アクチュアリーと学びなおし。

アクチュアリー

最近は「リスキリング」という言葉を聞きます。

リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」です。現在注目を集めているきっかけは、2020年のダボス会議において、「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表されたことでした。更に、岸田総理の所信表明演説内では、リスキリングに「今後5年間で1兆円投入」という発言があり、新語・流行語大賞にもノミネートされるなど、非常に注目されています。

「人生勉強し続けるもんだろ。」と意識が高いのか、ひたすら資格試験を受けさせられた金融機関出身の社畜根性が抜けないのか、とリスキリングを当たり前に思うところではありますが、少子高齢化で人材不足に悩む我が国の労働問題の解決策であったり、社員とのエンゲージメント向上であったり、自発的に物事を考えるようになったりと、企業の人事戦略として注目されています。

驚いたのは三井住友信託の記事です。銀行の半分の人材で、1億円未満のシステム導入案件を指揮できるようにするとのこと。具体的には、システムで効率化したい業務の可視化や、導入効果の算定、ベンダーへの案件説明や見積もり依頼、システムの検証・改修、障害対応などができるようにするそうです。

日本経済新聞より

会社が違うので何とも言えませんが、同じような日本の金融機関にいた自分としては、アクチュアリーのような入社時点でゴリゴリの理系人材を除いて、特に30歳後半以降の文系人材が片手間の努力で身に付くような話ではないと思っています。

デジタルネイティブという言葉が正しいのか分かりませんが、今の20代はスマホ・PCが使えるのが当たり前ですし、IT会社のイメージも良いので、文系であっても「ある程度そういう知識がないとね。」という意識のを持って人生を歩んでいるかと思います。

一方で、自分よりも少し上(35歳以上)となると、どうしてもITスキル=PCスキル=オタクというイメージがあったり、IT会社界隈はライブドア事件(2005年)が先に出てきてしまうため、少し胡散臭いという印象を持っていることがほとんどです。

加えて、ちょうど自分が就職活動していたリーマンショック後では、やはり大手会社が採用人数を抑える一方で、業界としてニーズが出てきたことから

システムエンジニア(SE)

に流れる学生が文系・理系関係なく大量発生し、特に文系がシステムエンジニアになることについては色々な思いを持って見ていました。理系はメーカーに加えて一定層いましたが、いつのころからか「そもそもキーボード打てるの?」という文系の同級生たちから「SE(システムエンジニア)に内定貰った。」という話を聞くようになりました。

つい最近まではプログラミングの話をしてキャッキャしている我ら理系を蔑んだ目で見ていたのに、と驚いたことは鮮明に覚えています。その後、SEになった同期のほとんどが5年以内に人材派遣会社(これも当時の流行)や公務員に転職した話を聞きました。ちなみにシステムエンジニアがどういう仕事をしているかは全く知らないのですが、プログラミングを意外としない(している会社もある?)という話を聞いて、これもまた驚きました。

なぜこんなに熱く語っているかというと、前職がジャパニーズ金融機関なんですが(三井住友信託ではないけど、アクチュアリー界的には仲間だと思っている。)、年に1回くらいある人事部との面談で、あなたの強みは何ですか?的な質問に対して「プログラミング(趣味)等、ITにも強いところです。」と答えたところ鼻で笑われたことです。

鼻で笑われたというか「こいつ何言ってんだ?」という目で見られたうえ、「ここは金融機関だよ?どんな意味があるの?」という卑下された質問を”人事部様”よりたくさん頂きました。確かに今の50代が入社したバブル期は電卓で債務計算していたとか、紙に穴を空ける方式でコードを書き、24時間後に”入力した部屋とは別室から”アウトプット(計算結果)が出てきたという世界です。

さらにそのちょっと昔(昭和の終わり?)は「書庫係」と言って、倉庫から書類を出すためだけの仕事(今みたいに「あのフォルダにあるから。見つからなかったら検索して。」ということが出来ない紙だけの時代。)があったりするのですから。それを考えると現代人は当時の人より同じ24時間でどれだけ多くのタスクをこなしているんでしょうか。

話を戻しますが、まだ「アクチュアリー」という特殊な部署の人間の発言なのでこの程度で済んだのでしょうが、普通の総合職であればその場で矯正されていたのでしょう。これでも数年前の話です。

そんな世界がすぐすぐ変わるのでしょうか。

加えて、いくら勉強を続ける金融機関とは言え、30歳を超えると

パタッと勉強しなくなる

ことが多い印象です。さすがに30歳近くになると課長程度の管理職に就く者が多くなるので、プレイヤーとしての知識が不要になることやもちろんこの年頃になると「資格取れ」という人事部からのお達しもなくなります。(出世しないと、逆に評価軸に自己啓発が含まれるので上司から「なんか取らないの?」と言われます。)

また、入社当時は同期研修で「社長になるぞ!」と言い合って喧嘩していた者も、ある程度現実的な自分の将来が見えてきて、「海外に行ってグローバルに出世したい。」という本当に野望を持つ者以外はTOEICの点数すら上げることを辞めます。

あとは、この年頃になると家庭環境も変わるのも、大きな要因です。30歳となれば大半は結婚して、子供が出来て・・・というお年頃です。夜泣きの赤ちゃんを置いて「ちょっと勉強してくるわ。」と言えば、いくら将来賃金の現価計算ができる奥さんであっても

「いいわね。あなたは勉強と仕事しているだけで。」

と言われるのが世の常です。しかも、この時期の話は一生言われる可能性が高いとのこと。
※慶応理系アクチュアリーを奥さんを持つ先輩の実話。

というわけで、ITスキル云々に関わらず、おじさん・おばさんになって勉強をするということは、新しい分野でなくても日本の会社の環境(長時間労働や評価体系)や文化(年功序列や「頑張っている者」が馬鹿にされる≒就社のため許容範囲が狭い)を踏まえると、難しいように感じられます。加えてFPや簿記、外務員等の細かい資格取得で燃え尽きてしまっている金融機関は特に。結局、会社の支援なくてもやっている奴はやりますし、やらないやつは何があっても(500万円くらい目の前に積まれればやるまもですが)やらない気がします。

前もどこかに書いたかもしれませんが、やはり大手金融機関の多くは学歴主義で学歴だけ(加えて前述の細かい試験を合格する従順さがある)で入社してくるものも多く、それこそエスカレーター式で

「勉強なんか中学受験(SAPIX)以来だわ。」

はもちろん、大学受験を経験していないから「Σ」も分からないという者もたくさん見てきました。もちろんそれでも(通常業務では使うことないですからもちろんですが)、それなりに出世街道を歩んでいる者が多いです。

こんな数列も集合論も分からない人間に、無理やりIT知識を付けさせるなんて、システムエンジニアになって散っていった大学同期たちの再来になってしまうようで、本人にとっても、社会にとっても、不安で仕方がありません。

さて、個人的な思いも重なって前置きが長くなりましたが、アクチュアリー界隈では「学びなおし」が当たり前です。具体的な理由は3つあるかと思っています。

①入社してからも続く勉強

普通の就活は内定が出たらそこで「終了」ですが、天才(天才は最も違う分野で輝いてほしいと思いますが)、凡人のアクチュアリー候補生はそうはいきません。内定が出たらまずは学生のうちの科目合格を目指します。別に会社から強制されているわけではありませんが、今怠けても意味がないからです。

実際に就職してしまえば仕事の合間に勉強をせざる得ないので、まだ自由な時間がたくさんある(修論があるとそうはいかないかも知れませんが)ので、なんとなくここで受かっておかないと就職してからはもっと難しくなるだろうと、損切り(アクチュアリーを目指すのを辞めること)のタイミングを見据えて一度エンジンを本格稼働させる意味もあります。また、皆それなりに大学受験経験をしているわけなので、受験期の知識の忘却曲線を振り返ると「遊んでいてもしゃーないな。(あとで思い出す作業がはいるだけ無駄)」という気持ちから、結局エンジン全開で卒業までの時間を過ごします。

これは社会人になってからも続き、結局はある程度遊びつつしっかり勉強時間を確保するということを、順調にいっても入社5年程度は続けることになるので、いつの間にか習慣付きます。というか習慣付かないと受かりません。

②入社というよりは入職

今では終身雇用制的な感覚が薄れつつある(と言われている)日本企業ですが、やはり金融機関となるとそれはそれは強いものです。転職での退社となるとそれは悪者扱いで、有休の消化なんて話が聞こえたときは、怒号が飛んでいました。そのため、「いかに会社に残って出世するか。」に注力する必要はなく、そつなく仕事をして、大手企業の優位性をかざして成績を積み重ね、上司との飲み会やゴルフに時間を費やし評価してもらうのが、一番給料を上げる効率的な方法でした。(たぶん現在進行形)

そのため、何か他のスキル(仕事に関係する勉強であっても)を勉強することの投資効率は圧倒的に低いため、合理的に考えても「リスキリング」するモチベーションはないわけです。一方、アクチュアリーは周りの総合職から

村”

と言われるように、会社のつながりよりも、アクチュアリー界を介した交流のほうが厚いです。そう頻繁に交流会があるものではないのですが、同じアクチュアリー試験という戦いを経験した親近感なのか、日頃会社で文系に虐げられている理系が唯一得られた安息の場だからなのか。そのため、同じ会社のアクチュアリーが転職という話になっても、前述した文系の私刑はなく「どうせ研修会であうんだから。」と有休もほぼマックス消化で送り出してくれます。(監査的な業務なので、変なモチベーションで残しても逆にリスクがあるという判断も聞きます。)

③なんだかんだ母集団が優秀・前向き

同じ資格系職業の公認会計士・弁護士や、理系のメインの就職コースであるメーカーと比較したわけではありませんが、少なくとも有象無象(例えそれが早慶卒であっても)の金融総合職を母集団と比較すると、視野が広いというか、趣味でいろんな勉強していたり、それこそプログラミングはもちろん、公認会計士・税理士・社労士を取得する者も珍しくありません。つまり、勉強範囲もそうですが、勉強すること自体にケチをつける人は皆無です。

もちろん全員ではないですが、自分もアクチュアリーの交流会に参加したときに「CFA受けてるんだよね。」と話したときは、なんというか「勉強している」ということに凄いというよりは、確率統計的には少しファジーな投資理論の勉強をしていることに「すごいね。」という反応はあれど、実は自分も・・・とAIやリスク管理、会計・・・と皆何かしら、子育ても仕事も忙しいのに勉強していることがこの界隈では偏差値50くらいの会話です。別に圧があるわけでもなく、勉強しなかったからと言って虐められるわけではなく、心地いいというか、あいつらも頑張っているから自分も適度に頑張ろうくらいのモチベーションに繋がっています。

逆に「何も勉強していない」と聞くと、「怠けている」という発想よりも「仕事忙しいのかな」と「家庭が忙しいのかな」と思う程度です。

さて、理系出身のプライドとして前職の文系同期たちにさすがにIT知識は負けられないので、引き続きプログラミング等のお勉強は細々と続けていきたいと思っています。それよりも先にCFA level2のほうもそろそろ節目を付けないとなとは思っているんですが、何せ円安が試験申し込みに躊躇させます。泣

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