米国株式が調整相場入り。

市場環境

3月13日、S&P指数が直近高値であった2月19日終値から10%以上下落し、「調整局面」入りしました。

調整相場とは、市場が短期間で10%以上下落する状態を指します。これは市場の過熱感を冷ます自然な動きとされ、長期的な上昇トレンドの中でも発生することがあります。一方で、調整相場を超えて20%以上の下落が起きたときを「弱気相場」と呼びます。これは単なる一時的な調整ではなく、より深刻な市場の下落局面を意味します。

トランプ政権がカナダやメキシコ、中国などの主要貿易相手国に相次いで高関税措置を発動しており、投資家のリスク資産への投資意欲を削いでいるのが調整している要因です。通商摩擦の激化により、インフレ圧力が高まって経済成長の足かせとなり、景気後退(リセッション)に陥る懸念も騒がれています。

安全資産の代表である、金価格が14日の取引で、史上初めて1オンス=3000ドルを突破しました。

為替も円高傾向にあり、円ベースでも米国株(S&P500)は10%以上下落し、意外と日本株(TOPIX)が半分程度の下落で済んでいました。

さて、1年数か月ぶりの調整相場とのことですが、これからどう振舞っていけばいいのでしょうか。

第2次世界大戦以降で生じた調整相場は48回生じていますが、その20%以上の下落相場となった弱気相場に突入したケースは12回とのことで、その確率は25%です。逆に言えば75%の確率で単なる調整を終え、上昇に転じるということです。

なお、調整相場で終えた場合、経験則であれば100%の確率で1年後には上昇し、その上げ幅は15%に達するそうです。(1950年以降の場合)

また、3月は時期的にも調整局面になりやすいとのことで、過去20年間の平均を取ると底になる傾向があり、平均的には年末にかけて10%近く上昇しているとのことです。

とはいえ、引き続きトランプ政権の動向が気になります。

ゴールドマン・サックス・リサーチは、2025年第4四半期の米国GDP成長率(前年同期比)の予測を、以前の2.2%から1.7%に引き下げました。新たな基本シナリオでは、関税が今後1年間のGDP成長率を約0.8ポイント押し下げると見込まれています。一方で、税制優遇措置や規制緩和による(比較的緩やかな)景気刺激効果は、0.1~0.2ポイント程度にとどまると予測されています。

Why the US economy may grow more slowly than expected
Our economists reduced their prediction for US GDP expansion for 2025 to 1.7% from their earlier forecast of 2.2%.

・消費者物価の上昇と実質所得の減少
平均的な米国の関税率が1ポイント上昇すると、実質所得が推定0.1%減少します。(理論的には、関税収入が追加の減税に回されれば影響は軽減される可能性がありますが、これが大統領令によるもので議会承認を経ていない場合、進行中の予算交渉ではこの収入は考慮されません。)

・金融環境の引き締め
関税は金融環境を引き締める傾向があります。ただし、今回の影響は、2018~2019年の貿易戦争時と比較すると、関税引き上げの規模を考慮した場合、小さくなると見られます。

・貿易政策の不確実性による企業投資の遅れ
関税の影響により、企業が投資を先延ばしする傾向があります。

気になる米国のインフレ率についても同社のエコノミストは、平均的な米国の関税率が10ポイント以上引き上げられると予測しており、これにより消費者物価の上昇が見込まれるとしています。

関税の引き上げを考慮すると、FRBが重視するインフレ指標であるコアPCEが約3%に上昇すると予想されます。関税そのものは一時的な物価水準の変化にとどまり、インフレの進行ペースを大きく変えるものではありません。しかし、貿易政策への懸念が、より広範なインフレ期待の変化を引き起こすリスクがある点には注意が必要だとしています。

「数か月前に予想していたよりも、企業や消費者が関税に対して非常に注目していることには、やや驚いています」と同社エコノミストのメリクル氏は述べ、「少なくとも、関税がより広範な価格上昇を引き起こすリスクについては、注視すべきだと思います」と語りました。

インフレ上昇と景気悪化が両立するスタグフレーションの懸念も話題に上がるようになってきました。年末にはここまで不透明感が高まるとは想像していませんでしたが、2025年の年末にはどんな風景が待っているのでしょうか。泣

「スタグフレーション」トレード浮上-米株急落乗り切る勝利の戦略
トランプ米大統領の行きつ戻りつする関税戦争に端を発した米国株急落が3週目に入り、避難先となるような勝利戦略はほとんど見当たらない。しかし、今まさに成功している戦略がある。スタグフレーションに陥る経済の中で成長する銘柄に賭ける取引だ。
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