アクチュアリーの就活事情。

アクチュアリー

以前、アクチュアリーという職業について紹介しました。

アクチュアリーはかなり専門的な資格で、生命保険会社では生命保険の設計、信託銀行では企業年金の設計、監査法人では会計コンサルティングと、なかなか一般の生活の中では接することがなく、業務イメージが湧きにくい分野で活躍しています。

びっくりするのが平均年収。基本的には1000万を超えるとのこと。その分難しい資格なんですけど。

基本的に試験の内容は数学がメインなので、理系出身の人が受験するイメージがあります。私も昔受けたことがありまして、出身大学や身の回りにも何人かアクチュアリーがいます。

実は以前記事にしたときに、「就活はどんな感じか」「転勤等はどうなのか」という質問があり、前出のアクチュアリーたちに最近の就活事情等を聞きましたので紹介したいと思います。

アクチュアリーの業務

その前にアクチュアリーの具体的な業務を説明します。

アクチュアリーは

生命保険や企業年金の掛金や運営状態の妥当性を検査すること

が、日本においての主な業務です。

アクチュアリーは、それ単体では民間資格ですが、実務経験を積むと

保険計理人や年金数理人

として登録することができます。保険計理人や年金数理人は後述の法律に規定さている資格になるので、一応国家資格です。

具体的には、生命保険会社の決算の妥当性を保険計理人が、企業年金の決算の妥当性を年金数理人が確認し、”押印・署名”することが必要です。

保険業法 第121条
保険計理人は、毎決算期において、次に掲げる事項について、内閣府令で定めるところにより確認し、その結果を記載した意見書を取締役会に提出しなければならない。
一 内閣府令で定める保険契約に係る責任準備金が健全な保険数理に基づいて積み立てられているかどうか。
二 契約者配当又は社員に対する剰余金の分配が公正かつ衡平に行われているかどうか。
三 その他内閣府令で定める事項
2 保険計理人は、前項の意見書を取締役会に提出した後、遅滞なく、その写しを内閣総理大臣に提出しなければならない。

確定給付企業年金法 第97条
この法律に基づき事業主等(略)が厚生労働大臣に提出する年金数理に関する業務に係る書類であって厚生労働省令で定めるものについては、当該書類が適正な年金数理に基づいて作成されていることを次項に規定する年金数理人が確認し、署名押印したものでなければならない。
2 年金数理人は、前項に規定する確認を適確に行うために必要な知識経験を有することその他の厚生労働省令で定める要件に適合する者とする。

保険計理人および年金数理人の要件についても、法律(正確には政令等)に明記されています。

保険業法施行規則 第78条
法第120条第2項に規定する内閣府令で定める要件に該当する者は、生命保険会社にあっては、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当する者とする。
一 公益社団法人日本アクチュアリー会の正会員であり、かつ、生命保険会社及び外国生命保険会社等の保険数理に関する業務に五年以上従事した者
(略)

確定給付企業年金法施行規則 第116条の2
法第97条第2項に規定する厚生労働省令で定める要件は、次の各号のいずれかに該当する者であり、かつ、十分な社会的信用を有するものであることとする。
一 確定給付企業年金の年金給付の設計、掛金の額の算定等を行うために必要な知識及び経験を有する者として、公益社団法人日本アクチュアリー会が実施する試験の全科目に合格した者又は公益社団法人日本年金数理人会が実施する試験の全科目に合格した者であり、かつ、確定給付企業年金等の年金数理に関する業務に五年以上従事した者(当該業務の責任者として当該業務に二年以上従事したものに限る。)

アクチュアリーの就活

実はアクチュアリーになるための第一関門は試験に受かることではなく

アクチュアリー候補生として採用される(内定をもらう)こと

だと言われています。

基本的には損害・生命保険会社や企業年金業務を受けている信託銀行に入社する必要があります。保険会社でいうと東京海上日動や日本生命、明治安田生命、住友生命、信託銀行で言うと三菱UFJ信託銀行やみずほ信託銀行等、何十社とあるような業界ではありません。

アクチュアリーは弁護士や公認会計士と違い、独立できるような資格ではなく、基本的にはどこかの会社に所属する必要があります。

検査するだけだから会計士と同じと思うかもしれませんが、基本的には決算の数字や掛金算出といった業務とセット販売になっており、この決算の数字や掛金の計算というのがめちゃくちゃ大変・・・

生命保険会社や信託銀行では被保険者の膨大な個人データに対して、死亡や退職等の統計データ、金利変動等を織り込むために基本的には専用の計算システムを開発しています。

今や個人データの流出は当たり前のようにニュースになってしまう時代ですので、なかなかデータ管理から計算システムの開発というのは個人では困難です。

ですので、まずはどこかの会社に入社して、そこからアクチュアリーになる道を選びます。

しかし、生命保険会社や信託銀行に普通の採用枠で入社してしまうと、窓口業務や個人・法人営業に配属されてしまい、勉強する時間が確保できません。

アクチュアリー専用の採用枠を探そう

そのため、一般的には「アクチュアリーコース」というものが用意されており、普通の人たちと採用が別になっていることが多いです。

何人くらいの採用枠かというと、会社の規模にもよりますが、各社多くても10人くらいです。最近は手に職をと考える学生も多いので、人気は高まっています。

会社側も有象無象が集まってくることは懸念していて、インターンを行う会社が多いようです。難関資格ということに憧れて門を叩く人が多い反面、具体的な業務を知らずに入社してしまっては困るので、”こんな業務をしてるよ”という紹介と簡単なグループワークをさせるところが一般的みたいですね。

ちなみに10年くらい前は知名度もなかったですし、2009年のリーマンショック前は投資顧問会社全盛期ですから、理系の優秀な人たちはそっちに流れていました。当時はインターンをやっても全然人が集まらなかったらしいです。

20人募集しても人が集まらず、バイト先の理系とか、その友達とか・・・と、手当たり次第に声をかけるサークルの勧誘のような時期もあったそうです。

しかし、リーマンショックにより投資顧問会社の採用が減少、さらに就職氷河期となり、手に職をといった意識の高まりから、今や20人募集すると応募が200人!と、今は人気とのこと。

念のために言っておくと、インターンに出ないとそもそも採用されない、というわけではないようです。

また、

就活前にアクチュアリー試験の何科目かは受かってないといけないんですか?

と聞かれますが、そんなに関係ないそうです。

今は10年くらい前と違って情報も集め易いですし、人気が出てから有志の勉強会のようなものも立ち上がって、比較的一次試験は受かりやすくなりました。なので、入社時に準会員もいるようですが、昔ほど受かった科目数は気にしないとのこと。

それよりもちゃんと社会人として働いてくれるかのほうが重要ですからね。昔は数学科がメインでしたが、私の周りも、その人たちが働いている周りも学部は関係ないですね。

物理や化学、建築や土木と理系ではありますが、数学の素養があればなんでもという感じです。

入社後の待遇

入社後は会社によって保険を売ったり、営業したりと様々なので、「こうだ」とは言い切れませんが、比較的勉強の時間をとってくれる会社が多いようです。

アクチュアリー会には、予備校(アクチュアリー講座)のようなものがあって、そこに半年ほど通わせてくれる会社も中にはあるそうです。

最短で2年で取得はできますが、早いところで5年、長いところで10年程度様子を見てくれるイメージです。

様子を見てくれる”とは、地方勤務や営業関係の異動はなく、試験に専念しやすい環境の部署に居させてくれるという意味です。

受かってしまうと基本的には東京勤務になります。一部、大阪がメインの会社は大阪に異動する可能性があります。私の知り合い、またその知り合いあたりでも東京・大阪以外の勤務をほとんど聞きませんね。稀に海外とかです。

アクチュアリーの転職事情

転職事情については、それなりに派手な話は聞きます。

よくあるのは日本の金融機関(生命保険会社・信託銀行)から、監査法人や外資の生命保険会社に転職するパターンです。

日本の金融機関は、新卒から横並びの給料で、比較的一般の企業より給料が少ないです。やはり退職率が高いからでしょうか。その分伸び率は高いですが。

日本の会社ではアクチュアリーに合格すると、多少のお小遣いはでます。しかし、給料ががっつり上がったという話は聞きません。やはり横並び主義ですからね。試験に受かったくらいでは、営業職等の通常採用の人とは区別できないようです。

一方で、新卒でアクチュアリー候補生を採用しない監査法人や外資の生命保険会社は割り切っています。

入社5年目くらいの若い子がアクチュアリーに受かったら、すぐに監査法人や外資の生命保険会社に転職するという話を聞きます。単純に給料が3倍になったという話も聞きます。2倍じゃないですよ。3倍です。一方で、金融機関の若手の給料は世の中平均より少ない(初任給20万円くらい)ので、そこからのレバレッジなので注意です。

外資の場合ですと、準会員(一次試験合格者)で給料いくら、正会員で給料いくらと、気持ちいいぐらい割り切っている場合が多いです。

さて、いろいろ他人事だと思ってぶっちゃけてしまいましたが、役に立ったでしょうか。引き続き、アクチュアリーについては情報が入り次第、ご紹介していきたいと思います。

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