3月15日、日曜日にも関わらず米連邦準備理事会(FRB)は、緊急の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いて1.0%の大幅利下げに踏み切りました。米国債などを買い入れて資金を大量供給する量的緩和政策も復活させ、今後数カ月で米国債を少なくとも5000億ドル買い入れ、住宅ローン担保証券(MBS)も同じく2000億ドル購入することも決定しました。
サプライズで行われた金融緩和
予定では17日~18日に定例開催される予定でしたが、欧州を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大し、これによる経済の混乱を抑える狙いだったのかと思います。 政策金利は0~0.25%となり、2008年の金融危機以来のゼロ金利政策となりました。合わせて米国債などを大量に購入する量的緩和政策も復活させ、金融政策を全面的に危機対応モードに切り替えました。
3月3日にも緊急的に0.5%の利下げを行っており、3月に入ってから1.5%の利下げを行った形になりました。
日銀も3月16日に金融政策決定会合を前倒しに実施し、追加の金融緩和策を全員一致で決めました。 追加の金融緩和は2016年9月以来3年半ぶりです。金融緩和の内容は、マイナス金利の深堀は回避したものの、ETFの買い入れ上限を6兆円から12兆円に増加しました。
その他、REIT(不動産投資信託)についても、当面の間、年間900億円から2倍の1800億円に買入額を増加する等、決定しました。
さらに、感染拡大の影響で売り上げが減少している企業を支えるため、民間金融機関が融資を増やすよう資金供給の枠組みを新たに設け、今年9月末まで0%の低い金利で貸し出すことにしています。
金融緩和に対するマーケットの反応
FRBも日銀もサプライズ的な金融緩和の発表だったと思います。
金融緩和により政策金利が引き下げられると、間接的に借入金利が引き下がるので、景気悪化による資金繰りをし易くする効果があります。それは企業の倒産危機を救うことと同義です。
しかし、緊急利下げに対するマーケットの反応はネガティブでした。
正午から開催された前倒しの金融政策決定会合の結果公表後は、それまで日経平均は横ばいに推移していたのにもかかわらず、引けにかけて下落。結果、前日比マイナス429円で引けました。
日本時間の夜から開始した16日の米国市場も、金融緩和とは裏腹に大幅下落。
米株の広範な指標であるS&P500も7%以上下落したため、取引を15分間全面的に停止する「サーキットブレーカー」が発動し、同日午後(米国時間)にはトランプ米大統領が新型コロナウイルスの感染拡大について、7月か8月まで続く可能性があるとの認識を表明したこともあり、取引時間の終わりまで売り注文が続きました。
終わってみれば、結果はNYダウベースで2997ドルの下落。S&P500の12%近い下落率は、1日の下落幅で比較すると、1987年10月1日の”ブラックマンデー“以来の下落率となりました。
16日の追加の金融緩和を発表した記者会見でも、日銀の黒田総裁が「これで株価下落は収まりますか?」という質問に対して
“相場のことは相場に聞いてみないと分からない”
と答えていたので、こうなることをある程度予想していたのかもしれません。
今回のマーケットの反応について
相次いで”サプライズ”の金融緩和を行うことによって、相場からは「手詰まり感」を演出し、逆にパニック状態になってしまったのかもしれません。米国が唯一利下げの余地があったのに、ここでカードを切ってしまうなんて意味がない、とコメントしている記事もありました。
通常、日米の金利差がなくなると、金利パリティの理論から円にお金が戻り(=円が買われ)円高になるはずです。しかし、円安になりました。
各通貨に対する総合的なドルの強さを示すドルインデックスを見ると、欧州でコロナウイルスの感染拡大が本格したあたりから上昇しています。これは市場がパニックになって、”強いドル”に資金が集まっていると言うことができます。
”ここで金融緩和をすべきだったか”という疑問がわきますが、個人的に”金融緩和は市場にお金が巡りやすくする潤滑油的な役割”であって、こういった非常事態では、この後に実施される財政出勤の効果を増幅するためにも良かったと思います。
トランプ大統領も11日の演説では、給与税の減税について議会に承認を求めましたが、米下院のコロナ対策法案には含まれていません。同様に演説でも言及していた個人・事業者に対しての納税延期を許容する条項も含まれていませんでした。
現在下院の過半数は民主党(野党)が握っていることから、今年は大統領選挙の年でもあるため承認したくない、という思いがあるのでしょうか。
日本の議会もそうですが、ここで迅速な対応に水を差すようであれば、リセッション入りは回避できず、大きな機会損失を被ってしまう懸念があるので、是非頑張ってほしいですね。
このまま経済活動が低迷することにより倒産企業が増加し、低金利で莫大に膨れ上がった企業債務が焦げ付きはじめ、リーマンショック時のような金融危機を引き起こす可能性は十分あると思います。