2023年も半分が終わりました。
日経平均株価は6月も7%上昇し、年間では30%の上昇を記録しました。5月も2000円以上上昇しており、2カ月連続の2000円台の上昇は日経平均の算出以来初めてだそうです。米国の債務上限問題や日米の金融政策イベントを通過し、投資家心理が断続的に改善したことが理由に挙げられます。
MANのレポートでは、日本株上昇の理由として3つ挙げています。
1つ目は、バリュエーションの影響です。TOPIX は株価純資産倍率 (P/B) の点で平均水準付近で取引されており、収益が急速に増加しているにもかかわらず、株価の上昇が伴っていませんでした。実際、日本市場で提供されている魅力的な評価水準に投資家の目を開かせたのは、ウォーレン・バフェット氏の日本への投資でした。
2つ目はコーポレートガバナンスの動きです。東京証券取引所は今年初め、P/Bが1倍以下の企業に対して資本効率の向上を目的とした改善命令を出しました。東京証券取引所のプライム指数の多くは1倍を下回って取引されており、これは市場の広範な部分に影響を与える広範な改善要求となりました。
日本の代表的な企業で構成される「東証株価指数(TOPIX)500」でPBR1倍割れしている企業は40%以上(2022年7月時点)に達しています。これに対してアメリカのS&P500種株価指数の採用銘柄では5%にすぎません。
2023年3月末時点でトヨタ自動車で0.92倍(1.28)、三菱UFJで0.61倍(0.73)、三菱商事で0.86(1.09)倍、ソフトバンクGで0.84倍(0.93)と日本の代表する企業でPBR1倍割れとなっていました。※カッコ内は2023年6月末のPBR
3点目は為替です。日本銀行の金融緩和政策の継続により、円は対米ドルで7カ月ぶりの安値まで下落しており、海外投資家にとって日本株が割安となっています。実際、日本株!日本株!と騒がれていますが、円ベースで見ると米国株も今年に入ってからは為替の影響で目劣りするパフォーマンスにはなっておらず、日経平均には負けますがTOPIXには買っている状況です。
念のため中長期(3年)のパフォーマンスを載せておきますが、米国株との差は歴然です。
また、注目されているのは海外投資家の日本株への資金流入量です。2015年度から2022年度の間は売り越しとなっていたので、このまま海外投資家の日本株買いが続いて2023年度全体でも買い越しになれば9年ぶりの記録となります。
前回の海外投資家の資金流入は、自民党総裁に安倍晋三氏が就任し「3 本の矢」からなるアベノミクス
を打ち出した 2012 年度から、黒田東彦日銀総裁による「異次元の金融緩和策」が実行された2014 年度にかけてでした。
その後、コーポレートガバナンス改革が進展し、スチュワードシップ・コード(2014 年)、コーポレートガバナンス・コード(2015 年)が制定され、企業収益力の向上のみならず、収益の株主還元強化が図られることになりますが、金融緩和策により円安・打ち出される数々の成長戦略により日本経済の生産性改善・企業の収益力向上という期待が強まったのは、この2013年-2014年でした。加えて、2014 年には GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)のポートフォリオが見直され、リスク資産のウェイトを引き上げる方向での改革が行われました。
ラリー・フィンクが言うように、中国経済への懸念に加え、日本のインバウンド需要の復活が相まって、お金が流れてきていることもあるようです。ただし、ブラックロックは会社として日本株の投資評価を「アンダーウエート(少なめの資金配分)」としており、慎重な見方を示しているとのこと。
世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、日本経済新聞の取材で「中国株から日本株に資金を移す動きがみられる」と述べた。背景には足元の景気減速にとどまらず、中国の中長期的な成長力鈍化への懸念がある。
日本経済新聞より
なお、足元は海外投資家の買いが一服しており、6月第3週(19〜23日)では海外勢は現物株を13週ぶりの売り越しとなりました。急速な株価上昇で利益確定目的の売りとも思われますし、一方で株価指数先物は買い越しており、先高観は崩れていないとの見方もあります。
次の日本株のイベントは7月27〜28日の日銀政策決定会合でしょうか。次回会合ではYCC修正に動く予想は少数派だそうですが、市場では万が一の円高に備えてヘッジ持ち高を築く動きも予想されます。日銀が不動を保てば、また日本株買いが始まるのでしょうか。