センター試験前のとある日、塾の学習室で最後の追い込みなのか、そろそろ「友達同士で」勉強をしている場合ではなくなったのか、なんとなく高校生が減ってきたカフェでTOEICの勉強していました。
私は理系でして、当時は”理系=国立”というイメージがあって、なんの疑いもなく第一志望は国立大学となり、センター試験を受けることになりました。
センター試験は理系であっても文系科目を含め全科目が配点の対象となるので、苦手な国語を含め、全科目まんべんなく点数がとれるよう勉強していたため、文系の同級生とはセンター試験への意気込みに差があった記憶があります。
話を戻しますが、行儀が悪いですが、カフェでなんとなく聞こえてくる会話が好きで、「どこどこのご飯が美味しいらしいよ」という夫婦の会話から、某生命保険の営業セールストーク、ちょっとやばいところから借金してしまったようで友達らしき人になんとかお金の工面を頼み込むいい年したおじさんたちの会話。
まるで大学の研究室に置いてあった漫画「人間交差点」のようで、いつか自分に役に立つ経験・知識の話が聞けるので、毎回聞き入ってしまいます。
とあるカフェでの出来事
某スタバではないチェーン店のカフェにて、TOEICのリーディングの勉強していると、隣の高校生の男女2人(付き合ってはいなさそう)から、こんな会話が聞こえて来ました。
男「数学ってどうやって勉強するの?」
女「とりあえず過去問やれば似たようなの解けるよ」
男「数学得意だよね?」
女「まぁ他の科目よりは好きかな」
男「数学科希望?」
女「数学科は受けない。」
男「せっかく好きなのにもったいなくね?」
女「卒業しても数学だと職業ないもん」
確かに自分の高校で数学科に行った同級生は、みんな学校の先生(中学・高校)になりました。
私も教師になろうかなと思って教職を取っていた時期がありました。(教師になることが親との大学にいってもいい条件でした。結局いろいろあってこの条件はなくなりました。)
しかし、今では部活の残業・モンスターペアレント、加えて教師間のいじめ等、なんかとてもハイリスク・ローリターンな職業になってしまったように思えます。※個人的な意見です。
同級生から話を聞いても部活で土日は潰れる一方で、残業代は法律で月数千円しかでないそうで、鬱で休職している先生が1人・2人いるのは当たり前・・・という世界だそうです。(あくまで私が聞いた範囲の話です。)
とはいえ、自分の好きなことを好きなだけ・膨大な時間を持て余して勉強できるのは”大学生“という期間しかありません。(残念ながら日本の一般的な人間は)
確かに4年後は心配かも知れませんが、やっててもつまらない勉強を4年間するのはしんどいです。私は物理専攻でしたが、”入りやすい“とか”ガリレオに憧れて“と物理に興味もなく入学してきて、留年・中退していった人を何人も見ました。
だから彼女には是非数学の道に進んでほしかったと思います。加えて、その先に「アクチュアリー」という職業もあることも伝えたかった。
アクチュアリーとは
アクチュアリーは数学(主に確率・統計)を使って、人がどれくらい死亡するのか、地震がどれくらい起きるのかを計算し、合理的な保険料(掛金)を算出する専門家です。給料も結構いいです。
アクチュアリーとは、確率・統計などの数理的手法を活用して、主に、保険や年金に関わる諸問題を解決する専門職です。
アクチュアリー会ホームページより
保険会社や信託銀行、官公庁などに所属し、保険や年金の料率設定、決算、商品開発、リスク管理などに携わったり、コンサルティング会社や会計監査法人に所属し、保険や年金に関わるコンサルティング業務や外部監査に携わっています。
アクチュアリー自体は「公益社団法人 アクチュアリー会」というところの民間資格ですが、会の創立が明治32年(1899年)と100年以上の歴史があります。また、実務経験を積むと保険計理人や年金数理人といった国家資格を得ることができ、アクチュアリー(正確には保険計理人・年金数理人)の署名(サイン)がなければ作成できない書類もあります。
全くと言っていいほど知名度がない資格で、弁護士が約4万人・公認会計士が約3万人がいる中で約2000人しかいません。
アクチュアリーになるには、アクチュアリー試験に合格しなければならず、平均7~8年かかるとも言われています。全部で7科目(一次試験5科目・二次試験2科目)合格する必要があり、やはり予備校のようなものもなく、基本は働きながら勉強するので、7~8年かかってしまうとも言われています。
今では早稲田大学が専門もプログラムを用意する等、学生の段階から力を入れている大学もあります。他にも日本大学のアクチュアリーコース、東京理科大学は専用の講座を開設していました。
大学生は3年生から受験できるので、学生のうちに一次試験を突破して入社してくる強者もいます。なにせ、大学院と合わせると4回受験できますからね。個人的には、アクチュアリー試験勉強以外にもせっかくの学生時代なんだから、他の事やったほうがいいと思いますけど・・・。仕事しながらでも十分合格する試験ですから。
アクチュアリー試験の内容
アクチュアリー試験の内容は、一次試験が計算系、二次試験が法律系になります。
一次試験は以下の5科目があります。一科目の受験時間は3時間です。
- 数学
- 生保数理
- 損保数理
- 年金数理
- 会計・経済・投資理論
数学と損保数理は数学Ⅲ(昔だと数Cも)全開で、微分・積分はもちろん行列の考え方なんかも出てきます。むしろ大学の数学をある程度勉強しておく必要があります。
興味ある方は、アクチュアリー会の推薦図書をご覧ください。
生保数理や年金数理は、この業界独特の学問なので、あまり学生のうちからは触れ内容がいいかと思います・・・。何せ”アクチュアリー技法“という、これまたアクチュアリーの中でしか使わない文字(暗号)が存在するので・・・。
過去問は無料で公開されています。
アクチュアリーの有名人
アクチュアリーの俳優さんや芸人さん、コメンテーターさんは残念ながらいませんが、名だたる企業の偉い人としていらっしゃいます。
日本生命 清水博社長
国内生命保険会社最大手の日本生命保険社長。実はアクチュアリーです。2018年4月から現職。京都大学理学部卒業。数学科出身で、専門は「幾何学」。就活すると分かるんですが、日本生命はアクチュアリー・オブ・アクチュアリーということで、頭が上がりません。笑
明治安田生命保険 根岸秋男社長
こちらも国内生命保険大手の明治安田生命保険社長。2013年7月より現職。早稲田大学理工学部卒業です。
メルカリ 羽村CRO(Chief Risk Officer)
2019年11月に国際アクチュアリー会(IAA)の会議が日本で行われたことに合わせて、特別講演が行われており、その時にプレゼンされていました。東京大学工学部卒業、南カリフォルニア大学経営大学院(MBA)、東京海上火災保険株式会社を経てメルカリ、という方です。今風といってはなんですが、生保・損保のような硬い企業の他にアクチュアリーの方がいらっしゃったのは意外というか感動でした。
いまやメルカリはフリーマーケットアプリだけでなく、メルペイといった金融業まで進出しており、金融業としてのリスク管理が大変と面白おかしく説明されていたのが印象的でした。
というわけで、もしあの時の高校生に”数学科進んでもちゃんと仕事の選択肢はあるから大丈夫だよ”ということを伝えたくて、長々綴ってしまいました。
もし、万が一このブログを通じ伝われば幸いです。