欧州中央銀行(ECB)が追加緩和を決定。

市場環境

欧州中央銀行(ECB)は12月10日開いた政策理事会で、半年ぶりとなる追加金融緩和を決めました。

ECBは6月に、新型コロナウイルス感染拡大への対応として、債券購入枠を6,000億ユーロ拡大し、合計1兆3,500億ユーロとして、ユーロ圏経済を下支えする姿勢を強めていました。10日の理事会では、追加対策として以下の3つを決定しました。

  1. PEPPの購入枠を5,000億ユーロ拡大し、1兆8,500億ユーロに
  2. PEPPの購入の期限を、「少なくとも2022年3月末まで」9カ月延長する
  3. 銀行に超低金利で資金を貸し出す制度(TLTRO)の期限を「2022年6月まで」1年延長する

※PEPP:pandemic emergency purchase programme(パンデミック緊急購入プログラム)

PEPPとは、従来の資産購入プログラム(APP)などで購入対象となった資産に加えて、新たに投資対象が拡大されています。APPは加盟国の経済規模や出資比率に応じた買い入れ割り当てにより、購入に事実上の制限がありましたが、例えばギリシャ国債が購入対象となりました。また、社債プログラム(CSPP)の購入対象に非金融企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)が含まれました。

さらに、購入額にも工夫が見られ、購入額を毎月一定にする必要は無く、ECBの判断で必要なときに購入額を増やす柔軟性も追加されました。

The PEPP is a temporary asset purchase programme of private and public sector securities.(略)

All asset categories eligible under the existing asset purchase programme (APP) are also eligible under the new programme. Under the PEPP, a waiver of the eligibility requirements will be granted for securities issued by the Greek Government. In addition, non-financial commercial paper is now eligible for purchases both under the PEPP and the corporate sector purchase programme (CSPP). The residual maturity of public sector securities eligible for purchase under the PEPP ranges from 70 days up to a maximum of 30 years and 364 days.

ECBホームページより

欧州では新型コロナ感染が再び拡大しており、外出制限に踏み切るなど景気2番底への懸念が高まっています。ECB総裁が10月の理事会後の会見で、「次回理事会で政策の調整が必要との見解で一致した」と表明していたこともあり、追加緩和の決定とその内容は概ね市場予想通りの結果でした。ECB理事会の結果は概ね想定通りだったことから、ユーロを買戻す動きが強まりました。対円は一時約1年8カ月ぶりの高値をつけました。一方、株式市場や債券市場の反応はそれほどありませんでした。

ECBが同日公表した新しい経済・物価見通しでは21年の実質成長率を9月時点の5.0%から3.9%に大きく下方修正しました。欧州各国は10月以降、新型コロナの第2波を封じ込めるため、外出制限などのロックダウン(都市封鎖)に相次いで踏み切きり、その代償として景気回復も減速する可能性が高まったためです。20年の見通しはいくぶん上方修正しましたが、足下の経済の回復力は弱まっています。

危機の長期化は、企業倒産や失業の増加につながります。銀行が不良債権の増加を恐れて貸し出しに慎重になるリスクも高まります。追加金融緩和には、金利を低く抑え込むことで需要を生み出す財政出動や危機後を見据えた民間投資を呼び込む狙いがあります。

さらに、今回の緩和の裏には、米国の金融緩和の長期化で進むドル安・ユーロ高があります。このままユーロ高が進めば、輸入物価の下落を通じて物価は上がりにくくなるため、ラガルド総裁は会見で「為替相場の動きを引き続き注意する」と述べた。

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