アクチュアリーが団信保険を語る。

アクチュアリー

以前の記事で自宅を購入したことを記事にしました。

アクチュアリー、家を買う。
つい先日、売買契約を交わしてきました。投資用ではなく自宅用であることを先に申し上げておきます。1年前の今頃に、分散投資や節税目的でワンルームマンション投資の検討をしていたことを記事にしました。そしてとうとう我が家(独り身ですが)にも貸主目線…

自分もアクチュアリーとして保険の勉強・実務は経験したつもりですが、あらためて団信について触れる機会となりました。団信とは、原則住宅ローン設定時には強制加入となる生命保険のことです。加入者(不動産購入者)にとって、万が一のことがあれば住宅ローンが「チャラ」になるので、死んだ後に家族にローンを残さなくてよいメリットがあります。

団体信用生命保険(以下、団信)とは、住宅ローン返済中に契約者に万が一のことがあったときに、住宅ローン残高がゼロになる保険のことです。団信は一般的に、死亡などにより住宅ローン契約者が支払いできなくなった場合、生命保険会社が住宅ローン残高に相当する保険金を銀行に支払い、債務の返済に充てる仕組みとなっています。団信は、住宅ローンを借入れる場合、もしくは借換えをする際にのみ契約可能な保険の一種です。一般的に住宅ローン借入れ後に加入することはできません。

りそなグループホームページより

実は「貸す側」である金融機関にとっても都合がよい制度になっています。金融機関が保険者(死亡リスクを受ける側)になるわけではなく、提携の生命保険会社に死亡リスクは丸投げするので、金融機関として「取りっぱぐれるリスク」をヘッジすることができます。

「※1~※3」は40歳以上での加入の場合、更に上乗せ金利が発生することが書かれていました

現在の団信では、死亡保険はどこの金融機関も「上乗せ金利」はゼロのところがほとんどです。あとはガン保険を付けるか、脳卒中・心筋梗塞と種類を付けていくかで上乗せ金利も増加していきます。自分の場合は、ガン保険付きまでにしました。

自分で加入して思ったのですが

団信は保険機能としてよくできてます。

本来、生命保険とは人的資本の毀損をヘッジする金融商品として存在しています。人的資本とは物理的な労働力のことで、それと対となるものが金融資本と呼ばれ、いわゆる有価証券や貯金、不動産と言ったストックのことを指します。例えば20歳の人は金融資本がない(貯金がない)一方で、有り余る元気と、あと40年は労働できる資本を持っていることになります。一方で60歳の人は退職金も貰って自宅のローンも払い終わって、預貯金と不動産という金融資本を持っている一方、毎日体はだるいですし、あと5年働けるか分からないどころか身の回りでは病気で亡くなったという知り合いも少なくはありません。

人的資本:将来にわたって稼得できる労働所得の現在価値。若いほど大きく、退職に近づくほど小さくなる

金融資本:すでに保有している金融資産・不動産純資産(エクイティ)などストックとしての資本。

このように、終わりがある人間を「資本」としてみると

年齢とともに人的資本が金融資本へと転換されていく

というのが保険数理の考え方になります。ですので、本来若い内に金融資本を稼ぐはずだったのに、病気やケガで金融資本への転換が出来なくなると見も蓋もありません。ですので万が一、若い内に人的資本を喪失してしまうことのヘッジとして保険商品が存在します。

そうすると一つの疑問が沸きます。自分も”中の人”だったので胸を張っては言えないのですが、一般的な定期保険や終身保険は、契約時に決めた保険金額(たとえば3,000万円)が、被保険者が何歳であっても契約期間中は基本的に一定です。先ほどの「金融資本へと転換されていく」ということであれば

保険金額も年齢とともに減っていく

となるべきです。25歳のときの1億円は今後の人生に取って生きるか死ぬかの資金になりますが、60歳の人が1億円を貰ったところで既に十分な資金も住処もあるわけですからほぼ泡銭(あぶくぜに)なのではないでしょうか。

一方、団信はこれとまったく異なる構造を持っています。団信の保険金額は

「その時点でのローン残債」

であり、返済が進むにつれて元本が減っていく(元利均等返済の場合)のに合わせて、保険金額も逓減していきます。専門的には「逓減定期保険(decreasing term insurance)」と呼ばれる商品類型に分類され、保険期間の終盤にはほぼゼロに近い保障額になります。

団信の魅力としてかなり料金(保険料)もリーズナブルのように思えます。団信は死亡保険に関しては「上乗せ金利なし」が一般的なので比較しようがないのですが、例えば35歳で5000万円のローンを組んだ場合と比較するために5000万円の死亡保険(保証期間は65歳)に加入した場合、月額14000円かかります。年間で約16万円です。通常の保険と異なり団信はこの5000万円が逓減していくのですが、先ほどの保険理論に照らせば、この月額14000円の死亡保険は解約しても問題ないものになります。

ライフネット生命より

ここからはかなり個人的な感覚で語っているので合っているかどうかはわかりませんが、ガン保険についても考えたいと思います。奇しくもガン保険で5000万円が一時金ででるような保険シミュレーションが存在しなく(一般的なガン保険は数百万の一時金と治療費を保証)、団信と比較できなかったのですが、30歳の男性が40歳までにガンになる確率は0.6%(0.576%)、50歳までにガンになる確率は2%(2.092%)とのことです。

一方で30歳男性の死亡率については、40歳までに死亡する確率は0.7%、50歳までに死亡する確率は2.1%です。(令和6年(2024年)簡易生命表(厚生労働省・男)より算出)

累積死亡確率
30歳→40歳(10年) 0.69%
30歳→50歳(20年) 2.14%
30歳→60歳(30年) 5.88%

何が言いたいかというと、概ね「死亡する確率」と「ガンになる確率」は10年後で0.7%、20年後で2%で同水準ということです。ということは、「ガンに罹患したら5000万円貰える保険」というものが存在するのならば、概ね死亡保険の保険料と同水準、つまり月額14000円相当になるということです。

これを金利換算すると0.32%

となります。(年額16万円÷5000万円)

なお、「ガンに罹患する確率」には「ガンに罹患して死亡する確率」も含まれ、死亡保険と重複する確率が存在しているということ、「ガン保険の対象となるガンの種類」と「団信の条件に合うガンの種類」が一致しないことに留意してください。

いずれにせよ、ガン保険に入るよりも少し割引で、かつ前述した通り歳を取ってから保険金が貰えてもしょうがない(年齢によって低減していく)ということであれば、団信にガン保険も付けておくか、と思った次第です。

あと、元々は中の人だったので、頑なに保険に入ることを拒んでいましたが、不動産を購入したことで半ば保険(団信)に加入することになりました。入ってみて分かったのは

入ると安心感が得られる

ということを身をもって感じました。今まで病気にならなかったのは運が良かっただけです。団信も40歳を超えて加入すると上乗せ金利が付くことも多く、今回はちょうど良いタイミングだったように思います。

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