コーポレートガバナンス・コードが改訂されて1年が経ちます。

金融知識

以前、村上世彰氏の「生涯投資家」を読んで、コーポレートガバナンスは重要だなぁという考えを持ちました。

今回は、コーポレートガバナンスについて、少し書きたいと思います。

コーポレートガバナンスコードとは

そもそも村上氏の言葉を借りると「コーポレートガバナンス」とは

コーポレート・ガバナンスとは、投資先の企業で健全な経営が行なわれているか、企業価値を上げる=株主価値の最大化を目指す経営がなされているか、株主が企業を監視・監督するための制度だ。
根底には、会社の重要な意思決定は株主総会を通じて株主が行ない、株主から委託を受けた経営者が株主の利益を最大化するために経営をする、という考え方がある。

生涯投資家( 村上世彰)

コーポレートガバナンスについては、日本でも注目が高まっていると言うことを書きました。

その大きなきっかけとしては、コーポレートガバナンス・コードの公表(2015年6月1日)かと思います。

コーポレートガバナンス・コードでは、上場企業に対して、「企業の体制をこうしなさいよ」と定めたものです。加えて、「コーポレートガバナンスに関する報告書」を、有価証券報告書と同様に開示することが求められています。

コーポレートガバナンス報告書は東証HPで誰でも閲覧できます。

報告書に記載する内容は

  • 社外取締役の人数
  • 取締役の選任方法
  • 株主総会の在り方
  • 持合い株式

と、いわゆる企業の内部体制に関する内容です。

似たような意味にコンプライアンスという言葉がありますが、これは法令遵守であり、ガバナンスはあくまで努力義務に近いものです。

コンプライ・オア・エクスプレイン

コードは法律ではないので、コーポレートガバナンスコードはソフトロー(soft law)という言い方をします。逆の言葉は、ハードロー(hard law)=法律です。破ると罰則があります。

ソフトローは破っても罰則がなく、守るか守らないか(コードの内容に対応するかしないか)は企業の判断になります。

例えば社外取締役に関する内容

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】

独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。

例えばコードでは「独立社外取締役を少なくとも2名以上専任しよう」と言っていますが、守らないとなると企業のイメージがダウンし、株価が下がり、資金調達の際にデメリットが生じるといった可能性(日本市場では今のところ見てる投資家は少ないと思いますが)があります。

なお、コンプライ・オア・エクスプレインという考え方があって、守らないときはその理由を明記することになっており、無理に社外取締役を3人にするとか、政策保有株をゼロにする必要はないです。

例えば以下のようなことをしっかり説明する必要があります。

・うちはマニアック過ぎる商材を扱っているので外部の人を入れるメリットはない
・この政策保有株がうちの業績に良い結果を与える見込みがある

投資家に対して、その企業のガバナンスの趣旨が伝わればいいという意味合いがあります。

とはいえ記載内容は、「あの会社もそうしていたからうちもそうしよう」「形だけは整えよう」という横並びの文化とそれに対して何も言わない投資家(特に政策保有株式)が、この国には蔓延しているので、本当にコーポレートガバナンス報告書の内容が株式投資の定性評価項目になるといった動きになるかは分かりませんが。

コーポレートガバナンス・コードの成り立ち

では、なぜ今さらこんな教科書的な流れになったのでしょうか。もともとは海外の流れです。

アメリカでもエンロン事件や、イギリスでもフォルクスワーゲン事件があり、イギリスがまずコーポレートガバナンス・コード(2010年)を策定しました。

映画にもなってました。

加えて日本では「ROEが低い、会社の資本を活用できていない、投資家に喧嘩売っているのか」という海外投資家からの非難や、日本側も「平成に入ってから全然成長していないじゃないか」という危機感もあり、政府主導で検討が始まりました。

注:コーポレートガバナンスの概念は同じですが、日本の目線と米国・英国等の目線とは発端が少し違います。

そして、2014年の日本再構戦略改訂2014(2014年6月閣議決定)で、コーポレートガバナンス・コードの策定が決定され、金融庁や東京証券取引所の主導のもと内容が検討され、2015年6月に公表されました。

その後、2018年6月に改訂されました。

ちなみに日本再構戦略は落合陽一さんのパクりではないです。落合陽一さんが、政府のほうをパロってます。

日本再構戦略は政府(与党)主導で決定する日本の中期計画みたいなものです。

これをベースに各省庁の方針が決まるので、その後の予算案や税制改正大綱等にも影響し、日本の今後の計画(社会保障の方針や高速道路空港の建設、増減税)が決まっていくわけですね。

日本の場合、あくまで上場企業(約3,500社 2019/4現在)のみ義務化されていますが、今後どのように経営環境、市場環境に影響していくかは未知数です。

村上良彰氏が著書「生涯投資家」で言っているとおり、個人的にはもう少し攻めの経営をしてもいいんじゃないかと思います。

そしたら、もう少し日本株の保有率を上げたいと思っているのですが。

「生涯投資家」を読んで影響もあって、個人的にはコーポレートガバナンス・コードの導入には賛成です。

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