コロナショックから約2年続いた米国の金融緩和も、11月のFOMCで引き締めることが決定しました。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は2、3両日に開催した定例会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0-0.25%で据え置くことを決定した。毎月実施している資産購入については、月額150億ドル(約1兆7000億円)のペースで縮小を開始すると表明。
bloombegより
テーパリング(金融緩和の引き締め)ということで、コロナショック以降、中央銀行のバランスシート拡大により株高がけん引されてきたため、株価にはネガティブ要因であるにも関わらず、「市場に織り込み済み」の実現でほっとしたのか、S&P500もあっという間に4700を超えてしまいました。
個人的には金融緩和引き締め=経済正常化への第一歩、ということでポジティブな要因だとは思うのですが、短期的にはネガティブということでしょうか。
それにしても、リーマンショック(もはや10年以上前)からの資産購入も吐き出せていない状態からの量的金融緩和だったため、既にFRBのバランスシートも10兆ドルに達しようとしていますし、今回の決定も追加購入を減額しただけで、6月までは引き続き購入を続けます。
まだ償還期限がある(自然とキャッシュ化される)債券やMBSのFRBはいいとして、償還期限のない株やREITを購入している日銀はどうするんですかね。いつか「売却を進めます」とアナウンスした瞬間に大変なことになりそうです。
さて、コロナショックから経済正常化への第一歩を歩み始めた米国ですが
次のイベントは利上げです。
過去を振り替えてってみると、リーマンショック以降での初めての利上げは2015年12月(0.25%引き上げ)でした。その後、2016年に1回(12月)、2017年に3回(3月・6月・12月にそれぞれ0.25%引き上げ)、2018年も4回(3月・6月・9月・12月にそれぞれ0.25%引き上げ )引き上げ、2019年になるころには、誘導目標が2.25%~2.50%になっていました。
結論、この2016年から2018年の間の株価はどうだったかと言うと、上昇しました。2015年末には2000ほどだったS&P500は、2018年10月までに3000に上昇と、1.5倍になりました。その後は、2017年に就任したトランプ大統領が中国との貿易摩擦を悪化させたことにより、2018年末に向けて調整が入りました。
この貿易摩擦を起点に経済低迷が生じ、2019年には3回(7月、9月、10月)の利下げを行いました。そして、最後の利下げの裏ではあの新型コロナウイルスの感染拡大が、じわじわと始まっていたわけです。
利上げの最中だった2016年~2017年は
適温相場(ゴルディロックス相場)
と言われていました。
私も当時はすでに株式投資をしていた頃でしたので、良くこの言葉を耳したのを憶えています。それなりにリーマンショックから回復してきて、安定した経済環境となった中でも低金利状態、という環境でした。仮想通貨バブルも同様の時期だったかと思います。
世界の株価は20%上昇し、経済成長率は2010年以来で最も高く、市場のボラティリティ(変動率)とジャンク債の利回りは過去最低に下がった。(略)
今年の初め、弱気派が好んで口にしていたのが「長期停滞」、「政治リスク」、「弱い回復」などの呪文だったが、はっきり言って世界経済と市場は大いに沸き、これらの言葉は表舞台からひっそりと姿を消した。
ロイター 2017年12月8日
当時と言えば「利上げはいつ行われるんだ」とゴルディロックス相場の終焉を心配し、fedwachを暇があれば見ていました。個人が心配したところで、どうしようもないんですが。
というわけで久しぶりにfedwatchを見てみると、2022年は2回~3回を市場が見込んでいることが分かります。てっきり「1回あるくらいかな」と思っていたので、驚きでした。1月前のメインシナリオは1回(2回と僅差ではありますが)でしたが、いつの間にか2回または3回に変わったようです。
ちなみに今年(2021年)の利上げ見込みは、さすが0回でした。
今のところ米国の経済成長予想の最新のものは10月に発表されたIMF(国際通貨基金)のもので、2022年は5.2%と見込んでいます。
適温相場と言われていた2016年~2017年の経済成長は2~3%ですから、2022年の経済成長は過去比較で高い水準にあることがわかります。どこまで、FRBがハト派でいてくれるかは分かりませんが、現在と同様の立ち位置(ハト派)ならば、再度適温相場の到来となるかもしれません。
ちなみに2017年の適温相場は、経済的な要因は特になく、2018年の1~2月に急な金利とVIX指数の上昇で調整を迎えた記憶があります。