TOEICの勉強の一環として読んでいるCNBCの記事で面白いものがありました。
今や世界一の大富豪(Richest Man)として有名で、1260億ドル(=13兆円)もの資産を持っています。
記事によると、単なるオンラインのブックストアであった以前はプリンストン大学の学生でした。
とはいえプリンストン大学は有名な大学で、ファイマン物理学で有名なリチャード・ファインマン(1965年ノーベル物理学賞受賞)や、ゲーム理論で有名なジョン・ナッシュ(1994年ノーベル経済学賞受賞)と、これだけでは語りきれない方々が卒業生として名を連ねています。
ベゾス氏はプリストン大学時代は”物理学”専攻でした。しかし、優等プログラムの上位25人の学生の1人であるにも関わらず、ベゾス氏は十分頭が良くないと考えていたそうです。そのため、その後、ベゾス氏は人生の方向を変えます。
1999年ベゾス氏は「部屋を見渡すと、明らかに物理に関して自分より賢いやつが、少なくとも三人いた。」と言っていました。
“I looked around the room and it was clear to me that there were three people in the class who were much, much better at [physics] than I was, and it was much, much easier for them,”
CNBC
「頭のつくりが明らかに違っていた」とも言っています。
”It was really sort of a startling insight, that there were these people whose brains were wired differently, ”
CNBC
特に数学の問題を何時間も考えて解決した際に、この考えが明らかになったそうです。2018年9月のワシントン紙へのインタビューでは、一つのエピソードを語っています。
「とある偏微分方程式に、数学が得意なルームメイトのジョーと二人で3時間ほど取り組んだが解けなかった。そのため最終的に友達のYasantha Rajakarunanayake氏に助けを求めた。」
”It’s really really hard. I’m studying with my roommate, Joe, who is also really good at math. The two of us worked on this one homework problem for three hours and got nowhere. ”
CNBC
「彼に問題を見せると、しばらく問題を見つめ”答えはコサインだ”と言いました。”本当にコサインか?”と聞き返しましたが、彼は”そうだ”といって答えを見せてくれました。」
We show him this problem, and he looks at it, stares at it for a while, and says ‘Cosine, that’s the answer.’ And i’m like ‘That’s the answer?’ And he’s like ‘Yes, let me show you,’”
CNBC
「彼は自分の部屋に私たちを招きいれると、私たちの前に座り、代数に関しての3ページの答えを見せてくれました。まさに答えはコサインだったのです。私は”おまえの頭の中はどうなっているんだ?”と聞くと、”見せられないけど、3年前に似たような問題を解いたことがあるから解けたんだ。だからすぐに答えがコサインだと分かったんだ”と答えました。」
“He brings us into his room, he sits us down, he writes out three pages of detailed algebra, everything crosses out, and the answer is cosine. I said, ‘Did you just do that in your head?’ And he said, ‘No, that would be impossible. Three years ago, I solved a very similar problem. I was able to map this problem onto that problem, and then it was immediately obvious that the answer was cosine.’”
CNBC
このとき、ベゾス氏は自分のキャリアを”物理から変えよう”と思ったそうです。
「私が偉大な理論物理学者に決してなれないことに気づけた瞬間が、私にとって重要な瞬間だった。」
“That was an important moment for me, because that was the very moment when I realized I was never going to be a great theoretical physicist,”
CNBC
「私は探索を始めました。多くの場合、上位10%の位置にいれば十分その分野に貢献できると思いますが、理論物理学者の場合、世界のトップ50人に入っていなければ、何もなさないと同じなのです。」
“I started doing some soul searching. In most occupations, if you’re in the 90th percentile, you’re going to contribute. In theoretical physics, you gotta be one of the top 50 people in the world, or you’re really not helping out much.”
CNBC
ベゾス氏は1986年に大学を卒業後、専攻を電子工学およびコンピュータサイエンスに変更します。
その後、1994年にヘッジファンドで働いているときに、WEB業界が年間23倍で成長している統計を見つけ、1995年にAmazonを立ち上げるきっかけを得るのでした。そして今日”everything store”とよばれる100兆円企業を作り上げました。
私も物理学を勉強していた者の端くれとして、非常に気持ちが分かります。他の学問のそうかと思いますが、特に理論物理学は400年前のニュートンを始め、相対性理論のアインシュタイン、量子力学のシュレーディンガー、史上最高の天才と言われたジョン・フォン・ノイマン等、過去の人類の英知を超えて新しい発見がなければ意味がないのです。
それこそ何回実験をしたとか、セレンディピティ(幸運)があったとは関係なしに、純粋に紙とペンの戦いであり、宗教っぽいことを言いますが、いかに神様の領域に近づけるかなのです。
決定論者だったアインシュタインが、確率論である量子力学の提唱者のボーアに対して放った”神様はサイコロを振らない”という言葉は、まさに半分宗教じみた言葉だったかと思いますが、理論物理(半分は数学の領域かも知れませんが)を物語っています。
私も純粋に物理が好きで物理学科を選びましたが、ベゾス氏ほどではないですが、同じような気持ちを味わいました。能力的なところもありますが、資金面も大きく、結果「中途半端に大学院いくのもな」ということで、さっさと社会に出ました。
もちろん、「頭が良くないなら純粋学問勉強する必要がない」と言うつもりはありません。高校の部活と同じでみんながみんなプロ野球やJリーグを目指しているわけではありません。なんだかんだ物理を始め数学・化学等、社会に出ると必要な場面が多く、重宝されます。
私は「自分では新しい発見ができないけれど、そういう才能がある人がいたら、自分のように支援したい」という気持ちから、今の職業を選びました。もしかするとベゾス氏も将来そういった支援財団を作るのかもしれません。