CIIAやCMA(証券アナリスト)試験にあまり出題されるイメージはないですが、最近の伝統資産(債券株式)が足元の市場環境でさえないなか、注目度が高まっているのがオルタナティブ投資です。
最近というか、海外は10年前くらいから、日本では数年前から投資比率が上がっているという感じです。オルタナティブ投資・・・・翻訳すれば
その他の投資
です。
オルタナティブなのは投資対象か投資手法か
オルタナティブ投資には、実はベクトルが二つあります。
・「投資対象」がオルタナティブ
・「投資手法」がオルタナティブ
投資対象としてのオルタナティブ
こちらはイメージが付きやすいかと思いますが、いわゆる金や銀などのコモディティに加え、この前の池上彰さんの番組でもバブルと言っていた不動産、あとはプライベート・エクイティ(PE)やインフラ、天然資源、保険といったところも、伝統資産(債券・株式)以外の投資対象です。
投資手法としてのオルタナティブ
ロングショート、マーケットニュートラル、グローバルマクロ、マネージドフューチャー、イベントドリブン、CBアービトラージといったところでしょうか。横文字ばっかりですね。伝統的な投資手法である「買い持ち」(ロングともいいます。)以外の投資手法のことを指します。
具体的には「売り持ち」(ショート)のポジションを持ち、下落時も稼ぐ方法や、合併や倒産時等のイベント時の大きな株価変動を狙う方法などです。
あとは 相場トレンドを狙って、1秒間に数万回取引するCTA(Commodity Trading Advisor) という言葉もあります。
なぜオルタナティブがなぜ注目されているのか?
オルタナティブと聞くと、たいてい「意味が分からないもの」「ハイリスク」のイメージが一般的かと思います。私も勉強を始めるまで、「手を付けないほうがいい」というイメージでした。
しかし、2008年の金融危機前くらいから、株式のボラティリティが高くなっています。
これは自動売買や、グローバルな情報の伝達量・速度が向上したため、ネガティブな情報は一瞬で世界に広がり、世界同時金融危機が起こりやすくなったことが要因かと思います。
ポートフォリオ分析では、株式のリスクが高くなるとリスクが低い債券に資金が流れるということがセオリーであり、結果的に債券と株式の逆相関が生まれ、分散投資になる、と試験勉強で学びました。リスクリターンの計算で、面倒くさい標準偏差や有効フロンティアを計算させられました。
しかし、現実の市場環境は変わりました。
主要国の金利が低下し、債券ではリターンが出なくなってしまいました。加えて、金利上昇の可能性ほうが高くなってしまったので(金利があがると債券価格は下がる)、今債券に資金を動かすことがあまり有効でなくなってしまったわけです。
あのGPIFも、国内債券にはついては割り切って、国内債券枠の中に現金枠を作り、最悪そこに資産を非難することを想定しているくらいです。
※GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人):日本の年金資産140兆円を運用する世界最大の機関投資家
一般的には債券ではリターンが取れないし、株式のまま置いておくのはリスクがあるし・・・となって、逃げ場となっているのがオルタナティブなわけです。
例えば投資対象でいうと、金や不動産は、株式と逆相関を持つことで知られています。投資手法でも、ロングショートは下落局面でリターンを狙えますし、マーケットニュートラルは相場が大きく変動したほうがリターンを狙えるポジションをとる手法です。
実際、2018年度は債券・株式は冴えませんでしたが、金や不動産のパフォーマンスは良好でした。
オルタナティブ投資のリスク
オルタナティブ投資で難しいのがリスクの把握・計量です。運用市場では長らく債券・株式が投資手段として使われ、リスクの所在・リスクの特性が半世紀近く議論されてきました。
一方でオルタナティブは為替はもちろん、投資対象も様々なので、それぞれ固有のリスク特性を持ちます。だからと言ってハイリスクというわけではなく、インフラ投資なんかは安定してこつこつとリターンを稼いでました。
オルタナティブ投資のリスクの一つとして、運用者の能力(マネージャースキル)があります。似たようなものにアクティブファンドがありますが、あくまでベンチマーク+α程度ですが、ヘッジファンドは完全にベンチマーク無視です。TOPIXが1年間で10%上昇したとしても、下手をするとヘッジファンドはマイナスってことは当たり前にあります。どこに任せるかの評価が難しいことに加え、手数料も高いといった課題もあります。
また、インフラやプライベートイクイティ、不動産もそうかもしれないんですが、債券や株式と異なり、流動性リスクが存在します。何年か解約できないですよ、という感じです。まぁ当分使う予定のないお金ならいいんですがね。
不動産は、人気がありすぎて、そもそも募集にエントリーするのが難しい、といったリスク?も存在します。今回はオルタナティブ投資のさわりでしたが、ゆくゆくは当たり前の世界になっていきそうなんで、個人的に深掘りしていきたいです。
ちなみに、CFA(米国証券アナリスト)のオルタナティブバージョンと言われる、CAIA(Chartered Alternative Investment Analyst)という試験があるそうです。