金融政策とはなにか?と掘り下げていったら、ここまで来てしまいました。
マイナス金利とは
マイナス金利自体は、今まで下げていた政策金利をさらに下げたため、マイナス圏に入っただけで、+0.01%か△0.01%で大きく意味は変わらないかと思います。
今回は、日銀の公表資料にもあった「3段階の階層構造」というものが気になりましたので、どこにどのようにマイナス金利が適用されているのかまとめてみました。
証券アナリスト試験に「どこにマイナス金利が適用されているか述べよ」のような問題は、きっと出ませんので、興味がある方は読んでみてください。
金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。
日本銀行(2016年1月29日)
日本銀行当座預金とは、日本銀行が民間の金融機関等から受け入れている当座預金のことで、今のところ個人の預金にマイナス金利は適用されていません。
今まで、金融機関は日銀当座預金に預けているだけで、0.1%の利息が付いていましたが、これが無くなったので、金融機関の収益に大きな打撃を与えました。
また、マイナス金利により、金融機関が企業に貸し出す利息も小さくなったので、いわゆる「利ざや」が小さくなり、こちらも収益を圧迫する結果となりました。
上記の階層は、以下の3つです。
日銀当座預金の3階構造
①基礎残高:+0.1%適用
②マクロ加算残高:0%適用
③政策金利残高(①と②を超える部分):△0.1%適用
そもそも日銀当座預金残高の規模がどれくらいあるかというと、350兆円ほど。
そのうち、マイナス金利の対象となるのは20兆円ほどです。(2019年3月現在)
基礎残高
基礎残高は、簡単に言うと、2015年1月から12月の積み期間(2015年1月16日から2016年1月15日)における日銀当座預金の平均残高です。
今まで(2015年以前)以上に現金を保有すると付利しませんよ、というメッセージみたいなものでしょうか。
マクロ加算残高
正確には、以下の残高を合計した額です。
- 基礎残高に一定の掛目(基準比率)を乗じた金額
- 付利を行う積み期間における貸出支援基金、被災地金融機関支援オペおよび熊本地震被災地金融機関支援オペの平均残高
- マネー・リザーブ・ファンドに関する特則に基づくマネー・リザーブ・ファンドの受託残高に相当する金額
細かい計算方法は省略してしまっているので、正確にはこちらを参照してください。
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2016/not160616a.pdf
今回は、現在マクロ加算残高の約半数を占めている「1.基準平均残高に一定の掛目(基準比率)を乗じた金額」について説明します。現在基準比率は35.5%(2019/3/11見直し)です。
2019年3月のマクロ加算残高は約150兆円であるため、マクロ加算残高のうち上記の基準比率に比例する額が50%程度※占めています。
※基礎残高に比例する額(約73兆円)=基礎平均残高(約210兆円)×35%
過去の日銀当座預金推移が日銀のデータベースになかったので拝借したグラフですが、マクロ加算残高が年々増加していることが分かります。
これは、日銀が金融緩和で、国債の買い入れを継続的に行っている影響です。この影響を緩和するためにマクロ加算残高という枠が作られたといってもよいかもしれません。
当初0.0%だった基準比率は、現在(2019年3月)35.5%※に達しています。
※ 2019年4月~5月積み期間分
この操作によって、金融緩和環境下(国債買い入れ継続)では自動的にマクロ加算残高が増加するので、都市銀行・地方銀行等の各業態別の当座預金残高の付利は、加重平均ベース(+0.1%部分と△0.1%部分の平均)で全てプラスで、マイナス金利政策の下でも支払いは生じていません。
日銀の国債買い入れで世の中の現金が無理やり増やされているのに、その受け入れ先となる銀行に負担がかかるのは”ちょっとかわいそう”という考えからでしょうか。
日銀は、量的・質的金融緩和を実行するにあたり、基準比率という仕組みを導入し、当座預金残高におけるマイナス金利の影響を緩和しています。