新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で株価が大幅下落。2020年3月前半を振り返る。

市場環境

3月に入ってからも新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は収まらず、とうとう3月12日に、1987年のブラックマンデー以来の株価下落が生じました。

3月13日現在、日経平均株価は17,431円、NYダウは23,185ドルという水準となり、直近最高値(日経平均24,083円、NYダウ29,551ドル)から20%以上下落しました。

正直2月末の段階では、10%程度の下落で落ち着くのではと思っていたのですが、3月に入って欧州・米国にも感染拡大したあたりから、深刻化してきたように思えます。

新型コロナウイルスの感染状況

3月に入り中国の感染者数の増加ペースが鈍化した一方で、韓国・イタリア・イランの感染者数が増加しました。米国も3月12日に感染者数が1000人を超えました。

株価・為替の動き

NYダウは2月12日に最高値の29,551ドルを記録してから右肩下がりの相場になりました。

FRBの緊急利下げ、スーパーチューズデー、WHOのパンデミック宣言と株価の浮き沈みが激しい2週間となりましたが、3月12日には2,352ドル(終値ベース)下落し、1日の下落率が1987年10月1日の”ブラックマンデー“以来の下落を記録しました。

為替もあれよあれよと円が買われ、現在104円~105円を推移しています。

一時、サウジアラビアとロシアの原油減算交渉の決裂により、一時101円台まで円高になった局面もありました。

2020年3月前半の出来事を振り返る

FRBの0.5%の緊急利下げ

2020年3月はFRBの緊急利下げ(△0.5%)から始まりました。緊急利下げは2008年11月のリーマンショック以来です。ただし、”利下げがウイルスに効くのか?”ということで、株価の上昇は限定的でした。一時プラス300ドルまで上昇しましたが、結局終値では前日比マイナス785ドルでした。

3月17日のFOMCではどこまで利下げをするのか注目です。今のところ(3月14日現在)0.5%~0.75%の利下げを織り込んでいます。

スパーチューズデー(SuperThuseday)

「スーパーチューズデー」とは、アメリカ大統領選挙に向けた候補者選びの大きなヤマ場と言われる時期のことです。毎回(4年に1回)、2月から3月上旬の火曜日に予備選挙や党員集会が多くの州で一斉に開催される日があり、これを「スーパーチューズデー」と呼んでいます。

今年は3月3日で、政権奪還を目指す野党・民主党は、14の州とアメリカ領サモア、それに海外の民主党員による予備選挙や党員集会が行われました。全米で最も人口の多い西部カリフォルニア州の予備選挙も行われ、この日1日で大統領候補を選ぶ代議員のうち、およそ3分の1が決まります。

スーパーチューズデー前にブディジェッジ候補とクロブジャー候補が、後にブルームバーグ候補とウォーレン候補が辞退し、 民主党候補は現在サンダース上院議員バイデン前副大統領の一騎打ちになっています。

当初は若者向けの学生ローンの免除や富裕税導入等を掲げている革新派のサンダース候補が有利とみられていましたが、14州のうち10の州でバイデン候補が勝利し、一気に形成が逆転しました。

サンダース氏は「メディケア・フォー・オール(国民皆保険)」を提唱しており、銀行や保険会社の収益を悪化されることが予想され、経済面に悪影響を与える可能性がありました。

そのため、コロナウイルス感染拡大の中、バイデン氏が勝利したことは、株価にとって好材料とされ、この日NYダウは1,700ドル上昇します。

雇用統計等発表

激しい株価の動きの中で雇用統計と非製造業景況指数が発表されました。どちらも通常ならばNYダウで言うと+500ドルくらい押し上げる(個人的感想)ような良好な結果だったのですが、全く持って材料にならず。コロナパニック前の数字ですからね。コロナの影響を受けた(3月)の数字がでる4月が怖いです・・・

サウジアラビアとロシアの原油減産交渉決裂

コロナウイルス感染拡大の中、突然入ってきたニュースがサウジアラビアとロシアの原油減産交渉の決裂でした。

コロナウイルス感染拡大で景気減速が懸念される中、経済活動の低迷=原油需要が小さくなるため、2月中旬ごろからじわじわ原油価格が下落していました。

原油需要が日量400万バレル以上減少するとの見方が強まり 、3月5日・6日にOPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの非加盟国 /世界の原油生産の4割超を占める) が、その対応について協議していました。

OPECプラスは減産を提案しましたが、 ロシアは「減産を続けていれば世界の原油市場でのシェアを米国のシェール企業に奪われるだけだ」との難色を示し、協議は物別れで終了。

ロシアの対応もさることながら、それ以上に予想外だったのは、サウジアラビアが「原油政策を180度転換する」と表明し、サウジアラビア政府関係者は3月8日に「日量970万バレルの原油生産量を4月に日量1000万バレルを大幅に上回る規模に拡大する」としたことでした。

これにより原油先物価格(WTI)は1バレル20ドル台まで下落。トランプ大統領は「消費者にとってはガソリン代が安くなるから好都合」と言っていましたが、米国のシェール関連企業にとっては晴天の霹靂です。

2015年から2016年にかけて米国では原油価格の急落(このときも20ドル台まで下落)により100社以上のシェール関連企業が経営破綻しました。今回は、それをはるかに上回る深刻な危機に見舞われる懸念があります。

このようなことがあり、この日のNYダウは2013ドルの下落を記録しました。

WHOのパンデミック宣言からのトランプ大統領演説

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、まずカリフォルニア州で最初の死者が確認され、 カリフォルニア州が非常事態宣言を出しました。

その後、ワシントン州でも死者が確認され、どんどん経済の中心のウォール街まで広がっていきました。3月の2週目からはgoogle、amazon等のハイテク企業はもちろん、JPモルガン、シティバンク等の金融機関もリモートワーク化していきます。

3月10日、トランプ大統領が財政出勤・大幅減税を示唆するツイートをします。 新型コロナウイルスによる景気不安に対処するため、給与税の年内免除を軸とした大型減税を米議会に提案したという報道が広がり、期待感から、この日のNYダウの上げ幅は1,000ドルを超えました。

しかし、3月11日、とうとうWHOから”パンデミック”が宣言されました。

これに加えて、待ちに待ったトランプ大統領の演説では具体的な財政・減税政策は発表されず、結局”欧州(英国除く)から米国への渡航を30日間停止する“というものだけでした。

これによる失望感と、欧州・米国との経済活動制限から”世界のグローバル化が終わるのではないか”といった不安から、ブラックマンデー以来の株価下落(NYダウで△9.99%)を記録します。

米国国家非常事態の宣言

3月13日に米国が”国家非常事態”を宣言しました。

トランプ大統領は記者会見で「状況は悪化する可能性がある。今後8週間が重大な局面となる」とし、「連邦政府の全権を解き放つために、非常事態を宣言する」と表明した。さらに同宣言によって「新型コロナ対応に向け最大500億ドルの拠出に道を開く」と述べ、市場は財政支援策への期待からNYダウは1,985ドル戻しました。

今後の株価の見通し

日経新聞の記事によると、株価下落の進行速度はリーマンショックと同じスピードだそうです。ここまで20%~30%下げましたが、リーマンショック級となるとまだ5合目です。もう一段落ち込みます。

しかし、同時にリーマンブラザーズの倒産のように、なにか大きな金融システムのゆがみがあるようには思えません。

一方で、”低金利環境下でのバブルがはじけた調整局面“という見方もあるので、2月の水準から10%程度下のところまで回復して、あとは年末にかけてじわじわ戻っていくのではないかと考えています。

一番怖いのは、このまま新型コロナウイルスの感染拡大が終息せず、大きな航空会社や旅行会社が潰れて、市場に大きな傷を残してしまうというシナリオですね。

実態経済に大きな爪痕を残すことになるので、こうなるとなかなか立ち直りそうにないですね。

ゴールドマンサックスも3月11日にS&P500の年末予想を修正しました。もともと3400ポイントだった予想を、3200ポイントに引き下げています。

もう一段下げて、年末にはある程度戻るというように見ています。

米国金融機関の1月時点の年末予想はこちらでまとめています。

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