毎日トランプさんに振り回される相場です。
そのような中、ファンドストラットのトム・リー氏が興味深い予想を出していました。
イラン戦争勃発から約42営業日にわたって続いた下落相場が、11営業日で史上最高値(ATH)を更新するV字回復を果たしました。この展開を「底打ち」と早々に宣言し、見事に的中させたのがFundstratのトム・リー氏です。
回復劇のポイントは、「悪材料が続いていても株が下がらなかった」という事実にあります。リー氏はCNBCのClosing Bellに出演し、「戦争が悪化し、原油価格が上昇し続けていた局面でも、株式市場は下落しなかった。これは市場が底を打ったサインだ」と説明しました。

実際、イラン戦争の激化に伴い原油価格は1バレル87ドルから116ドルまで上昇しましたが、S&P 500は同時期に6,300から6,600へと逆に上昇していました。悪いニュースに反応しなくなった相場というのは、売り圧力がすでに出尽くしていることを示すサインです。リー氏はこの「悪材料無視」の動きをいち早く捉え、米・イラン停戦合意のタイミングで
「底は確定した」
と宣言していました。
この相場は続くのかが気になるところですが、底打ちを確認したリー氏が次に注目するのは、「誰がこのラリーを引っ張るか」という問いです。
まずヘッジファンドはすでに動いていると言います。「ヘッジファンドは先手を打ってリスクを積み増している。クライアントとの会話でも確認できる。」と語り、機関投資家がいち早く動き始めていることを指摘しました。
そして次の段階として注目しているのが、リテール(個人)投資家の参入です。リー氏によれば、今回の上昇局面を通じてリテール投資家はずっと弱気でした。戦争の激化を目の当たりにして多くの個人投資家がリスクを落とし、現金や債券にシフトしていたのです。しかし今、
その現金がいよいよ株式市場に戻り始める
それが次の上昇ステージを作るとリー氏は見ています。現時点でリー氏が掲げるS&P500の年末目標は7,300です。
リード役として期待するのは、やはりMagnificent Seven(Mag-7)とソフトウェアセクター。原油価格が落ち着き、金利曲線がフラット化していくにつれ、「これらの銘柄が強い買いを集める」とリー氏は断言します。イラン戦争の影響でMag-7と原油の逆相関が10年ぶりの高水準に達していただけに、地政学リスクの後退は直接これらの株のリバウンドに直結するという論理です。
また、エネルギーセクターと金融セクターも引き続き注目に値するとしています。戦争特需で恩恵を受けたエネルギー株は、和平進展と原油価格の落ち着きによって変動が大きくなる可能性がありますが、リー氏は中長期的な組み入れ対象として評価を維持しています。

7,300到達後に訪れる可能性のある下落についても、具体的なデータを示しながら警告しています。その根拠となるのが、過去13人のFRB議長が新たに就任したケースのうち、10人が就任1年目にS&P500で10%以上の下落を引き起こしているというものです。現在のFRB議長はケビン・ウォーシュ氏(2026年就任)であり、このデータがまさに今に当てはまる状況にあります。

加えてリー氏は「インフレショックはまだ来る」とも指摘しています。原油高の影響がじわじわと消費者物価に波及し、夏場以降に物価上振れサプライズが起きる可能性を排除していません。これがFRBの利下げ期待を後退させれば、株価の調整要因になりえます。
ただし、今回の調整は「それほど深くならない」とも述べています。その理由として、S&P500全体の約70%が既にローリング・ベア相場(エネルギー・金融が先に売られ、続いてMag-7やソフトウェアが売られた)を経験済みであることを挙げています。多くのセクターが先に十分調整されているため、仮に全体的な下落が来ても下値余地は限定的というわけです。
短期的な警戒感を示しながらも、リー氏は(今後18〜24ヶ月は)
“could be one of the best we’ve ever seen in our lifetimes.”
我々が生涯で見た中で最高の相場期間の一つになり得る
と強調しています。

その根拠について、まず米国株式市場が「世界中の投資家にとっての成長インデックス」としての地位を戦争を通じてむしろ強化したこと。イラン戦争が明らかにした供給チェーンの脆弱性は、米国の技術・ヘルスケア・フィンテックにおけるリーダーシップの価値をいっそう際立たせたと見ています。
さらにAI関連の大型IPO(OpenAI、SpaceX、Anthropicなど)が市場に「富の効果」をもたらすという期待も大きいです。これらの超大型案件が上場し、創業者・従業員・初期投資家が巨額の含み益を実現すれば、その資金が再び市場に還流してくる可能性があります。
加えて、7.8兆ドルのMMF待機資金の存在は依然として強力なバックストップです。「史上最高値で買えない」と感じているベンチマーク未達の機関投資家が遅れを取り戻すために参入してくる圧力は、上昇局面を思いのほか長引かせる可能性があります。

リー氏の現在のシナリオを整理すると、まず現水準からS&P 500は7,300を目指してさらに上昇する。その後、FRB新議長就任に伴う政策不透明感とインフレショックを受けて10%前後の調整が入る。そして10月ごろを底に年末7,700へ向けた反発、さらにその後18〜24ヶ月にわたる「生涯最高の相場」へ、というロードマップとのことです。

