日本では新規感染者数が減少傾向になってきており、一時一日700人を超える感染者が発生しておりましたが、5月15日現在では一日50人前後で落ち着いています。
一方で、世界的には、ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計を見ると、世界の感染者数が455万人となりました。(5月16日現在)
米国が約3分の1を占める144万人超。それに次ぐロシアは27万人に到達しました。ブラジルも22万人を突破し、ペルーも中国を抜き、メキシコが4万5000人超、チリも4万人に迫るなど南米の感染拡大が進行している状況です。
株価はというと、先進国で感染拡大が落ち着いてきており、一部で経済活動再開が期待されてきた一方で、第2波があるのではないかという懸念から概ね横ばいで推移しました。
中国や韓国では実際に第2派が発生していおり、封じ込めに苦慮しています。
それでは、振り返っていきましょう。
新型コロナウイルスの感染状況
この不況の起点は新型コロナウイルスによる需要の低迷(需要ショック)です。これが続けば「企業の倒産→信用リスクの増加→借入コスト増加→企業の倒産」という悪循環に陥ってしまうので、世界中で需要供給(実体的な経済活動)の低迷が金融危機にならないよう様々な金融・財政政策を打っています。
世界の感染者は5月10日に400万人を超え、死亡者数も5月15日に30万人を超えました。
感染者数が世界の3分の1を占め、最多となる米国は、4月28日に単一国家で100万人を超え、現在150万に迫る勢いです。新規感染者数は1日2~3万人で推移しており、新規加入者の増加鈍化の兆候が見られる状況ではありません。
2週間前に経済活動が再開されたテキサス州での1日当たりの新規感染者・死者数が、流行が始まって以来最多を記録した、とのニュースもありました。
株価・為替等
NYダウは、3月23日に底値の18,591ドル(終値)を記録してから4月まで右肩上がりで推移しました。しかし、5月に入ってからははほぼ横ばいです。現時点での高値は4月29日の24,633ドルで、底値から32.5%上昇しています。5月15日の終値は23,685ドルで底値から27.4%の上昇です。
5月前半に強かったのはハイテク株でした。外出自粛に関係なく需要があるとして、5月に入ってからも上昇しました。
為替は107円前後で安定した動きでした。米中貿易摩擦が高まるとして、一時円高になった場面もありましたが、1円程度の動きで大きな変動はありませんでした。
金利も概ね横ばい。米国10年は0.6%~0.7%前後で推移しています。
新型コロナウイルスの感染拡大による需要の大幅減少と供給過剰で21日の最終取引日(5月限月)でマイナス取引になった原油先物ですが、5月に入ってからは経済活動再開による原油需要増や国際エネルギー機関(IEA)が世界の原油在庫は今年後半に減少すると予想したことを受け、30ドル近くにまで上昇しました。
2020年5月前半の出来事を振り返る
5月は日本の緊急事態宣言の延長から始まりました。5月前半の一大イベントとしては失業率の発表だったかと思います。
米新規失業保険申請件数が引き続き高水準
毎週木曜日発表の前週の新規失業保険申請件数は、ピーク時の600万件からは減少したものの、まだ300万件に上る水準と高い状態にあります。3月前半の30万件が微増したことで株価が下がっていたころが懐かしく思えます。
米国失業率が14.7%と戦後最悪の水準
5月8日にADP(Automatic Data Processing社)が集計する非農業部門雇用者数は前月から2050万人減少し、失業率は前月の3倍余りとなる14.7%に上昇しました。
雇用統計・失業率ともにリーマンショック時の水準を超えました。ただ、5月も引き続き失業が続いている状況のため(新型コロナウイルスの猛威によって失業保険申請数は8週間で3600万件を突破)、米労働市場では5人に1人が職を離れた計算になり、5月の失業率は20%に達する可能性もあるとのことです。
一方で、4月の失業者(2300万人)の大半は「一時的な解雇」で、事業が再開すれば早期の職場復帰する可能性があるとのことです。
4月の失業者(2300万人)のうち78%は「一時的な解雇」で、事業が再開すれば早期の職場復帰に道を残している。2008~09年のリーマン・ショック時は「一時的な解雇」が10%前後にとどまり、逆に「恒久的な解雇」が50%程度もあった。今回は恒久的な解雇は11%にとどまっており、米経済特有のレイオフ(一時解雇・帰休)の影響が大きい。
日本経済新聞(2020/5/14)より
米中貿易協議が電話開催
5月8日、2020年1月に署名した貿易協議の「第1段階合意」を巡って電話で協議したとの報道が伝わりました。
これまでトランプ大統領が、新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」でるとか、「中国の研究所が開発した。」等、中国との外交を揺るがす発言をしていたことから、米中協議を行ったことにより市場には安心感が広がり株価は上昇しました。この日、雇用統計が発表され、戦後最悪となる水準となりましたが、当初失業率は16%、雇用統計はマイナス2200万人と予想されていたため、雇用統計の市場への影響は限定的でした。
新型コロナウイルスの感染が拡大してから正式協議は初めて。中国が「合意履行に有利な雰囲気と条件をつくるよう努力を」と注文をつけた一方、米国は新型コロナと関係なく輸入目標を達成するよう中国に迫った。
ファウチ所長が上院で講演
米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が12日、上院厚生教育労働年金委員会の公聴会で、州や市が経済活動を再開させることに懸念を表明しました。
議会上院の公聴会で中継映像を通じて証言した。行動制限を性急に緩めれば「回避できるはずの苦難や死につながるだけでなく、経済回復を遅らせる可能性もある」「とても深刻な結果が生じうる」と強調し、各州に慎重な判断を呼びかけた。
日本経済新聞(2020/5/13)より
パウエル議長講演
FRBのパウエル議長が、ピーターソン国際経済研究所が主催するバーチャルイベントで講演を行い、米経済が前例のない下振れリスクに直面していると指摘し、財政および金融当局がこの試練に立ち向かわなければ、家計や企業に長期的な打撃を及ぼす恐れがあるとの見解を示しました。
パウエル議長は13日、オンラインセミナーで講演。事前に配布されたテキストによれば、「景気回復は勢いづくまで時間がかかる可能性があり、時間が経過すれば流動性の問題は支払い能力の問題に変わりかねない」と発言。「追加の財政出動はコストが伴う可能性があるが、長期的な経済的打撃の回避に寄与し、一段と力強い回復を遂げられるのであればその価値はある」と語った。
bloomberg(2020/5/13)より
米国小売売上高が急落
4月の米小売売上高は前月比16.4%減と急減。前月に記録(前月比8.3%減)したそれまでの過去最大を、さらに大きく上回るマイナス幅となりました。新型コロナウイルス感染抑制を図る事業閉鎖やレイオフ、外出制限の影響が浮き彫りとなりました。
オンライン販売などの無店舗小売りが主要項目で唯一の増加となった一方で、衣料品は78.8%減、電子機器・家電は60.6%の大幅マイナスになりました。