AAA格でもデフォルトするんだな。

金融知識

AAAの格付けが付けられていた商業用不動産がデフォルトしたそうです。

「AAA」債がデフォルト、米オフィス市場の底知れぬ落とし穴
ウォール街の金融関係者にとって、ブロードウェイ1407番地のビルは、考え得る限り最も盤石な資産だった。ニューヨーク市マンハッタンの歴史あるガーメントディストリクトの中心に位置する43階建てのビルは、リッチな企業テナントが尽きることのない収益...

ブロードウェイ1407番地にある43階建てのビルだそうで、債券発行から4年と212日後のデフォルト(債務不履行)したとのこと。なお、AAA格がデフォルトする確率は5000年に一度の確率だそうです。

米国債券ですらAAAの座から引きずり降ろされたので、米国以上の信用がある発行体がデフォルトするなんて、予想外の事態です。正確には「ブロードウェイ1407」の格付けは2019年の発行時にAAAだったということで、徐々に格付けは引き下げられていました。(そういう意味では米国債は現在でもAA。)

念のために補足しておくと、この不動産からの賃貸収入を担保に発行した債券がデフォルトしたということで、この債券もSASB(Single Asset Single Borrower(単一資産、単一借り手))と呼ばれる債券で、何百もの不動産ローンを束ねる従来のCMBS(商業用不動産担保証券)とは異なり、一つの建物に設定された抵当権一つを裏付けとしています。

商業用不動産の価値40兆円が消失も-在宅勤務で空きオフィス高水準
在宅勤務の定着に伴い、2026年までに米国の全オフィススペースの4分の1近くが空室になり、商業用不動産の価値が2500億ドル(約40兆円)減少すると、ムーディーズが試算した。

オフィス回帰の日本とは対照的に、コロナ禍で米国では在宅勤務が定着しつつあり、オフィス空室率は22024年第1四半期で19.8%に上るとのことです。

今回は不動産の話でしたが、自分も相応のポジションの債券を保有しているので、デフォルトの話題には敏感です。今回、格付け会社であるS&Pから2023年のサマリー(2024年3月28日)が出ていましたので紹介したいと思います。

Default, Transition, and Recovery: 2023 Annual Global Corporate Default And Rating Transition Study
The number of defaults nearly doubled in 2023, rising to 153 (from 85) as inflation and higher interest rates squeezed s...

まずは投資適格(Investment grade)とハイイールド債(Speculative grade)のデフォルト率の推移です。2021年以降徐々に上昇していることがわかります。

格付け毎の累積デフォルト率は以下の通りです。log目盛りになっていますが、20年程度経過するとBBB格でデフォルト率が5%、米国債と同じ格付けのAAの場合約2%とのことです。

ちなみにあまりにも短期目線な気がしますが、各々の格付けが1年後にデフォルトする確率はBBB格まででほぼ0%(0.1%以下)という結果になっています。

デフォルトした債券の中身を確認すると、大半がCCC以下となっている一方で、2023年ではBBB格が、過去の歴史ではA格もデフォルトしています。これは冒頭の不動産のように、発行時(オリジナル)にAAA格で徐々に下がっていたわけではなく、直近の格付け(prior to “D”)がAA格であったということに留意が必要です。なお、2023年のデフォルトしたBBB格はあのシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)です。2003年の発行時からBBBを維持していました。

その他、発行時(オリジナル)の格付けがBBB以上で2023年にデフォルトしたものとしては、カナダのTelesat Canada(1998年発行、1年前はB)、ルクセンブルクのAdler Group S.A.(2018年発行、1年前はB-)、フランスのCasino Guichard – Perrachon S.A.(1999年発行、1年前はB)といったものがありました。

やはり格付けが下がると心配になりますね。

概ね格付けの変更は全体で25%(4分の1)行われるそうで、そのうちダウングレード(格下げ)の割合は10%程度のようです。近年では格下げ/格上げ比率が1を下回っているとのことで、各上げの数が多いようです。ただし、2020年の格下げ/格上げ比率が「6」となっていることから、コロナ禍に一気に引き下げられ、そこから這い上がっているということでしょうか。

格付けの1年後の変動を見てみると、AAA~BBBまでは90%以上ほぼ現状格付け維持のようです。CCC格については、1年後に半分が現状維持の一方で、半分がデフォルトしていますね。怖い。

最近は超長期債(20年以上)にも手を出しているので、格付け毎の先15年間のデフォルト実績を見ていきましょう。

シングルAまでで見ると、中期(5年~8年)でのデフォルト率は1%を切りますが、15年まで見るとシングルAでも2%を超えてきています。BBB格については15年後で5%程度のデフォルト率になっているようです。

このような数字を見ると、いくらデフォルトする確率が数%だからって、損失も数%に限られるというわけではなく、持っている銘柄が運悪くそのデフォルトに遭遇してしまうと一気にお金を失ってしまうわけです。(どれくらいの担保率かは分かりませんが。)

そういう意味ではインデックス投資で数多くの銘柄に分散投資することで、デフォルト割合≒損失割合とすることが出来きます。格付けが低い銘柄に対してはこのようにして

1発食らったらヤバイ

リスクをあまり取らないようにしたいと思います。

現在、信用リスクとして乗ってくる利回り(スプレッド)はシングルAで0.7%、BBBで1.0%、CCCで7.5%となっており、過去30年間と比較して低い水準(割高)となっています。

一方で金利は短期で3~5%付きますので

CCC格買って3年耐えれば10%じゃん!

と思っていたのですが、1年耐えるだけでも半分がデフォルトしてしまうということで、やっぱり世の中簡単にはいかないな、と良い勉強になりました。

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