新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が進行し、それに合わせて株価が下落しています。
中国武漢市から感染が拡大している新型コロナウイルスは、2月29日時点において、世界で8万人以上が感染、死者も3000人近くに上っています。
SARS、または、MARSに比べて致死率は低いものの、感染力の強さ及び潜伏期間が長いことによる感染拡大防止の難しさを考慮すると、事態が収束へ向かうのはまだ先のことではないかと懸念されます。
まだまだ収束がいつになるか不明ですが、今後の記録のためにも、足元までの情報を整理しておきたいと思います。
株価への影響
特に2月後半にかけて、世界的に株価が下落しました。1週間の下落幅としては、2009年のリーマンショック以降最大値となり、”コロナショック“とも呼ばれるようになりました。
ダウは最高値だった29500ドルから4000ドル近く低下しました(2月末時点)。
2月27日(木)の下落幅は1190ドルと過去最大となりました。
コロナウイルスの感染拡大の時系列
中国武漢での感染確認自体は12月から始まっていました。
当初は致死率も低く、そこまで問題視されていなかったのですが、その分キャリア(ウイルス保有者)も移動しますし、症状が出ない人もいるとのことで、あっという間に世界的に拡大しました。
1月31日にWHOから非常事態宣言が出され、 非常事態宣言が出されたのは2009年のインフルエンザ流行以来となりました。
12月に感染者が確認されてから、2月1日に感染者が1万人を超えました。2月12日頃に中国が臨床診断による感染もカウントに入れ始めたので、一気に1万5千人ほど増加しました。
米国の株価に影響し始めたのは、22日に米国の感染者が一気に人数が増えてからです。22日に米国CDC(=疾病対策センター)が、新型コロナウイルスについて「いずれ、アメリカでも感染が拡大する可能性が高い」 とコメントを発表したあたりから、米国でも感染拡大懸念が出てきたように感じます。
米国から日本と韓国への渡航警戒レベルについて、4段階中の下から2番目にあたるレベル2の「注意の強化」に引き上げたこと(22日)や、感染ルートが不明な感染者が確認され、カリフォルニア州で8400人が感染の観察対象になった(27日)ことが、感染懸念拡大の要因になりました。
2月末現在は、中国での死者数の増加率は抑えられてきています。一方で、イタリア・韓国の死者数が増加しています。
過去の感染病との比較
新型コロナウイルスと比較されるのが2003年のSARSをはじめとした過去の感染病です。
SARSが流行した2002年冬~2003年上期(2002年11月中国広東省で初患者確認、2003年7月収束)を確認すると、被害の大きかった香港のハンセン株価指数は、新規感染者の増加が頭打ちとなった2003年4月下旬に株価が底打ちしました。
SARSが流行した時は12%ほどS&P500は下落しました。
SARSの致死率は約10%で、今回の新型コロナウイルスは2~3%とそこまで生死にかかわることではないのですが、その分対応が遅れて感染が拡大したことや、また中国は2003年時点の世界のGDPに占める割合は4.4%でしたが、現在はその比率は15.4%を占めており、中国経済の影響が大きくなったことが要因です。
さらには、世界的なサプライチェーンの統合が進み、それは特にテクノロジー産業で顕著です。そして中国には消費者がいます。中国の個人消費は、国内および世界の成長を牽引しており、このことは家計支出減少の影響が今回はより大きくなる可能性があることを意味します。
すでに感染者はSARSの8000人から、10倍の8万人まで拡大しています。死亡者数も2月9~10日頃に世界で1000人を超え、SARS・MARSを上回る死者数になりました。
今回の新型コロナウイルスと症状や経済的影響が近いと言われているのが、1918年のスペイン風邪です。死者数は世界で2千~5千万人ともいわれ、当時ヨーロッパでは第一次世界大戦の真っただ中で多くの国の人々が混ざり合い、感染が世界に広がりました。
日本でも45万人の死者が出たと言われています。
今後の世界の対応
中国共産党指導部は金融・財政政策をより柔軟に運営する方針を示し、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けている経済のてこ入れに一層注力することを示唆しています。 中国には財政的な刺激策を実施する余力があり、2003年のSARS流行の際にも中国は事業税や法人税を引き下げました。
米国も28日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「我々は政策ツールを用いて、経済を支えるために適切に行動するだろう」とする緊急声明を発表した。
「米経済は力強い」と市場に冷静な対応を呼びかけつつも、3月中旬の次回会合で利下げする可能性を示唆したもので、市場では0.50%の大幅利下げに踏み切るとの観測が高まっています。
WHOも警戒レベルを最高水準まで引き上げたものの、パンデミック(世界的な大流行)の宣言ではないと強調しており、ウイルスの感染拡大を抑えることは可能だとして、各国に対策を急ぐよう求めています。
日銀も新型コロナウイルスの感染症拡大を踏まえ3月2日、「適切な金融市場調節や資産買い入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく」とする黒田東彦総裁の談話を発表しました。
日銀は異次元の金融緩和で、国債の保有残高が毎年80兆円をメドに増えるように国債を買い入れているほか、上場投資信託(ETF)も年6兆円のペースで買い入れていますが、金融機関から2週間の期限つきで国債を買い入れて5000億円を供給する特別なオペ(公開市場操作)を約4年ぶりに実施すると発表しました 。
ここ1~2週間で感染拡大が落ち着くと良いのですが・・・