アクチュアリーになるためには学歴は必要なのか。

アクチュアリー

アクチュアリーを目指す人にとって気になるのが、アクチュアリーになる人の学歴。極論を言うと資格試験なので、アクチュアリー試験に合格してしまえば、アクチュアリーになれるため、受験資格である短大卒以上の学歴※があれば、出身大学がどこか・院卒なのかは関係ありません。

※アクチュアリー会のホームページでは大学・短大卒以上で受験可能(大学在学中は大学3年生以上で受験可能)

しかし、現実的に”アクチュアリーとして採用されなければいけない”ということや、一般論として”どの水準の学歴が合格のボリュームゾーンか”が気になるところです。そこで今回は

アクチュアリーとして信託銀行・生保会社に採用される学歴
アクチュアリー試験に合格する学力のベンチマークとしての学歴

と2つの観点について、知り合いのアクチュアリーたちに聞いた内容をまとめてみました。当然、ある集団のサンプリングになるので、実際はもっと上振れていたり、下振れていたりするので注意です

結論を言うと①と②の相関は大きく

①と②で大きな”ズレ”はありません

例えばの話ですが、アクチュアリー試験は比較的「日東駒専」のランクの大学(偏差値50程度)でも合格しやすいけど(例えばの話です)、わざと早慶(偏差値60程度)以上しか採用しない、ということではないということです。

アクチュアリー試験が宅建や証アナ程度の難易度だったら、わざわざコミュ障で学歴でマウント取りまくるペーパーテストしかできない高学歴(偏見)よりも、ちゃんと仕事してくれそうな人を選びますよね。

コミュニケーションもリーダーシップも抜群な高学歴がいたら無敵ですが。そんな人はアクチュアリーなんかじゃなくて、外資のコンサルに行きますよね。むしろ、能力を発揮していただくために行ってください。

アクチュアリーとして採用される学歴

採用する会社側からすると、人間性や仕事できる能力よりも、「こいつ試験受かるかな?」という目線は必ず入ってきます。正直、アクチュアリーを希望してきてアクチュアリー試験に合格しないということは、「僕は営業やりたいです。」と言っておきながら「やっぱり営業はできないです。」と言っているようなものなので、本人の人間性が疑われます。

私の聞いた話では、直接何か評価に繋がるわけではないですが、なかなか受からない若手がいると「あいつを面接通したやつ誰だ?」と採用面接を担当した人も結構責められるそうです。

このような理由から、アクチュアリー採用では

アクチュアリー試験に合格するかどうか

という要素が第一優先され、やはり”試験が得意”と”学歴が高い(大学受験を頑張った)”は自ずと比例することですので、学歴は優先されます。

後述のエピソードでも記載していますが、「早慶・旧帝国大学以上かつ理系以外」の場合、大学で成績が良かった等、何か「私は試験に得意です。」アピールしないと、難しいでしょう。詳しくは後述しますが、院卒か学卒かはあまり関係ない印象です。

他には「推薦入学や学歴ロンダリング(大学院から大学を変えた場合)」の場合が考えられます。もちろん、基礎学力に関係するので社員側も可能な限り情報収集します。学部(大学院の前)がどこだったのかは履歴書を見れば分かりますし、推薦入学だったかどうかはインターンや面接での会話をもとに推測します。

インターンでも面接でも確実にアクチュアリー試験の話になるので、社員たちからは「まぁ大学受験に比べれば大したことないよ。強いていえば、仕事しながら勉強するのは大変かな。大学受験はどうだった?」と自然と質問がくるので、そこで白状せざる得ない状況になります。

採用でのエピソードをいくつかご紹介

今や各生命保険会社や信託銀行では「アクチュアリーのインターン」が良く行われています。会社によって形式は様々ですが、1日~2日程度で座学を聞いてもらったり、簡単なプレゼンをしてもらったり、社内見学を行ったりしています。インターンの目的は「そもそも業務を知って貰おう」という表向きな目的と、「ある程度優秀な学生を判断しておこう」という目的があります。

念のために申しあげておくと、「インターンで合否が判断されてしまっているのか。インターンで絶対結果を出さなくちゃ!」というわけではなく、やはり会社側も20分程度の面接時間だと仮面をかぶっているかどうか判断できないため、インターンである程度、その学生の情報を収集しておいて、実際の採用面接の参考に使うという程度です。

どうしても面接は「LIAR GAME」になってしまうので、インターンは会社側の保険という側面もあります。基本的にはインターンで「よっぽど人間性に問題がある」と判断されない限りは悪材料にならないかと思います。同じ能力であれば、インターンで「問題なさそう」と判断されている分、企業側が安心できるので、採用されやすくなると思います。今風にいうと、”ネガティブスクリーニング”というやつですね。

ですので、インターンでは無茶をせず、自然体で取り組んでください。

みんなより目立ってやろう突拍子のない意見を言って驚かせよう

とすると逆に不利になる可能性が高いです。

アクチュアリー採用のインターンや面接を担当していた知り合いがいまして、彼に聞いた採用でのエピソードを紹介します。

今やアクチュアリーのインターンも応募が殺到し、「アクチュアリーのインターンに参加するための面接」を行っているところもあります。基本は上記の理由で学歴順で機械的に選んでいることが多く、東大・京大・旧帝大・早慶の学生が大半です。

加えて、言い方が悪いですが、やはりアクチュアリーのインターンになると数学・物理といった基礎学問の理系の学生・院生が多く、コミュニケーションが「理系のそれ」の学生が多いです。緊張しているのか、若手社員が下に見られているのか分かりませんが雑談が出来なかったり、「そこ突っ込む?」といった重箱の隅をつつくような質問をして、

おれ知ってるんだよアピール

をしてくる学生がいます。社員側も笑顔の裏で「こっちも入社3年目で細かいこと知らねーよ。」と心の中では思っています。

こんな中でもごくたまにサンプルとしてMARCHクラスの学生がいて、MARCH理系学部のとても理解が早くて、コミュニケーションもとても取りやすい(社員側に気を使ってくれることができる)学生(「A君」とします。)がいました。その時は5人一組になって、一日の終わりにチームで簡単なプレゼンをするというものでしたが、強くリーダーシップを取るわけでもなく、A君はいい感じにチームをまとめていました。

私の知り合いは採用活動で疲れたせいもあってか、その能力・人柄にかなり良い印象を受けて、上司に誰が良かったかと聞かれた際に「断然A君です。」と言いましたが、上司からは「MARCHだからなぁ。」(=試験耐えられるかなぁ)という言葉が返ってきました。

そこからさらに押すことはできたのですが、とある雑談で聞いた「正直、試験受かるか自信が持てない。」というA君の言葉(正直でいいんですが)で、それ以上はやめてしまったそうです。

一方で、いわゆるトップ水準の国立大の学生にもいろんな学生がいて、座学中やグループワーク中もずっと机の下で携帯をいじっているB君や、遅刻してきた理由が「道に迷わないと思ったのに道に迷いました!」と高々に言ったC君という独特のキャラクターの学生もいたそうです。

私の知り合いは、後ろからB君の携帯の画面を覗いたらずっとTwitter画面だったそうで、インターン終わり際の冗談言えるような雰囲気のときに、「インターン中にツイートするのはちょっとこっちとしても寂しいなぁ(笑)」と朗らかにB君に言ったら、「だってつまんないですもーん(笑)」と軽く返されたそうです。

C君に関しても、グループワーク中ひたすら他の学生に「君の意見は意味ないよ。」というような暴言に近い発言を繰り返したり、結局プレゼンも一人で全部やってしまうし(通常チーム全員で分担して説明)と、他の学生に申し訳なかったというエピソードを残していったそうです。

もちろんB君・C君に関しては、採用面接に来たとしても”丁重にお祈り申し上げるリスト”に名を連ねることになったそうです。試験第一ではありますが、受かった後も何十年とサラリーマンするので、協調性はもちろん重要ですからね。

学歴と合格率の相関

学歴(=大学受験頑張った)とアクチュアリー試験の実際の合格率について、私の感想を述べたいと思います。卒業大学ごとの合格率の統計はもちろん存在しないので、完全に個人的な主観です。

やはり合格率と学歴の相関は高いです。

しかし、東大・京大卒であっても受からない人は存在しますし、MARCH卒でも受かる人は受かります。個人的な感覚としては下記のようなイメージです。あくまで2次試験合格までの合格率(主観)です。MARCH卒の人のサンプルは少ないので、早慶以上としました。

  1. 東大・京大:80%
  2. 旧帝大クラス(※):70%
  3. 早慶:50%

※北大・東北・東京工業・阪大・九大等

東大・京大は1次試験まではあっという間に合格していきますね。このクラスのなると上位層に上限がないので、最短2年でという人もいます。一方で興味が薄れてしまうのか論文形式が入ってくるせいか、2次試験に躓く人は躓きます。旧帝大クラスとなると、コツコツ確実に受かっていくイメージです。1次試験はみんな須く合格しますし、通算5年~7年くらで大半は2次試験まで抜けていく印象です。

早慶ですが、玉石混合です。

受かる人は受かる、受からない人は1次試験1科目すら受からないと、本当にまちまちです。

会社側からしてみれば少しギャンブル要素は出てきますが、何せ学生の数は圧倒的に多いですので、採用の一番のボリュームゾーンです。

あくまで理系の学生の前提で話をしていますが、専攻(数学・物理・化学・建築等)の差はあまりないです。所詮微分・積分できるか程度の計算問題なので、上記の大学の理系ならば、大学入試でそれなりに数Ⅱ・数Ⅲは勉強していると思いますから、問題ありません。文系でも東大のように、入試科目に数学ががっつり入っているようならば、目劣りしません。早慶文系のように受験に数学がないと、かなり怪しくなる印象です。

余談ですが、文系なのに入試科目に数学のある(今は分かりませんが)慶応の経済学部は地雷扱いされてました。

学部卒か院卒かは前述しましたが、優越がない印象です。大学院まで出た知識が、アクチュアリー業務に役立つかというと、正直なにかの研究所に配属される等ごく一部の職種にならない限り、ほとんどのアクチュアリー業務では役に立たないので・・・。

一方で、大学院生は就活前にアクチュアリー試験を複数回受験できる機会があるので、就活前に科目を取っておきやすく、やはり面接で「数科目持っている」という実績は面接官に安心感を与えるので有利です。学部生の場合、最短でも学部3年生の冬からの受験となるので、就活前に1回しかチャレンジできません。その分、学部3年生で1科目とったという実績は、私の主観ですが大学院生の3科目に相当するくらい貴重な実績になります。

学歴ごとに採用面接までに何をすればいいのか

早慶以上(理系)であれば、大学入試で基礎的な勉強量をこなしている・耐えられると見られるので、あまり学歴は気にする必要はないかと思います。ただ油断してしまうせいか、内定を貰ってから遊び過ぎてしまって、勉強の仕方を忘れてしまっているような新入社員が散見されるそうです。笑

入社までに複数科目取っている必要はありませんが、会社に入ってからも継続的に勉強する気持ちは忘れないでください。

MARCH以下であれば、面接官は、正直「こいつ試験に受かるのかな?」と疑いの目を持っていると思ってください。もちろん早慶以上と同様に、個人に寄りますが。そのため、首席でしたとか、勉強は得意ですというアピールができるエピソードを持っているか、または面接までに1科目以上合格しておくことが理想です。とまぁ人生そんなにうまくいかないので、少なくとも受験してして、試験の雰囲気は掴んでおくことは最低限準備しておく必要があります。

そうすれば面接のときに「試験は今回落ちてしまいましたけど、これこれこういった努力・スケジュールで合格を目指していきます。」と言えますからね。

試験も受けたことにないのに「受かると思います。」

と言われても、どの口が言ってんだよ、としか面接官は思いません。

なお、落ちてもいいですが

決して「不合格Ⅲ」・「不合格Ⅳ」

は取らないように頑張ってください。不合格Ⅰ~Ⅱまでは、「また今度頑張ってね」と”ギリギリ”言えるラインですが、不合格Ⅲ以下はもう「勉強しなかった。記念受験だ。」というレベルなので言い訳できません。

アクチュアリー会ホームページより

以上、なんとなく聞いているアクチュアリー界隈の話をまとめてみました。アクチュアリーの業務は「その計算が妥当か」を保証するのが主な仕事です。そのため、将来的にAI等の開発が進めば、最終的な判断する人間は一人残る一方で、その他大勢の計算部隊は不要になることが容易に想像できます。

今後、アクチュアリーが生きる道は「高度な計算理論を開発する人々」と「人間側に立って説明・提案する人々」に二極化するのではないかと考えています。前者は修士レベルどころか博士レベルまで高度化していくでしょう。一方、後者は「基礎理論を知っていて、かつ説明力・提案力を備えた人材」が必要になりますので、優秀な人が学歴(≒大学入試の結果)で判断されてしまうのはもったいないなぁと思い、今回の記事を書きました。

大学によっては情報格差もあるかと思いますので、今回の内容がお役に立てれば幸いです。繰り返しになりますが、アクチュアリーは所詮試験ですので、諦めずかつ工夫して取り組めば、平均7~8年といわれていますが、比較的短期で取得可能な資格です。

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