アクチュアリーという”村”。

アクチュアリー

12月中旬のアクチュアリー試験まで1か月を切りました。受験生の方々はまさに追い込みの時期かと思います。

去年からはCBT形式(コンピュータ形式)に受験方法が変更になりましたが、私の知る限りでは大きな波乱は聞いていませんので、うまく移行できたのではないのでしょうか。

別の試験(CFA:米国証券アナリスト)で、「最後の会場受験」「最初のCBT受験」を経験した身としては、最初はタイミング悪いときに出くわしてしまったなぁと思っていたのですが、難易度・受験体制に大きな変化もなく、すんなり移行できたという印象でした。(アクチュアリー試験2次の論文試験は良くわかりませんが。)

やはり「みんなで会場に行く」というようなイベント感・儀式感がなくなったのはさみしいですが、わざわざ朝早く起きるなり、宿泊場所確保するなりといった手間がなくなったのは負担が軽くて良いです。

アクチュアリー試験は五反田(遥か昔は早稲田大学)でしたが、CFAは東京ビックサイトと、都内からまた移動しなくてはいけません。加えて、一斉に同じ方向に向かうライバルたちを意識して無駄な体力を消耗することもありませんから。

思い返せば五反田は昼飯の場所があまりなくて、毎度同じすき家でさくっと済ませていた気がします。場所も五反田だったので、試験の最終日には会社の人(受験者)で打ち上げとかしていたのも良い思い出です。もちろんそれ以上に試験はつらいですが。泣

すき家 西五反田七丁目店

さて、アクチュアリー試験に合格すると

アクチュアリー村

に入ることになります。

信託でも生保でも存在するかと思いますが、もちろん自分では認識していないのですが、別の採用枠(いわゆる総合職)の人たちから言われたり、自分も外に出てから感じるようになりました。

会計士や弁護士のような資格ホルダー界隈では、このような”内向きの力”は当たり前に存在するように思えますが、やはりアクチュアリー村は少し特殊で具体的には

  • かなり限られた世界の中での試験受験
  • 総合職との壁
  • アクチュアリー会の横のつながり

が大きく影響するかと思います。

かなり限られた世界の中での試験受験

まず、入り口となる試験受験者層から他の資格とは異質です。通常は「試験に合格してから会社を選ぶ」という順序ですが、アクチュアリーは「会社に所属しながら勉強する」というのが基本です。そうすると、受験者はまだしも合格者のほとんどが生保・信託で占められます。

いまでこそTACとはいかないまでも、いくつかの団体が通信講座を提供していますが、昔はアクチュアリー会自身の教育講座しかなく(定員30名ほど)、あとは会社のノウハウでしか試験対策する術はありませんでした。

かくゆう私もアクチュアリー会の講座を会社のお金で通った身ですが、それこそ有名生保・信託で受講者は占められていた記憶があります。

こんな感じで勉強しているとき、受験日当日、そして合格者も顔見知りですので、自然と外との繋がりは薄くなります。

総合職との壁

生保・信託に入社すると最初に驚かされるのは総合職との熱量の差です。比率はもちろん会社によりけりですが、大抵9割(一般職含む)は総合職で、アクチュアリー枠は多くても10名程度です。

自分を含むアクチュアリー候補生は

仕事するよりも勉強しろ。いいから受かれ。

と、生きる意味を「試験合格」に置かれます。

一方で総合職の皆様は利益を追求するソルジャーなわけですから、基本的に言語も共通ではありません。会社としてアクチュアリー候補だろうが総合職だろうが分け隔てなく参加する研修が存在するのですが、人生の意味を「試験合格」に置かれた身としては名刺交換等のビジネスマナーは二の次(まず試験に合格にしないと人間として存在できないのですから)で、研修の授業もろくに聞かず損保数理の教科書を読んでいた自分とは、アクチュアリー候補生以外は誰も仲よくしようとは思いません。

念のために言っておくと、こちらも試験合格に必死ですし、あんまり総合職と仲良くすると飲みに誘われたりと、断るのがめんどくさかったりするのでその防衛の意味もありました。

こっもような感じで、村民は村民だけのコミュニティーを作っていくわけです。

アクチュアリー会という横のつながり

ここまでの2つは試験の入り口の話であったりと、若いころに醸成される内容でした。しかし、若いころほどではないですが、試験と離れたベテランになっても「アクチュアリーとそれ以外」と感じることは多々あります。振り返って考えてみると、その違いはアクチュアリー会の横のつながりによるものだと思いました。

アクチュアリー試験の合格すると、肩書が「アクチュアリー」ではなく「アクチュアリー会正会員」となるようにアクチュアリー会に所属する身となります。そうすると試験委員や講座委員、年次大会委員というアクチュアリー会のお仕事が回ってきます。大抵大きな生保・信託での持ち回りになるので個人会員(法人会員の会社の従業員ではない会員)には回ってこないですが、他社の人と接触する機会が多くなります。もちろん、他社のアクチュアリーの人です。

それこそイベント直前となると、毎週打合せしたり、イベント終了後には打ち上げもあったりと、ほぼ社内のプロジェクトを回すのと頻度は変わらなくなります。加えて、限られたコミュニティーの中での持ち回りなので、別のイベントでも「また会いましたね」なんてことはしょっちゅうのため、下手すると社内の人よりも仲良くなるということがあります。

大学も出身が同じであることが多いので(いわゆる早慶以上ですね)、自分の目の前でAさん・Bさんが研究室の先輩・後輩と気づいた瞬間を何度も見てきました。

同様にアクチュアリーの転職事情も同じ生保・信託の総合職とは様相とは異なります。

金融機関の総合職の場合、少し前(今もあまり変わらないかと思いますが)となると「定年までいなければ裏切り者」とそれはそれは転職についてネガティブで、残った有休を使うことはもちろんできず、一方で「もう会うことはないだろう」という思いからなのか送別会はやたら数を行うことが慣例です。

一方でアクチュアリーの場合、外資の生保なのか監査法人なのかと80%くらいは同業に転職することが多く、新卒採用を行わない外資については「チームのほとんどのがうちの退職者(出身)」ということも良くあったり、ある意味出向に近い感覚です。

加えて、コロナで対面開催でなくなっていますが、アクチュアリー会の年次大会にお互い出席していれば1年おきには会いますし、何か委員会が重なればそれこそ毎週合うので、退職間際に「それじゃアクチュアリー会で」と淡白な挨拶で済んでしまうことも多いです。

おかげで

有休フル消化。送別会1回。

で無事卒業できたのが自分です。

”村”と聞くとネガティブなイメージがあるかと思いますが、自分取ってはポジティブなイメージで、「ホーム」という感じがしています。もともとアカデミックな性格が合っているのか分かりませんが、村でソルジャーな方にはまだ出くわしたことがなく、基本的に知識レベルが高く、合理的な判断をしてくれるので実社会と比較すると変な体力を使わなくて済みます。笑

そろそろ来年から年次大会が実開催になったりするんでしょうか。みんな元気してますかね?

最近の年次大会ではAIやデータサイエンスの話が多くなってきました。自分も興味ある分野なのと、みんなに置いて行かれないためにこちらの勉強も始めていきたいと思います。

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