私は小中高と公立学校出身です。
東京という都会に来て話が食い違うことが多いことの一つに、都会は「頭がいい人が行く」のが私立、田舎は「頭が良くない人が行くのが私立」ということがあります。
なんなんでしょうね。自分の場合、中学は自動的に学区で決まっていましたし、高校も通える範囲に2つしか選択肢がなく、一方は超ヤンキー高、もう一方は親はもちろん、叔父・叔母も通った普通の高校だけでした。
ちなみにここで「通える範囲」というのは”自力で”という意味です。
具体的には、まずもって「電車」や「バス」と言った公共交通機関がないので、通学する手段は専ら自転車です。徒歩なんて最も近い高校ですら片道10kmあるので2時間コース。そもそも中学のときですら既に自転車通学ですから。というわけで、自転車でも片道2時間が限界ですから、高校の同級生たちを見ても、自宅から半径20~25kmが通える範囲ということでしょうか。
田舎ですと、公立高校ですら上記のような密度ですから、経営的観点から私立高校になるとよりレアな存在になります。都道府県を跨いだほうが近い、ということもあります。そんなわけで、旧帝大級に毎年1人は合格者を出すような高校=地元では進学校となると、公立高校を狙うのがメジャーな進路でした。しかも、都合の良いように進学校が通学範囲内にあるとも限らないので、頭が良くても進学校に行けるとも限らず
親の車の送り迎え
がない限りは、進学校に行けない=大学受験という手段が絶たれます。なぜ頭が悪い子が私立に行くかというと、本当に勉強な嫌いな子はそもそも高校にいかないですし、九九すら怪しいとなるとさすがに公立高校に進学できず、私立高校に拾ってもらうという感じでした。
さて、運用の世界にはアルファ(α)リターンとベータ(β)リターンという言葉が存在します。
アルファとベータと言われるとアルファが先のように思えてしまうので混乱しますが、運用で重要なのはベータリターンだと私は考えています。
投資信託に投資した際、リターンの源泉を把握することは重要です。リターンの源泉は大きく二つに分けて考えることができます。一つは市場全体が上昇(下落)したことでもたらされたリターン、もう一つは銘柄選択や配分によってもたらされたリターンです。前者、市場からもたらされたリターンのことをβ、後者、銘柄選択や配分によるリターンのことをαと言います。
PICTETより
パッシブ運用、つまり市場全体が最も効率的なポートフォリオである(CAPM理論)を信じるならば、ベータリターンは
リスクを取っているならば誰でも手に入るリターン
です。
株式市場が効率的であれば、どの銘柄についても、現在の株価は、市場参加者の総意が反映されたものと考えることができ、各銘柄の時価総額比率から成るポートフォリオは、リスク・リターンの観点から最も効率的であるとされる。この考え方を基にしておこなわれる運用手法が「パッシブ運用」である。パッシブ運用は、相場観がなくても、効率的マーケットに準拠したマーケットポートフォリオを保有すれば、マーケットリターンを狙うことができるとされているものである。
野村證券ホームページより
しかも、効率化された世の中、パッシブ=インデックス運用であれば投資信託でも0.2%、ETFならばほぼノーコストで投資できます。
一方でやはり皆が気になるのはアルファリターンです。
投資に興味を持った知り合いから「何から始めた方が良い?」と聞かれ、オーソドックスに「インデックス投資から始めた方がいいよ。」と答えるんですが、3か月もすると
個別株、何がいいかな?
と絶対に聞いてくるようになります。
しょうがないです。
投資理論は宗教みたいなもんですし、いっぱい上がっていっぱい下がった方が楽しいですもん。ただし理解してほしいのは
・αリターンの期待値は0%(βリターンの期待値は正)
・αリターンはコストを払って探し求めるもの
ということです。
CAPM(市場が効率的であるということ)を信じるならば、市場全体では歪みがないので、誰かが作った歪みをうまく見つけて儲ける必要があります。つまり、αリターンには勝者と敗者が同時に存在する、つまりゼロサムゲームということになります。一方で、βリターンは「投資」であるため、プラスサムゲームです。
なので、自分で時間を費やして歪みを見つけるか、それともパッシブ対比1.0%以上の高いコストを払って優秀な商品を買い付けるか、というのがαリターンの見つけ方です。なお、感覚ですが、株式の場合、βリターンは5~7%、αリターンは3~5%(取れた場合)という印象です。
なんで皆、ノーコストのβリターンを取らないのか?
という疑問が湧きます。なぜ、コストを払ってでも、例えばリスクの高い個別株を買いにいくのでしょうか。皆、結局はリターンが取れれば良いはずです。簡単なところからリターンを取りに行けばいいんです。
これが公立高校の入試問題と似ています。公立高校は偏差値30から60くらいまでの入試で共通に使われる試験問題なので、数学の場合、第一問は小学3年生でも解ける問題から、誰も解けないような問題まで用意されています。
どの問題を解いても同じ配点(3点等)ですので、わざわざ簡単な問題を解かずに難しい問題から解く人はいません。資産運用も同じで
取れるところからリターンを取っていく
ことをすればいいんです。βだろうとαだろうと3%は3%なのですから。αで3%取ったから何かおまけがつくわけではありません。
医学史におけるもっとも重要な発見は、「ペニシリンの発見」と並んで「手を洗うこと」だと言われています。「何か難しいこと」が常に凄いことではなく、このように「当たり前に思われること」が意外に重要であることがこの世界には多々あります。