最近ニュースでは「逆イールド」という言葉が良く出てきます。
さらに「逆イールド」は、リセッション(景気後退)のシグナルともいわれており、逆イールドが発生すると、株が下落する傾向にあります。
逆イールドとは、長期金利(国債10年金利)と短期金利(国債の2年また3か月金利)を比べて、長期金利のほうが低くなっている状態を言います。
過去の逆イールド
過去に「逆イールド」は1988年12月、1998年5月、2005年12月と3回起きています。
その後しばらくして景気後退が起こっています。
逆イールド発生 | 景気後退 | 景気後退までの期間 |
1988年5月 | 1990年7月 | 1年7ヵ月後 |
1998年5月 | 2001年3月 | 2年10ヵ月後 |
2005年12月 | 2007年12月 | 2年後 |
上から順にはバブル崩壊、②はITバブル崩壊、③はリーマンショック です。逆イールドが発生してすぐ景気後退というわけではなく、約2年ほどの時間差があるようです。まさに2019年8月に入ってから逆イールドが発生しています。
現在(2019年夏)の逆イールドの状況
8月に入ってから、日中に何度か逆イールドになることはありましたが、8月の後半から恒常的に逆イールド(10年-2年)の状態になっています。
経験則からいうと、2021年の夏ごろ(東京五輪が終わって落ち着いた頃)に景気後退となる見込みです。
そもそも逆イールドとは
逆イールドとは、そもそも「イールドカーブの形状」のことを表した言葉です。 イールドカーブとは、債券投資に出てくる言葉で
横軸に債券の残存年数(残存期間)、縦軸に最終利回りをとった座標に、各債券の残存年数と最終利回りに対応する点をつないだ曲線のこと。 イールド(yield)とは利回りを指す。
野村證券ホームページ
1つの債券の動きを表すものではなく、同等の債券種別の中の残存年数の異なる債券群が1本の曲線の形で表現される。例えば、割引国債には残存年数ごとに複数の債券(商品)が存在しており、それら複数の債券が1本のイールドカーブ曲線上に描画される。
債券は株と違って、償還期限(投資期間の制限)があることと、償還価格(返還される価格)が決まっているので、「いくら上がった」よりも「利回りどれくらい」で比較されます。
債券は、利回りが高い=投資対象として収益率が高いと考えて問題ありません。一般的に債券のイールドカーブは右肩上がりの形状(順イールド)をしています。
通常長い期間債券持ってる方が、金利の変動や発行体の倒産リスクを受けやすいので、その分利回りを上げないとみんな買ってくれないので、残存期間=投資期間が長いほうが利回りが高くなります。
これが、「順イールド」という状態です。
イールドカーブの考察というのはなかなか難しくて、証券アナリスト試験でも様々な理論がありますので、気になる方はこちらをご覧ください。
簡単にまとめると、2年間投資するのは1年+1年と同じ考え方だし、やっぱり長く持っていたほうがリスクに曝される可能性が高いから基本は「順イールド」だよね、という考え方です。
なぜ「逆イールド」になるのか
基本的なイールドカーブの考え方が順イールドならば、なぜ「逆イールド」が生じるのでしょうか。
理論上そうであっても、イールドカーブは投資家の需要供給から生じる結果ですから、投資家のポジション=今後の相場観・景況感によって変化します。
実は短期金利(3か月~2年)は中央銀行の政策によって操作されるので、いわゆる政策金利に近い値になります。
一方で長期になればなるほど(10年以上)、政策金利の影響は受けづらくなり、投資家の相場観による影響が大きくなります。
投資家が将来「景気が悪くなる」と考えると、イールドカーブにどのような影響が起こるのでしょうか。
簡単にまとめると、以下の流れになり、(将来の)利回りが下がります。
①景気が悪くなる(と思う)
↓
②株価が下がる
↓
③-1安全資産の債券に買いが集まる
③-2さらなる金融緩和が行われる
↓
④将来の利回りが下がる
③-1の場合、債券に買いが集まると、需要供給の関係から債券の現在価値が上がります。債券は償還価格が決まっているので(図だと100円)、現在価値が上がると、償還までの利回りが下がってしまいます。
③-2の場合、金融緩和により政策金利が引下げられると、基本的に債券の利回りは、政策金利+期間プレミアム+信用プレミアムという構造なので、やはり利回りは低下します。
結論として、投資家が景気悪化を見込んでいると、長期金利が低下が低下し、逆イールドの形状となるわけです。
将来景気が悪化するのか
もっともらしい理由と過去の経験則から、やはり景気減速となるのでしょうか。
そこにはいろいろな意見があるようです。そもそも過去3回しかないじゃん!、とサンプルとしては少なくない?とか、イールドカーブの形状はあくまで投資家の”予想”でしかないから、必ずしも当たるわけではない、などです。
モーニングサテライトでも、今回は予防的な利下げ(金融緩和)を行っていますし、あくまで米中貿易交渉が最悪のシナリオに行った場合に世界的な景気悪化になり得ると言っています。
投資の世界は、”いかに相場に適応していくか”が生き残る術で、昨日の常識が、今日の非常識になる世界です。自分の相場観を持って、長期的な目線で頑張っていきましょう。