21日のFOMCは市場の予想通り「政策金利据え置き」となりました。
四半期経済予測(いわゆる「ドット・チャート」)では、FOMC参加者19人のうち12人が年内あと1回の利上げを支持していることが示されました。
また、2024―25年の政策金利の想定が従来から引き上げられたことが
「一時停止でなくスキップ」
という”タカ派”のサプライズとなりました。
そのため、FOMC結果公表当日は、それまでは前日終値を上回って上昇していたものの、結果公表を機に株価は下落に転じました。
足元のインフレ率が落ち着いて来たことから、市場の注目点は2023年末の水準ではなく、”その先”に移っており、2024年・2025年の政策金利予想が両者ともに+0.5%となったことがサプライズでした。加えて、想定外に米景気は底堅く推移しており、いままでの中立金利(Longer Run=2.5%)の水準では低いのでは?と言われていましたが、今回も2.5%で据え置かれました。
もし、2.5%から引き上げられていたら、現在のインフレ率はもう中立金利を下回ることとなるので、ハト派の発表に転じる=金融引き締めを辞めるということが期待されていたのですが。
足元、特に4月頃からの10年金利の上昇が目まぐるしいです。このあたりで実質金利(名目金利-期待インフレ率)がプラスに転じました。
物価上昇が落ち着いてきて
次が最後の利上げかな
という雰囲気が出てきた頃です。一方で雇用は堅調、決算もまぁ大丈夫なんじゃないか(実際4-6月期は大丈夫でだった。)ということでソフトランディングの現実味が高まり、期待インフレ率は下落するのとは逆に、10年金利(名目)が上昇しました。
結果として実質金利が上昇し、足元は2%を超えました。この水準は振り返ってみると、リーマンショック前の2006年-2008年の水準に到達し、15年ぶりの金利環境にいつの間にか変化を遂げていました。
当時も「CPI総合(点線黄色)が低下→政策金利(グレー実線)の上昇停止→CPIコア(点線赤)が低下」という流れをなぞっています。
そして利下げの直前にかけて
実質金利が2.5%突破に向けて上昇
しています。そしてその半年後のリセッションです。実質金利のピークが2007年6月で、リセッション突入が2007年12月でした。
10年金利も、実質金利の上昇に比例して上昇し5%を突破。結果として政策金利と同水準まで上昇しました。
現在も当時と同水準の政策金利を維持しています。そして実質金利が2%まで上昇しました。
今回のFOMC予想で示唆していることは、「2024年のインフレ率(PCE)が2.5%のまま」で
実質金利の見通しを0.5%引き上げ
したということです。このまま15年前のように実質金利が2.5%~2.7%の世界が再来するとなると、そこに期待インフレ率(PCE)が土台となり、結果として2024年の長期金利が5%まで上昇することを正当化することになります。これを受けて、市場は長期利回り(10年債利回り)が少なくとも4.5%を超えるだろうということを織り込み、足元の長期金利上昇が生じているのかと思われます。
ちなみに15年前の雇用統計はどう変化したかを確認すると、当時は現在と同様月次で20万人増加を記録していたものが、政策金利上昇がストップしたのを境にマイナスに転じています。失業率に至っての変化は微々たるもので、リセッションに突入してから急激に悪化します。つまり、”政策金利引き上げ時”はもちろん、”政策金利高止まり期”であっても変化を読み取ることはできないということですね。
株価についても確認してみると、政策金利高止まり期の2006年7月~2007年8月(青枠)に加え、実質金利ピーク時からリセッション突入の2007年6月~2007年12月(赤枠)においても株価は堅調だったことが分かります。
リーマンショックに関しては、その後、2008年3月に大手投資銀行(当時アメリカ第5位)のベアー・スターンズの経営危機発覚や、2008年5月30日付のJPモルガンによる買収、そして2008年9月15日のリーマン・ブラザーズ経営破綻に繋がっていきます。