債券の金利期間構造の理論を整理してみました。

CIIA・証券アナリスト

債券利回りに引き続き、基本的なことで恐縮です。

この分野も期間が長くなれば利回り上がるんでしょ。イールドカーブは知ってるよ。くらいの雑な感覚で覚えていたので、改めて整理したいと思います。なんとなく、次のCIIA試験で「説明せよ」系の問題が出てきそうなので・・・。

結論をいうと、みんな「イールドカーブ」を予想したいのであって、テクニカルにはスプライン法(線を繋げる系)ネルソンシーゲルのように理論的に予想する方法(かっこいいけどパラメータ見つけるの大変系)があります。

しかし、そもそもイールドカーブはこんな格好しているの?を哲学的に考えた理由に、名前がついています。

  • 純粋期待仮説
  • 流動性プレミアム
  • 仮説特定期間選好仮説

純粋期待仮説

「新・証券投資論」では

「純粋期待仮説」とは「フォワードレートは、市場参加者の将来金利の予測値を表す」とする説である。右上がりの利回り曲線が観測された場合、市場は金利上昇を予測しいていることを意味することになる。

簡単に言うと、「フォワードレート(市場の短期金利期待値)を繋げたものがイールドカーブになる」です。長期金利も市場の短期金利を繋げたもので説明できるというものです。

具体例を挙げて説明すると、市場がある債券1年物について「1年金利が1%」と予想しており、一方で同じ1年物の「1年後から2年後(フォワードレート)が2%」と予想しているのならば、自動的にこの債券2年物の利回り(年率)は1.5%※と決まる、ということです。※ 1.01×1.02≒1.015の2乗

長期金利も、短期金利の繋ぎ合わせで説明できるということですが、そうすると長期債に投資する不確実性(リスク)を上乗せ(リスク回避型の場合)していないので、それもなんか変だなぁ~というのがこの仮説にはあるようです。

また、一般的にイールドカーブは順イールドですが、純粋期待仮説によると「市場はいつも将来の金利上昇を予想している」という視点に立ってしまうので、それもまた違うんじゃない?とのこと。
今の市場環境だと、金利が上がる観測以外にないので(低金利で張り付いている)、あまり違和感は感じないですが。

流動性プレミアム仮説

またもや教科書を引用すると

長期債保有に伴うリスクが利回りに反映される、という前提を反映した仮説になっている。これによれば金利の期間構造は、①将来金利に関する市場予測と②保有する債券のリスクに伴うリスクプレミアム、の2つで説明され、リスクプレミアムは一般的に長期債ほど大きいことになる。ここで想定するリスクとは価格変動リスクと流動性リスクの双方を指す、と解釈される。

純粋期待仮説はあくまで「短期債のみの見ていれば、自ずと長期債も説明できる」というものでしたが、流動性プレミアム仮説は最初から「長期債のリスクプレミアム」を勘案した理論(仮説)なのかなぁと思います。

この仮説だと、市場が金利上昇を見込んでいなくとも、イールドカーブが基本順イールドだということが説明できます。

特定期間選好仮説

またも引用

金利の期間構造は①将来金利に関する市場予測と②保有する債券のリスクに伴うリスクプレミアム、の2つで説明されるものの②のリスクプレミアムは長期債ほど大きいとは限らない、という立場に立った仮説である。

立場変えてきましたね・・・(泣)

例えば、年金基金などの長期の年金債務を持つ投資主体にとっては、短期債よりも長期債のほうが負債と連動する低リスク資産として選好されると考えられる。

「短期債よりも長期債のほうが負債と連動する低リスク資産として」 の部分の説明が端的過ぎて良く分からないので、私の妄想で補足すると

例えば年金債務のキャッシュフロー(給付とか)を、様々な期間の債券のキャッシュフロー(クーポンや償還金)の組み合わせにより手当できるポートフォリオを構築していた場合、債券の持ち切りで運営できるわけです。これは金利の影響を気にしなくて良くなります。

一方で短期債だけで運用しろとなると、金利リスクや再投資リスクやら発生して、長期債のほうが運営が楽だったなぁ~となるわけです。

もちろん、一般的には長期債のほうが金利リスクや償還リスクが大きいのですが、時と場合による(選好)ということを言いたいのでしょう。

結果として、特定期間選好仮説ならば、順イールドも逆イールドもなんでも説明できる!ということになります。

また、特定期間選好仮説と類似したものに「市場分断仮説」というものがあります。
市場分断仮説は、投資家や借り手ごとに選好する期間があるという立場は同じです。
ただ特定期間選好仮説との違いは良く分からないです。ネットでは特定期間選好仮説と同一と説明しているものもありましたが・・・

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