前回の続きです。
幹部との面談と言っても、幹部のマンションで行われるパーティーに参加するという者でした。
西新宿のとあるマンション。20階程度ある建物の11階。赤絨毯の内廊下。70平米の2LDKだったように思います。幹部は40代独身で一人暮らしとのこと。Bさん(マルチ商法の入り口に案内してくれた人)から聞くに年収は4000万円とのこと。土地代がほぼタダの田舎の無駄に広い戸建てで育った自分としては「そんなお金持ちでもこんな狭いところに住むんだ。」と斜に構えていましたが、あれから年を重ねて不動産に興味を持ち始めた今となっては羨ましい限りです。
そんな一室にぞろぞろと人が集まり、10人~15人でホームパーティーが始まります。
取り急ぎ幹部の方に挨拶しにいくと「おぉ。よろしく。」と親切な感じで悪い印象はありませんでした。そのあとはいつもの”貸し切りカフェ”と同様に要領で、すれ違う人たちと談笑していきます。一通りの参加者と会話をしましたが、美容師がやたら多く、大学生もちらほらいました。後々知ったのですが、美容師の方は年収が低いのでこういった副業にたどり着く方が多いのと、サラリーマンのように人間関係が固定されない、つまり数多のお客さんに出会うので勧誘する母数が多く、マルチ商法が展開しやすいとのことです。

ここでCさんという女性に出会います。年齢は30代前半だったかと思います。本人は薬剤師と言っていましたが、振り返ってみるとおそらく単なるドラッグストアの店員だったと思われます。ともあれ、Bさん(職業が資格教育関係)と同様に資格試験関係なので相対的には信用して接していました。
1~2時間程度お邪魔して岐路に付きます。帰り際にBさん、Cさんと
次回はシャンプーの紹介するね。
と会う約束をします。まだこの時点で自分はマルチ商法と認識していません。
また後日、先日の幹部の近くに住んでいるというCさんのマンションにお邪魔します。Bさんも同席です。ここでマルチ商法の仕組みの説明を受けました。

まず組織の長がいて、紹介された幹部自身が2層目に位置するということ。Bさん、Cさんはこの幹部の下部に組織するということ。私が加入するとなるとBさん、Cさんと同じ層に位置するとのことでした。また、在庫を持つことはなく、基本的に販売斡旋でリベートを受け取るというもの。月いくら売ったかでランクが変わるらしく、ランクによってリベート率が変わるというものです。
ランクによってリベート率が変わるということは、ランクにはルビー(初期ランク)とかサファイヤとかダイヤモンド(最上位ランク)があるらしいのですが、ルビーはリベート率3%とかダイヤモンドは10%というように上昇するというものです。しかも売上金額を3か月保たないとすぐに下位のランクに下がってしまうということで、かなりCさんは自前で購入して売り上げのかさ上げをしているとのことでした。
さらにある程度ダイヤモンドクラスを維持すると”子供”が持てるようになります。自分の子供に位置する会員を5人ダイヤモンドランクにするとさらにリベート率上昇なり組織全体からの配当が行われるようになり、感覚的に20人~30人ほど”卒業者”を生み出すと、完全な不労所得になるようです。

もちろん当初の説明であったとおり、こういった収益構造に身を置かなくても、「ただの購入者」として会員登録するのも可能でしたが、「自分で購入した分もマージンで返ってくる」という仕組みでしたので
在庫持たないから良いか
という気持ちで収益構造に身を置く会員制度に登録します。
補足するとそれまでシャンプーに対しては大学時代からそれなりに投資していました。市販のものは一通り試したことに加え、最終的には二本で5000円という学生にとっては高価なものを常用していました。一方で、マルチ商法のシャンプーは1本1000円程度でしたので、自分にとっては安いものでしたので、試す価値はあり!という判断に至ったわけです。
ということで、申込用紙を貰って帰り、自宅で書き込んで会員登録と商品注文をして、ほどなく商品(シャンプー)は手元に届きます。明細書を見ると200円程度マージンとして別管理されているのを確認しました。(初期キャンペーンとしてマージン割合が高かった記憶があります。)
ちなみにCさんのマンションでは、空気清浄機、電動歯ブラシ、浄水器、鍋・・・と
ありとあらゆるもの
がこのマルチ商法関係の商品でした。
マルチ商法と言う言葉は知っていましたが、この界隈は「在庫を持たない」という仕組みでしたので、マルチ商法に該当するかはこの時点まで気が付きませんでした。ただCさんが
「浄水器3個買ったんだよね。」
という話をしていて「これはやばいやつだ。」と思ったのは鮮明に記憶しています。一つ10万円以上する商品だったのですが、もちろん良い商品ならどんな背景であれ買うのは理解できます。ただの1Kであり、キッチンに蛇口が一つしかないのに3個買う意味が分かりません。もちろん2個は箱のまま置いてありました。

ここからは好奇心が勝っていきます。
この話の結論として、このシャンプーしか購入しませんでしたが(もちろんリピートもなし)、マルチ商法界隈のことを知ってみたく、呼ばれれば参加するというスタンスを貫きます。とはいってもこの後片手ほどしか顔を出さなかったのですが、商品説明と言う名のアパートの一室(幹部とは別)に数人が集められ、通販の実演のようなものを聞かされるものや本社に集められて幹部たちのありがたい話を聞くというイベントに参加します。
商品説明とは、おそらく誰も住んでいないようなアパートの一室に、所狭しとこのマルチ商法関連の商品が並べられており、おそらく自分より少し早く加入した人たちが通販番組のように商品の良さをプレゼンするという会です。Bさん、Cさんが監督のような立場にあり、とある二人組が自分を含めた新人2人に対して商品の凄さをアピールしていきます。なお、説明者2人と一緒に聞く側になった1人はこの日初対面です。

拙いプレゼンを聞くのもつらかったのですが、サプリメントや浄水器の他に、金属の研磨剤も「良く錆が落ちるんですよ。」と10円玉を使って説明していたときは「商材はなんでもあるんだな。」と感心しました。
もう何回か顔を出していたら自分もプレゼン側になっていたかと思うと恐怖です。
プレゼンを熱心に聞いていたせいか、次は「本社で行われる総会に出てみない?」と誘われました。結構有名な界隈でしたので、本社と言う機能があるらしく、その本社のホールで行われる会議に参加しました。ホールは本格的で500人程度は入れる大きさで、その日は満員どころか立ち見が出るほどでした。幹部が入れ替わり立ち代わり、自分の加入したきっかけや成功(=不労所得)までの道のり、これからの人へのお言葉と一人30分くらいで喋るというものです。

デザイナーだったり普通の営業職だったり人との接点が多いのが印象的だったり、最初はボロアパートの一室から始まりこれ一本で生活できるようになるまで10年はかかったということで(短い人でも5年)、YOUTUBERのように1~2年で成功したという人と比較すると、今考えればこれはこれで全うに生きてきたんじゃないかと思えるほどです。笑
ここで偶然隣に立っていた人との会話が印象的でしたので今でも覚えています。
別の派閥(属する幹部が異なる)の人でこの場限りの人でしたが、同世代の人でした。元々は美容師をしていたとのことです。ここ1年ほど頑張っているとのことで、かなり野心溢れた人でした。今は美容師を辞めてコールセンターで働いているとのことで、「なんでわざわざ稼げなそうなコールセンターに転職したんですか?」と聞くと、「この仕事(マルチ商法)にフルコミットするために時間の融通が利く職業にした。」とのことでした。てっきり
マルチ商法は副業
的な位置のものかと思っていたので驚きました。今後そのフルコミットせざる得ない状況を垣間見て、この界隈からの脱走を試みることになります。
さて地方の大学から上京してきたため、地元や大学の友達もおらず、内定者懇親会にも出られず社内の友達するら片手しかいなかった身ですから(今も変わりませんが)暇を持て余していたため、ほんの2か月の間にここまでの出来事を経験しました。浄水器事件を目にしてやる気は全くなかったのですが
はたから見ればやる気十分
の人間に見えてしまうことは否定できません。そのため幹部から「やる気のあるやつがいる。1対1で話をしたい。」とBさんから伝えられます。


