ウォールマートやターゲットと言った決算結果が不調で、インフレによる景気への悪影響が顕在化してきたとの見方から、株価が下落しました。
5月18日の米株式市場でディスカウントチェーン大手ターゲットの株価は25%安と、1987年のブラックマンデー以来の下落率を記録した。その前日にはをるが類似の状況に陥った。インフレ加速が米消費者にとって痛手となり、企業の利益率が損なわれている兆しだ。S&P500種株価指数の業種別指数で小売りは7%余り下落。S&P500種全体も4%下げ、弱気相場入りに近づいた。
bloombergより
5月20日時点で、S&P500の最高値からの下落率は20%に近づき、歴史的に見ても大きな調整局面に入りました。
一方で、後日、米百貨店大手のメ―シーズや、向こうで言う”100円ショップ”のダラー・ツリーの決算結果は良好で、「サプライチェーンの圧力やインフレ高進による逆風の継続にもかかわらず利益見通しを維持した。」という見方から、米国株価全体を押し上げました。
26日の米株式市場で百貨店メーシーズの株価が急伸し、前日比19%高の22.92ドルで通常取引を終えた。約40年ぶりの高インフレにもかかわらず、高級品需要が持続していることを背景に通期利益見通しを上方修正した。
bloombergより
各社の決算で、景気動向を測ろうとしているようですが、結論としてマーケット全体の決算結果(2022年第1四半期)はどうなっているのでしょうか。現在、S&P500のうち95%以上の488社が決算発表を終え、約8割の企業が市場予想を上回っているとのことです。
ただし、過去4四半期の上方修正(Above)割合の平均が83%ということで少し目劣りしますが、長期の平均(1994年以降)が66%ということで、長期トレンドは上回っているようです。
Through May 27, 488 companies in the S&P 500 Index have reported earnings for Q1 2022. Of these companies,77.5% reported earnings above analyst expectations and 19.7% reported earnings below analyst expectations. In a typical quarter (since 1994), 66% of companies beat estimates and 20% miss estimates. Over the past four quarters,83% of companies beat the estimates and 13% missed estimates.
Factsetより
今のところ、2022年のEPS(1株当たりの利益)予想は228ドルとなっています。
ヤルデニ社のレポートによると、徐々にEPS予想は上方修正されているようです。具体的には、2月末時点の2022年のEPS予想は225ドルだったので、この3ヶ月で3ドルほど引き上げられたことがわかります。
https://www.yardeni.com/pub/yriearningsforecast.pdf
決算は”概ね好調”という状況で推移していることが分かりますが、一方でもう一つ重要な要素がPER(株価倍率)です。一時期35倍を超えていたPERも、足元は21倍(12か月後予想PER)にまで低下しました。
過去の平均(22倍~25倍)と比較しても、低水準になっていることがわかります。例えば、このまま21倍程度で推移すると考えると、EPSの予想が228ですので、S&P500指数は約4800まで上昇(年初から見れば回復)することが予想できます。
例えばこれが5年平均の25倍まで戻ったとすると、S&P500は年末までに5700まで上昇することとなり、足元(4000)から40%上昇することが予想できます。
運用会社の予想が4400~4700のレンジですから、PERを19~20倍で予想していることがわかります。最も低い予想(年末のS&P500=3700)を出しているモルガン・スタンレーは、EPSを225とそれほど市場予想と変わらないとしている中で、PERを17倍と見ています。
この”17倍”と言う数字は10年前の2013年まで遡らなければいけないので、いささか警戒しすぎではと思うところですが、モルガンスタンレーのストラテジストは更なる調整を予想しているそうです。