本、Dが負債、Tが法人税率です。

加重平均する際に、負債コストから税率が控除されているのは、負債(支払利息)には節税効果があるからです。

EVAモデル

最後のモデルです。EVAモデルは、「残余利益モデル」の負債側も考慮したパターンみたいなものです。

Getting Started MathML V f = V 0 + n = 1 NOPAT n k f IC n-1 (1+ k f ) n

新しいのはICくらいですかね。ICは「投下資本」です。

投下資本=有利子負債+株主資本+(繰延税金+少数株主持分+連結調整勘定+有利子以外の固定負債)

とのこと。カッコ内は意味わかんないです。

残余利益モデルと同じ考え方なので、営業利益から、債権者や株主に払うコストを差し引いた残りが、企業価値として加算されていくといった考え方なのでしょう!

というわけで、最後に表にまとめて終了します。

評価モデル 割引率 評価対象(割引対象)
配当割引モデル 株主資本コスト 配当
残余資産モデル 株主資本コスト 残余利益:純利益-株主資本コスト×純資産
DCF法 WACC

キャッシュフロー
:NOPAT+減価償却費-設備投資額-運転資本増加額
※過去問ではさらに「資本支出」を控除している場合もあり(2016年9月)

EVA法 WACC EVA:純利益-WACC ×(有利子負債+株主資産)
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