株価が調整しています。とはいえ、調整は4%程度で、それより為替が急激に円高に進んだことが痛いですね。
ちょうど「バフェット指標」が騒がれています。バフェット指数とはアメリカのGDPに対するアメリカ株の時価総額を示すもので、2024年7月15日に過去最高の200%を記録しました。2021年11月に記録した197%を上回っており、株式市場に警戒感が広がった矢先でした。
- Warren Buffett’s go-to market gauge surged to a two-year high of 184%.
- The “Buffett Indicator” compares the stock market’s total value to the overall size of the economy.
- Buffett has warned that buying stocks at a reading near 200% is “playing with fire.”
今年に入って円安・株高となかなか新しい投資に二の足を踏んでしまっているので、株価調整・円高と重い腰を上げるときがきたのでしょうか。
さて、話は変わりますが、相場の調整局面となると
必要なのは精神力
です。過去の経験から、こういったときにエントリー(新規投資)しなければいけないのは頭ではわかっているのですが、「もっと株価は下落する」「もっと円高になってから」と考えてしまいます。結局は最適なタイミングで市場に入るのは”運”でしかないのですが、あと一歩というところはスポーツ選手のメンタルトレーニングのような気がしています。
このようにモヤモヤしているときに、「今が最適」とか「まだまだ下がる」といった報道・記事を見てしまうとより迷わされます。それをより深堀ってしまうと「投資で簡単に稼いだ」という話を見るようになってしまい、冷静な判断をより失うというか、不要なリスク・自分の許容を超えたリスクを取ってしまいます。
そのようなとき、自分を客観的に見るためというかメンタルをフラットに保つために「なぜ宝くじに当たった話が儲かるのか」ということを思い返します。
宝くじのほとんどの要素は運です。確率は2000万分の1とも言われています。ほとんど当たらない確率ですが、それは”ほとんど”であって、2000万人が参加するゲームならば1人は当選します。ゲーム全体で見ればまさに奇跡としか得ない事象(確率)でも、当たった本人からすれば人生で宝くじを買ったほんと10回目の出来事であって、「意外と当たるもんだな。」と思っても仕方がありません。
宝くじは運要素のみで、一般的に確率も認知されているので、「また10回買えば1億円当たるだろう。」とか、無邪気に「何回か買っていればすぐ当たるよ」と知人に勧めたりはしません。しかし、これが企業とかマルチ商法とか、少し情報がない世界になると、悪気もなく他人に対してかなり客観的な確率を無視した説明をしているのを目にします。
これをサバイバルバイアスといい、生き残ったからこそ、あたかも成功する確率を高く認識してしまうバイアス(偏り)のことを言います。
実際、私の高校・大学時代のそれぞれの友人(計2人)も、そういったサバイバルバイアスになびいてしまい友人関係を断ちました。たしかに(例にも漏れずルノワール的な喫茶店で)話を聞いていると1000人に一人くらいは不労所得を得られそうに思えますが、それを10人に1人くらいは達成できるように聞かされると「なんだかなぁ。」と思いましたし、彼らはそれを信じているのでしょう。
芸能人やお笑い芸人、最近ではYOUTUBERなんかまさにそうですね。知り合いの子供の小学生が「おれは将来YOUTUBERになる」と言っているらしいのですが、彼らは一握りの成功者”のみ”画面で見ているのであって、その裏にはその何万倍の失敗した事象を無視して物事を捉えてしまっているのです。
彼ら(成功した人)は確かにすごいですが、1回しかない(繰り返しの利かない)人生に偶然最初の1回で成功しただけであって、再現性がないのです。
彼は100万回人生を繰り返しても、ほとんどの場合、守衛をしている。(そして100万回のうち1回だけニュージャージー州の宝くじに当たるのだ。
これを、「投資家はなぜ運と実力を勘違いするのか」という著書で、ナシーム・ニコラスが「見えない期待値」と紹介しています。
事前の期待で歯医者は間違いなく、ピンクのロールスロイスでお迎え付きのロック・ミュージシャンや、印象派の絵の値段を吊り上げている投機家や、自家用ジェットのコレクションを持っている起業家よりもかなりお金持ちだ。
ロシアンルーレット(拳銃に1発だけ球を込めて引き金を引くやつ)も同じような話で、ロシアンルーレットに成功した(=球が発射されなかった)からと言って、その人は不死身であるということではありません。残りの見えない人生のうち、誰かは死んでいるのですから。
X(旧Twitter)でもまさにこの「見えない確率」について説明されている方がいました。この人も1億円までは実力(運用要素を極力省ける)と言っていますが、それ以上は運用要素が強く、自身が再度同じことをしても99.9%失敗するだろうとのことです。
「たまたま友人から、スタートアップを作っていずれ上場するという投資話が来ました。正直なところ、今だったら怪しいと思って絶対にやらないような話ですね……。なぜ乗ったかというと、実は当時ちょうど離婚を経験していまして、精神的にかなり病んでいました。『もうどうにでもなれ』じゃないですけど、人生一度しかないし思いっきり挑戦してみようかと投資しちゃったんですよね」
だが、そのスタートアップはうまくいき、数千万円の投資額が10億円近くにもなった。そこで弾みのついたマサニーさんは、スタートアップ投資に興味を持ち、他にも投資してみることに。
「5年以上スタートアップ投資をやっているんですけども、物事をロジカルに考えるのも不得意なので、何か嗅覚というか勘みたいなので投資をしています。もちろん全部成功したわけではなく、10社投資したとしたら8社くらいは紙屑になり、たまたま2社うまくいくくらいの割合です」
スタートアップ投資で、資産5000万円から資産40億へ。しかし、マサニーさんは「まったく再現性がないし、おすすめもしない」と強く念押しする。
「本当に運です。運要素が99%くらい。今同じ状況になっても投資はできないですね……。インデックス投資とか、もっとリスクを取らない方法でお金を貯めていると思います。僕は当時、本当に精神的に病んでいたんです」
東洋経済ONLINE 「40代で「資産35億」築いた男の脅威の”ドケチ時代”」より
とはいえ、全て運要素だからって諦めていたら何も得ることはできません。1%かもしれませんし、0.01%かもしれませんが何かしらチャンスがあるかもしれません。リスク取るということは闇雲に変動率を許容することではなく、こういった不確実なときにきちんと行動を起こせるか?ということも重要なファクターだと思います。ですので、いつなにが来てもいいように、しっかりリスクポジションを把握し(=ゲームに長く残ってチャンスを得るために)、適切なタイミングでチャレンジできるように準備していきたいものです。