債務上限問題が決着しそうです。
債務上限の効力を2025年1月まで停止する財政責任法(Fiscal Responsibility Act)が、5月31日に下院を通過し、上院でも6月1日夜に可決し、あとは大統領署名を待つこととなりました。イエレンさんの言っていた5日ぎりぎりになりました。
3回目のトップ会談になる27日に、民主党バイデン大統領と共和党マッカーシー下院議長が基本合意(an agreement in principle)に達したという報道があり、一方で議会での法案可決に手間取るというリスクも取り沙汰されていました。
額面1兆ドルの政府硬貨発行や憲法修正第14条の解釈の”裏技”を使うという選択肢もありましたが、正攻法で事が収まりそうです。
振り返れば、議論の最中、格付会社フィッチは24日に、米国債の信用格付けを現状の最高位「AAA」から、格下げ方向で見直す可能性がある「ネガティブ・ウオッチ」に指定するといった話もありました。債務上限を巡り政治的対立が続いており、いわゆる「瀬戸際政策」がとられていることをその理由に挙げています。
Debt Ceiling Brinkmanship: The Rating Watch Negative reflects increased political partisanship that is hindering reaching a resolution to raise or suspend the debt limit despite the fast-approaching x date (when the U.S. Treasury exhausts its cash position and capacity for extraordinary measures without incurring new debt). Fitch still expects a resolution to the debt limit before the x-date. However, we believe risks have risen that the debt limit will not be raised or suspended before the x-date and consequently that the government could begin to miss payments on some of its obligations. The brinkmanship over the debt ceiling, failure of the U.S. authorities to meaningfully tackle medium-term fiscal challenges that will lead to rising budget deficits and a growing debt burden signal downside risks to U.S. creditworthiness.
FitchRatings ホームページより
2011年には、今回と同様に大きな政治的混乱の末、「Xデー」の数日前に債務上限は引き上げられ、デフォルトは回避されたが、その数日後に大手格付会社S&P社は、米国債の格付けを最高位のAAAから引き下げました。その結果、デフォルトは回避されたにも関わらず大幅な株安やドル安が引き起こされたことが、今回の騒ぎの根底にあります。
議会可決でも、下院は共和党多数・上院は民主党多数のねじれ状態でしたが、下院は賛成は314票、反対は117票で通過、上院は賛成は63票、反対は36票で無事通過しました。下院(定数435議席)で多数派を握る共和からは222票のうち71票が反対に回り、2票が棄権でした。
株価のほうは、米国債務上限問題の解決を受けて、6月2日は上昇しました。エヌビディアの大幅上昇を受けて好調だったナスダック指数とは反対に、年初来ではマイナスパフォーマンスだったNYダウもこの件を受けて700ドル(2%)上昇し、年初来でプラスに返り咲きました。
雇用統計の発表もありましたが、金利は上昇。1か月前と比較すると、全体的に上昇していることが分かります。
VIXはこの日、コロナ前の2022年2月以来となる14台まで低下しました。