年金の財政検証とは?(2/2)

年金・生命保険
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前回の記事で、公的年金の”財政検証”とは何かについて説明しました。今回は、2019年8月27日に公表された2019年度の財政検証の結果について説明したいと思います。

結果としては13ページにまとめられていますが、経済前提が多数あるなど、初見では難しい内容なので、順を追って説明していきたいと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/000540198.pdf

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2019年度の財政検証の前提

人口統計の前提

まずは財政検証の前提である人口統計から説明します。財政検証は100年程度のシミュレーションを行って、ちゃんと年金給付を行うことができるかをチェックします。そのため、この先100年間どれくらい長生きして、どれくらい人口が増えるかを予想しなければいけません。

その前提の数値がこちら。

厚生労働省ホームページより

合計特殊出生率

簡単に言ってしまえば、一人の女性が一生涯に産む子供の数です。先進国では2.08程度ないと、人口が減少すると言われています。

2015年の実績では1.45ですが、それでもここ数年上昇しています。前回の財政検証時に使用した実績値(2010年実績)は1.39だったので、0.06ポイント上昇しました。

先進国の数値を比較すると、日本は低いほうですね。

内閣府ホームページより

アメリカは宗教的に堕胎が厳しかったり、フランスの場合は結婚のハードルを下げたりして出生率を高めた歴史があります。

平均寿命

良くニュースでも取り上げられるので、毎年伸びていることはご存知かと思います。2010年当時は男性:79.6歳、女性:86.3歳だったのが、2015年には80.8歳、女性87.0歳になりました。

直近の2018年では男性:81.3歳、女性:87.3歳となり、30年前の平成元年と比較すると5年以上寿命が伸びています。

厚生労働省ホームページより

女性は日本が世界一ですが、男性はスイスに抜かれています。

容易に想像できますが、今後日本の人口は減少していきます。ただ減少していくだけでなく、今いる高齢者は長生きするので”若者の割合“が減っていきます。

経済成長の前提

続いては経済前提です。

前回(平成26年度)の財政検証ではA~Hの8通り、前々回(平成21年度)の財政検証では高位・中位・低位の3通りでした。

平成21年度では3通りだったので、真ん中の見通しが”国のメインストーリー“と捉えられてしまったため、その次の回(平成26年度)からは真ん中がないように”偶数”にしたという噂があります。

そして前回(平成26年度)は8通りとパターンが多く、国民をはぐらかそうとしてる!と、これはこれで叩かれたため、今回は少なくして6通りにしたのでしょうか。

厚生労働省ホームページより

経済成長は、全要素生産性(TFP)というもので示されます。

全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)の略称。経済成長(GDP成長)を生み出す要因のひとつで、資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のこと。技術進歩や生産の効率化などがTFPに該当する。

野村證券ホームページより

「コブ‐ダグラス生産関数」という関数を使って推計するようです。

ここで、YはGDP、Aは技術水準(TFP水準)、Kは資本投入量、Lは労働投入量、aは資本分配率(1-aは労働分配率)です。添え字のtは時間を表します。

この表の中で重要なのは、運用利回りです。今後のGPIFの運用利回りの予想にも関わってきます。上の表では、「物価上昇率+運用利回り(実質)」の数字がそれになります。

また、資料では”運用利回りは、内閣府試算の長期金利に、内外の株式等の分散投資による効果を加味し、長期金利上昇による国内債券への影響を考慮して設定。“と記載がありました。

概ね真ん中の経済前提(パターンⅢ)では、4%程度の運用利回りを見込んでいるようです。物価が上がれば、物価分だけ年金額を増額しなければいけないですし(公的年金の負担増)、一方で賃金が上がれば報酬比例部分の保険料収入が増える(公的年金の負担減)ので、重要な予想です。

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2019年度の財政検証結果

さて、やっと結果まできました。財政検証の結果はこちらです。

結果はさらっと説明したいと思います。

結果はどのケースにおいても、現在の所得代替率の61.7%を下回り、1割程度減少することが見込まれます。

日本の年金制度は少子高齢化の影響で、このまま放っておく(所得代替率6割で給付し続けると)と数十年程度で資金が枯渇します。そのためマクロ経済スライドによる所得代替率の調整(給付の節約)で、末永く運営していくことを目標としています。

厚生労働省ホームページより

そのうち、今の団塊世代(現在の70歳前後)と段階ジュニア世代(現在50歳前後)のボリュームゾーンがいなくなり、経済も成長していくと考えると、どこかでバランスするタイミングが出てきます。(バランスしないかもしれません)。

バランスするタイミングがあるケースがパターンⅠ~Ⅲで、約20年間はマクロ経済スライドで給付額(所得代替率)は減少しますが、2045年ごろになるとバランスし、それぞれ50%超でその先50年間は給付できると、試算されました。

一方でバランスしないケースがパターンⅣ~Ⅵです。一応、所得代替率は50%をキープしよう!ということが法律として掲げられているので、可能性が濃厚となれば対策を打つのではないのでしょうか。

5年後の財政検証では、どんな諸前提が置かれるか楽しみです。

国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号)
給付水準の下限)第二条 国民年金法による年金たる給付及び厚生年金保険法による年金たる保険給付については、第一号に掲げる額と第二号に掲げる額とを合算して得た額の第三号に掲げる額に対する比率が百分の五十を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする。

参考に5年前の財政検証との前提の違いを並べておきます。

厚生労働省ホームページより
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