米議会は1月7日、上下両院合同会議を開いて民主党のジョー・バイデン前副大統領(78)の次期大統領選出を確定しました。これを受けて、バイデン氏は20日正午に第46代米大統領に就任することが決まりました。
11月3日の国民投票で両者いずれからも敗北宣言が出ず、12月14日の選挙人投票でも勝敗が明確に確定せず、最終的に議会での確認を得て、正式に大統領に就任する運びとなりました。(襲撃事件等ありましたが。)
大統領選挙選始まる前は、「翌年(2021年)まで大統領が決まらないと、大きく下落する!」などと言われていましたが、蓋を開けてみると、なんんだかんだマーケットは新型コロナの感染再拡大も物ともせず、追加経済対策を材料に上昇してきました。
バイデン次期大統領の経済対策案公表
さて、バイデン米次期大統領は大統領就任が決まってすぐの1月14日、1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナウイルス対策を公表しました。
バイデン氏はデラウェア州ウィルミントンで演説し、「われわれは今、行動しなければならない」と呼び掛けた。その上で、来月の上下両院合同会議で第2弾のより広範な経済回復プランを公表すると述べた。政権移行チームによれば、同プランにはインフラや気候変動対策など一段と長期的な開発目標向けの資金が含まれる。
bloomberg(2021/1/15)より
- 直接給付金を昨年12月承認の600ドルから計2000ドルに増額
- 失業保険給付、9月まで400ドル上乗せ
- 州・地方自治体への支援金3500億ドル
- 最低賃金の時給15ドルへの引き上げ
- 学校再開支援1300億ドル
- ワクチン・コロナ検査などに1600億ドル
- 賃貸・小規模家主支援300億ドル
- 保育サービス業者に250億ドル
- 食料支援拡充
- 子育て税控除拡充
- 傷病・家族休暇拡充
バイデン氏が米経済復興の柱とする「バイデノミクス」では、環境インフラや製造業への投資、社会保障の拡充などで、10年間の歳出規模が11兆ドルに上ると試算され、増税でまかなっても、財政赤字は5兆ドル以上、膨らむ恐れがあります。
懸念されるのは、金利上昇です。しかし、財務長官に指名されたイエレン氏は、FRBの前議長でもあり、財政・金融政策の一体化による「高圧経済政策」への期待は高いと言われています。米国や日本の市場関係者の間では、巨額経済対策などを背景に「バイデントレード」が当面続くとの強気の見方が強く、「21年もS&P500指数は2ケタの上昇率に達するだろう」(米インベスコのクリスティーナ・フーパー氏)という声もあります。
世界恐慌再来の恐れ
大型経済対策によるバブル懸念は尽きないですが、「世界恐慌の再来になるのではないか」という記事が気になりました。
世界恐慌とは、1929年10月24日「暗黒の木曜日」以降のNY株価の暴落を呼びます。株価は「暗黒の木曜日」からの1週間でピークの約半分まで下がり、S&P500は3年間で約86%下落しました。その後、直前に付けたピークを塗り替えるまでに25年(1954年)かかりました。
第1次大戦後の恐慌を克服した米国は、戦争で生産設備が破壊された欧州とは違って戦場にならなかったこと、また海外資本の流入と普及後期にあった自動車産業の活況などで未曾有の繁栄状態にありました。そのため、海外から流入する過剰資本は銀行の貸付拡大を梃子として株式投機、土地投機に拡大して「バブル」の様相を呈していました。
株価上昇の反動をきっかけに株価が下落し、それがバブル崩壊と銀行の倒産へとつながり、強烈な景気の後退が訪れる結果となりました。米国経済は、金融不安が拡大したこと、金融政策において金本位制の足かせにより十分な流動性を供給できなかったことなどさまざまな要因によりGDPが4年間で半分程度まで縮小するなど、未曾有の低迷を30年以上続けることとなりました。(まるで今の日本のようです。)
当時のファーバー大統領(1929~1933)は不況は周期的なもので、景気はまもなく回復すると考え、また「自由放任主義」、つまり市場原理に任せておけばいいという従来の共和党の基本方針を守ったため対応が遅れることとなりました。加えて、国内産業を保護して高賃金を維持することによって恐慌の克服をめざした保護主義貿易を実施(1930年のスムート・ホーリー関税法)しましたが、諸外国も対抗して高関税策を採ったため、世界貿易は減少し、かえって恐慌をさらに深刻なものにしてしまいました。
1933年のルーズベルト大統領によるニューディール政策により、1935年前後の株価の上昇が示すように、大恐慌はいったん終息しかかります。しかし1937年に、FRBがそろそろいいだろうと、政策の正常化へ預金準備率引き上げという「出口」に動いて程なく、株価は急反落。結局、第2次世界大戦の戦争需要まで、不況とデフレが続く事態になりました。米政府は大量発行する国債の金利を抑えるため、FRBに国債価格支持策(国債金利上限維持策)を課し、金融政策を縛り続けました。
ニューディール政策はそれまでアメリカの歴代政権が取ってきた、市場への政府の介入も経済政策も限定的にとどめる古典的な自由主義的経済政策から、政府が市場経済に積極的に関与する政策へと転換したものであり、第二次世界大戦後の資本主義国の経済政策に大きな影響を与えた。
wikipediaより
今回の政策公表は、JPモルガンを含めた銀行業界の予想の2倍であり、市場だけでなく、米国経済全体でポジティブだと言われている一方で、インフレーションリスクや上記のような下落リスクに注意しなければいけません。