トランプ大統領は2020年3月27日、米議会が可決した新型コロナウイルスに対処する2兆ドル(約220兆円)の大型経済対策法案に署名し、同法は同日成立しました。
人口密度の高いニューヨーク州を中心とした感染の急拡大により、 米国の新型コロナウイルスの感染者数は26日中国を上回り、世界最多となっており、米国経済への影響が測り知れなくなっていました。
景気対策は国内総生産(GDP)の1割の規模となりました。当初は1兆ドル案で着手していましたが、米経済は4~6月期に2桁のマイナス成長に転落するとの観測が強まり、財政支出の規模は一気に2倍になりまりました。
2兆ドルとう規模は、リーマン・ショック時(2008年)の7千億ドルをゆうに超える水準です。
米議会は先駆けて、3月6日にワクチン開発などに充てる83億ドルの緊急補正予算を成立、16日には下院で新型コロナの検査無償化などを盛り込んだ100億ドル規模の「経済対策第2弾」を可決済みで、ホワイトハウスと議会は「第3弾」として家計や企業への大型の景気対策を検討していました。
もともとは総額1兆ドル(約107兆円)の予定で、現金給付やボーイングなど米航空関連企業への支援策などと合わせ、3月17日中に詳細を固めるという方針でした。
しかし、トランプ政権は21日、新型コロナウイルス対策として検討する大型景気刺激策が最大2兆ドル(約220兆円)に達すると表明しました。連邦政府が1.3兆~1.4兆ドルの財政支出に踏み切り、米連邦準備理事会(FRB)などの追加支援で2兆ドルに積み増すというものです。
当初、 景気対策は23日の採決を目指していましたが、上院で野党民主党との調整が折り合わず。民主党としても経済対策に賛同していましたが、具体的な支援対象企業がさだまっていない2000億ドルの枠があり、対象企業の選定作業は政権の裁量に委ねられかねず、トランプ氏の選挙戦での票集めに使われてしまうという懸念がありました。
2008年の金融危機時も、ブッシュ政権(当時)が求めた銀行への公的資金注入を議会が一度否決したことがありました。直後、米国内外で銀行間の取引金利が急上昇して、世界の金融システムは一気にマヒ状態に陥った経験があります。08年も11月に大統領選と連邦議会選を控えており、今回と情勢が似ていました。
しかし、25日に米上院に可決しました。
その後、野党多数の下院でも27日に可決。28日に大統領が署名し、成立しました。
具体的な2兆ドルの経済対策の中身は以下の通りです。2兆ドルの新型コロナウイルス対策は21兆ドルある米国内総生産(GDP)の1割に相当し、08年の金融危機後の経済対策(7000億ドル)を大きく上回りました。ホワイトハウスは「単独の経済対策としては過去最大だ」(クドロー国家経済会議委員長)とコメントしています。
航空会社や宿泊業など、新型コロナで打撃を受けた産業に5000億ドルの資金枠を設置。野党民主党の要求で①経営者の報酬増に使わない②自社株買いに充てない③従業員の給与水準を一定以上に保つ、などの条件を課しました。
中小企業向けには3500億ドルの融資枠を用意。雇用を維持して従業員に給与を支払えば、政府資金の返済を不要としました。事実上の給与補填制度で、中小企業が従業員を安易に解雇しないよう促す仕組みです。
景気刺激策では家計への資金支援として、大人1人に最大1200ドル、子供には500ドルの支給を決定しました。失業給付の拡大なども盛り込みました。
個人向け給付については所得制限が付いていて、夫婦二人で年収19.8万ドルの収入がある世帯は、給付が受け取れない仕組みになっています。