ここまで金融政策についてまとめてきました。
実は、金融政策と重要な関係を持つ「経済指標」。
世界的に金融政策の出口が課題になっている中で、もしかすると経済指標に触れた問題がでるかも?と思い、まとめてみました。
経済指標といえばGDP成長率や失業率、新築住宅販売件数等、様々な指標があり、どれをどう見るかわからないくらいいろいろあります。
私が証券アナリストの2次試験を受験していた当時では、参考書(TACの経済の参考書だったかと思います)の最初のページが経済指標について記載されており、暗記するのもつらくて、それから苦手意識満載でした。
それからCIIA(国際認定投資アナリスト)受験を経て、このブログも含め、経済についてちゃんと(独学ですが・・・)勉強するようになって、必要性・見方が分かるようになってきました。
経済指標とは
もちろん株価の予想とか、メーカーさんの製造計画の基本となったりもするのですが、そもそもの目的は政府・中央銀行による政策の企画や効果のモニタリングのためだそうです。日銀も明確に、経済指標・統計は使っていると言っています。
日本銀行では、マネーストックや資金循環といった金融に関する統計、企業マインドを示す短観、物価の動向を掴む上で注目される企業物価指数、わが国のあらゆる対外経済取引を取りまとめた国際収支統計(政府の委任により日本銀行が作成)など、数多くの統計を作成しています。
日本銀行ホームページより
これらの統計は、日本銀行の政策や業務の企画・運営に活用されるとともに、ホームページや刊行物を通して公表しており、経済動向を分析する研究者や企業に幅広く活用されています。
最近の動向でいうと、具体的には
- 日銀は「消費者物価指数」等をもとに、金融政策の目標である「2%の物価上昇」を確認
- FRB(米国中央銀行)は「実質GDP」等をもとに、政策金利の引き上げの必要性を確認
といったところでしょうか。
かなり個人的な意見ですが、経済指標の必要性の片鱗でも伝われば幸いです。
また、 景気指標は、先行指数、一致指数、遅行指数の3種類に区別されます。
この区別で、2次試験受験当時、私の記憶の容量をオーバーしたので、今回はメジャーな(個人的にニュースになりやすいと思う)指標のみご紹介して、苦手な方でも「こんな感じか」と感じてもらえる程度にまとめたいと思います。
代表的な経済指標
今日ご紹介する経済指標は以下の通り。
<日本>
・実質国内総生産(GDP)
・日銀短観(大企業製造業業況判断)
・全国消費物価指数(CPI)
<米国>
・実質国内総生産(GDP)
・消費者物価指数(CPI)
・ISM製造業景気指数
・ミシガン大学消費者信頼感指数
・新規住宅販売件数
GDP(経済成長率)
経済指標のうち、最重要であるGDP(実質)です。
その国の経済成長率そのものです。四半期ごとに発表され、四半期末の翌月末に速報値が発表されます。
最近景気減速の懸念がある米国では、GDPの伸び(経済成長率)に注目が集まっており、数字がいいと「ちゃんと成長率しているな」ということで株が買われ、とはいえ数字が良すぎると「FRBが利上げするんじゃないか」という不安で株が売られ、という現象が起きています。まさに市場心理です。
前回(2019年1月-3月速報)は、日本は0.0%、米国は3.2%という数値でした。
日銀短観(大企業製造業業況判断)
正式名称を「全国企業短期経済観測調査」という。全国の約1万社の企業を対象に、四半期ごとに実施。 短観では、企業が自社の業況や経済環境の現状・先行きについてどうみているか、といった項目に加え、売上高や収益、設備投資額といった事業計画の実績・予測値など、企業活動全般にわたる項目について調査している。
日本銀行ホームページより(一部加工)
説明の通り、企業(特に大企業)の今後の先行き等をヒアリングし、日本経済の今後の動向・見込みについての情報をまとめています。
世界経済減速懸念や米中貿易摩擦もあって、あくまで「予測」ですが、ここ1年ほどは右肩下がりになっています。
全国消費物価指数(CPI)
総務省が毎月発表している指標で、総務省によると「全国の世帯が購入する財及びサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものである。すなわち、消費者物価指数は、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示したもの」とのこと。
算式をみると「2015年の1年間を100として、物の価格と購入数量がどう変化したか」を示しています。つまり、価格が上がっても購入数量が変わらなかったり(物価上昇)、価格は変わらなくても購入数量が増えたり(好景気)すると、数値が上昇すると考えてください。
CPI(Consumer Price Index)は、国民の生活水準を示す指数のひとつとして、「経済の体温計」とも呼ばれており、経済政策を的確に推進する上で重要な指標となっています。
緩やかに上昇しており、統計上、国民の懐事情は少しずつ温まってきているんじゃないかと思いますが、みなさんいかがでしょうか。
米国でもCPIは米労働省が毎月発表しており、日本と詳細な算出方法は異なりますが、消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための指標という点では大きく変わらず、米国のインフレ率を分析するための最重要指標にもなっています。
ISM製造業景気指数
全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が算出する製造業の景況感を示す指標のひとつです。毎月発表される米国の主要指標の中で最も早い毎月第1営業日に発表され、「ISM非製造業景況感指数(毎月第3営業日発表)」とともに、米国の景気先行指数です 。
製造業(300社以上)の購買・供給管理責任者を対象に、各企業の受注や生産、価格などの項目についてアンケート調査を行い、結果を0~100%で表します。50%を上回ると景気拡大を示します。
Yahooファイナンスより
最近は50%を割り込まないまでも、少し冷え込んできているようです。
ミシガン大学消費者信頼感指数
2019年5月17日にトランプ大統領も呟いていたので取り上げました。ミシガン大学が実施する消費者のマインドを指数化したもので、毎月10日前後の金曜日に発表されます。
速報は300人、確報は500人を対象に調査を行っており、数値の上昇=消費者の購買意欲の高まりを示し、景気向上が見込まれます。ただ、調査対象の人数が少ないので、ブレも大きいと言われているそうです。
2019年5月17日に発表された数値では、15年ぶりの高水準(102.4)となり、トランプ大統領も「偉大な成果だ」と呟いていました。
新規住宅販売件数
最後に新規住宅販売件数です。この指標の説明はそのままですね。米国商務省が毎月発表しています。 一戸建・コンドミニアム・共同住宅を含む新築住宅販売件数で、先行性の高い景気指数と言われています。
小売や自動車販売数に比べて、長期的な目線での景気先行指数となるので、この指数の上昇・下落で株価が動くこともある印象です。ここ最近は全月対比で0%前後を行ったり来たりしている状況です。
指標の紹介は以上です。
先行指数も一致指数もごちゃまぜで紹介してしまいましたが、なんとなくこんなものがあるという感じは分かっていただけたでしょうか。