ゴールドマン・サックスは「2026年末まで据え置き」を予想

市場環境

市場が織り込む「9月利上げ」と、ゴールドマン・サックスが予想する「2026年末まで据え置き」のどちらが現実になるのか。その答えを左右するのは、今後発表されるインフレ指標と雇用・景気関連データだそうです。

FOMC Recap: No Hike and No Guidance

2026年7月29日、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を終え、政策金利を据え置きました。今回のFOMCは、開催前から市場の注目度が非常に高い会合でした。最大の理由は、「利上げするのか、それとも据え置くのか」が直前まで読みにくかったことです。

しかし、実際の会合は市場が予想していたほど劇的なものにはなりませんでした。

結果は政策金利の据え置き。声明文にも大きな変更はなく、さらにジェローム・パウエル氏の後任として2026年5月にFRB議長へ就任したケビン・ウォーシュ議長の記者会見でも、今後の金融政策について明確な方向性は示されませんでした。一見すると「何も決まらなかったFOMC」に見えます。

ところが、ゴールドマン・サックスはウォーシュ議長の発言の中に、金融政策の方向性を考えるうえで重要な「ハト派的なシグナル」がいくつも含まれていたと分析しています。

まず、今回の会合では理事会メンバーの中から利上げを支持する反対票も出ました。ハマック、カシュカリ、ローガンの

3地区連銀総裁が25bpの利上げを支持しました。

これは、FOMC内部でも金融引き締めを求める意見が存在していることを示しています。今回の結果は、「現時点では利上げしない。しかし、今後のデータ次第では利上げも排除しない」という状態に近いと考えるべきとしています。

今回のFOMCで特に興味深いのが、ウォーシュ議長の記者会見です。

現在の米国では、AIブームによる半導体需要の増加などが、特定の商品価格を押し上げています。特にメモリーチップやロジックチップなどの価格上昇が注目されています。FRBがこうした価格上昇を「AI投資ブームによって広範囲にインフレが再燃している」と判断するのであれば、利上げを検討する理由になります。

しかし、ウォーシュ議長の発言からは、こうした価格上昇が経済全体に広がっているとは限らず、

一部の品目で発生している現象ではないか

という見方がうかがえました。これは金融政策を考えるうえで重要で、一部の商品価格が上昇しているだけなら、それを理由に米国経済全体の金利を引き上げる必要性は低くなります。

もう一つ重要なのが、米国の市場金利が上昇していることについてのウォーシュ議長の評価です。

通常、国債利回りが上昇していれば、「市場がFRBによる追加利上げを予想しているのではないか」と考えることができます。しかしウォーシュ議長は、最近の実質金利の上昇について、必ずしも市場がFRBに利上げを求めていることの表れとは考えていないようです。むしろ、米国経済そのものが強いことが金利上昇の背景にあると説明しています。つまり、

「景気が強いから市場金利が上昇している」

という解釈です。

もし金利上昇の原因が「インフレが再加速するからFRBが利上げする」というものであれば、FRBは政策金利をさらに引き上げる必要があります。一方で、「経済成長が強いから市場が自然に金利を押し上げている」ということであれば、FRBが政策金利をさらに引き上げなくても、金融環境はある程度引き締まります。今回のウォーシュ議長の発言には、後者の考え方が含まれているとゴールドマン・サックスは分析しています。

今回のFOMCで最も興味深いポイントの一つが、次の点です。

ウォーシュ議長は

市場金利がすでに上昇している

ことを何度も強調しました。FRBが政策金利を据え置いている間にも、米国債市場では金利が動いています。つまり、FRB自身が政策金利を引き上げなくても、市場が金利を押し上げれば、企業や家計にとっての借入コストは上昇します。住宅ローンや企業融資などに影響する金利は、FRBの政策金利だけで決まるわけではありません。長期国債利回りや社債利回りなど、市場で決まる金利も金融環境を左右します。

そのため、「FRBは政策金利を据え置くが、市場金利が上昇することで金融環境が引き締まる」という状態が成立します。ゴールドマン・サックスは、ウォーシュ議長の発言には、市場金利の上昇が追加利上げの一部を代替できるという考え方が示唆されていると分析しています。

FOMC後の債券市場は、今回の会合を全体として「ハト派的」と受け止めました。

短期金利は低下した一方、長期金利はFOMC開催中に上昇しました。特に長期金利の上昇には、ブレークイーブン・インフレ率、つまり市場が織り込むインフレ期待の上昇が影響しました。

つまり債券市場は、「FRBはすぐには積極的に利上げしないかもしれない」と考える一方で、「米国経済やインフレについては、まだ完全に安心できない」と捉えたというように考えられます。

今回のFOMCからゴールドマン・サックスは、今後数カ月のコアインフレ率が鈍化していくと予想しており、その結果として

FRBは2026年いっぱい政策金利を据え置く

と見ています。「市場は年内利上げをかなり織り込んでいる」のに対し、「ゴールドマン・サックスは年末まで利上げなし」という見方です。実際、市場は年内利上げ(1回または2回)を70%以上織り込んでいます。

政策金利は据え置かれ、3人の地区連銀総裁は利上げを主張しました。したがって、FRB内部には依然としてインフレを警戒する強い意見があります。一方で、ウォーシュ議長の発言には、追加利上げを急がない姿勢が見えました。FRBが政策金利を引き上げなくても、長期金利が高ければ金融環境は十分に引き締まります。

そして何より、6月のインフレ指標が改善していることが大きいでしょう。インフレが今後も鈍化するのであれば、FRBが追加利上げを行う必要性は低下します。

米国労働省が7月14日に発表した2026年6月の消費者物価指数(CPI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは前年同月比3.5%上昇(前月4.2%上昇)、前月比0.4%の下落(前月0.5%上昇)となり、市場予想(前年同月比:3.8%)を下回った。総合指数の前月比の下落率は、2020年4月(0.8%の下落)以来の水準で、インフレの加速傾向に、一時的な歯止めがかかったかたちだ。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数も、前年同月比2.6%上昇(前月2.9%上昇)、前月比0.0%で、前月の0.2%の上昇から減速した

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