日本では新規感染者数が減少傾向になってきており、5月14日に39県の緊急事態宣言解除、25日には東京など首都圏の1都3県と北海道でも31日までの期限を待たずに解除しました。4月7日から実施していた緊急事態が約7週間ぶりの全面解除です。
さて、世界を見ると相変わらず米国の感染者は、PCRの検査数も増やしたこともあってか減っておりませんし、ロシア・インド・ブラジルと言った新興国に感染が広がってきました。
経済政策については一通り対策を打ったこともあってか、5月はおとなしい期間だったかと思います。一方で、5月の後半は「ワクチン」のニュースが出るたびに、大きくマーケットが動いた相場でした。
それでは5月後半を振り返っていきます。
新型ウイルスの感染状況
この不況の起点は新型コロナウイルスによる需要の低迷(需要ショック)です。これが続けば「企業の倒産→信用リスクの増加→借入コスト増加→企業の倒産」という悪循環に陥ってしまうので、世界中で需要供給(実体的な経済活動)の低迷が金融危機にならないよう様々な金融・財政政策を打っています。
新型コロナウイルスの感染状況ですが、世界の感染者は5月21日に500万人を超えました。もう中国の8万人という数字は霞んでしまいました。
相変わらず米国は感染者数が世界の3分の1を占めています。5月31日の時点で米国の感染者は約180万人となり、次いでブラジルが51万人という状況です。米国の7新規感染者数は1日2~3万人で推移しており、わずかに新規加入者の鈍化がみられるようになりました。
一方で、経済再開に向けた動きは進んできており、5月20日には北東部のコネチカット州が経済活動再開の第1段階として、小売業、飲食業(屋外のみ)、オフィスワークなどの活動再開を認め、これにより50州全州が経済活動の再開に踏み出しました。わずか1カ月前には、全米42州で自宅待機令が発動されていたことを考えると様変わりです。
株価・為替等
NYダウは、3月23日に底値の18,591ドル(終値)を記録しましたが、5月31日に25,383ドルまで戻し、40%近く上昇しました。5月後半は新型コロナウイルスのワクチン開発や経済活動再開に関するニュースで上昇しました。
また、5月後半に200日線を超えました。200日線はいわゆる長期トレンドなので、200日線を超えると「上昇トレンドに入った」と、一般的に言われています。
為替は107円前後で安定した動きでした。米中貿易摩擦が高まるとして、一時円高になる局面もありましたが、1円程度の動きで大きな変動はありませんでした。
金利も概ね横ばい。米国10年は0.6%~0.7%前後で推移しています。
株価の上昇については、トランプ大統領も喜んでいました。
2020年5月後半の出来事を振り返る
5月の前半の市場は比較的横ばいの動きでした。なんだかんだ2~3か月もすればウイルスは落ち着くのではないか、と考えていたところが、5月の中旬になっても世界的に感染者数が鈍化しない。それも米国で・・・。
このままだと企業が続々倒産して、本当に史上最大の景気悪化に陥る・・・経済政策も過去も類をみないほど打ち出しているのに・・・この横ばいの先は二番底に向かうか・・・という考えが巡りはじめました。
そんな中で局面が変わったのは、ワクチンの臨床研究の報道が次々と出始めたからでしょうか。
抗コロナワクチンの治験結果報道(モデルナ社・ノババックス社)
ワクチンではないですが、「コロナに効く薬」としてその名を最初に轟かせたのは、米ギリアド・サイエンス社のレムデシビルでした。食品医薬品局(FDA)は5月1日、レムデシビルをCOVID-19の重症入院患者に対する治療薬として緊急使用許可(EUA)を与えています。日本でも5月7日、厚生労働省はレムデシビルを承認しました。(5月4日に申請し3日で承認)
その後、ワクチンとしてポジティブな報道があったのはモデルナ社のワクチンです。ただし、すぐに懐疑的な報道があったりと、相場は翻弄されました。月末になってくると、モデルナ社だけでなくノババックス社、アストロゼネカ社、中国企業も複数と治験を開始したという報道があり、市場でも「ワクチンは遠くないうちに出来るだろう」という雰囲気が出来上がってきました。
パウエル議長講演
上院銀行委員会でのバーチャル公聴会で、パウエル議長がさらなる金融緩和の可能性を示唆しました。一方で、景気下降の範囲とスピードは現代では前例がなく、第2次世界大戦以降のどのリセッション(景気後退)よりもかなり悪いと付け加えたことから、市場はネガティブに捉えました。
臨時の日銀決定会合開催
あまり市場には影響はなかったのですが、日銀は8年半ぶりに臨時の金融政策決定会合を開催し、中小企業などの資金繰り支援のための新たな資金供給制度の導入と、新制度を含めた総枠約75兆円の資金繰り支援を目的とした特別プログラムの創設を決定しました。
ファウチ所長のコメント
感染拡大対策にはかなり慎重な姿勢を示していた、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は5月27日、新型コロナの感染の「第2波」を避けられる可能性があると指摘したことや、ワクチンが11月ないし12月までに配布できる状況になる可能性は「十分にある」と述べたことから、株価が上昇しました。
5月12日の上院厚生教育労働年金委員会の公聴会では、「経済活動の時期尚早な再開は新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を再び起こしかねない。」と厳しい姿勢を取っていたため、このコメントの変化は、かなり確信度が高いものとして市場に受け入れられました。
米新規失業保険申請件数は引き続き高水準
毎週木曜日発表の前週の新規失業保険申請件数は、ピーク時の600万件からは減少したものの、5月21日は223万件、28日は212万件とまだ200万件以上と高い水準です。ただし、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となって以降初めて、失業保険の継続受給者数が減少しました。
6月5日発表の失業率がどんな数字になるのかで、大きくマーケットが変わるタイミングになろうかと思います。