失業率上昇とソフトランディング期待。

インフレショック

1日に発表された米失業率は3.8%と、2022年2月以来の高水準を付けました。

非農業部門雇用者数は18万7000人増加。増加数は過去12か月の月平均(27万1000人)を大きく下回りました。この1年間の変化で見ると、やはりレジャーやサービス、ヘルスケアといった業種が雇用を下支えしているようです。

労働参加率は62.8%と、前月の62.6%から上昇し、2020年2月以来の高水準となりました。労働参加率が上昇しないことで、雇用市場がひっ迫し、人を集めるために賃金上昇→インフレ圧力となっていたため、良い兆候です。

年齢層別に見ると、25歳~54歳のゾーンについては83.5%と、コロナ前の水準を超えてきました。は過去の最高値近辺まで上昇した。また、55歳以上のゾーンがコロナ渦で戻らないことが問題視されていましたが、8月になって上昇の兆しを見せました。

人種別でも8月の雇用統計は動きがあり、黒人・ヒスパニックの失業率が低下した一方で、白人の失業率が上昇しました。

このような状況にあってか、平均時給は前月比0.2%上昇と、伸びは2022年2月以来の小ささとなりました。7月は0.4%上昇だったので鈍化傾向が見られます。なお、前年比では4.3%上昇(7月は4.4%上昇)でした。

通常使われる失業率はU-3と呼ばれ、就職意欲のある失業者の統計ですが、U-6と呼ばれるパートタイム就業者も加えた広義の失業率が7.1%と上昇しました。労働市場がひっ迫(売り手市場)しているため、企業の行動原理として「とりあえずパートタイマーで良いから雇用しておこう」という余剰人員を確保しておく戦略から、労働市場の流動性が出てきたため、「ある程度リストラしてもよい」という戦略に変化してきたことが伺えます。

U-3 失業率は、米国で最も一般的に報告されている失業率であり、積極的に職を求めている失業者の数を表します。 U-6 率は、国内の意欲を失った、不完全雇用、失業中の労働者を対象としています。U-6は「part-time workers(正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人)」、「marginally attached workers(縁辺労働者:現在は職を探していないが以前就職活動し働く用意のある人)」、「discourage workers(職探しを完全に諦めた人)」等を加えた広義の失業者の16歳以上の労働可能総人口数に占める割合です。

  • U-1:労働力人口に占める、15週間以上の失業者の割合
  • U-2:労働力人口に占める、解雇、及び一時契約期間完了者の割合
  • U-3:労働力人口に占める、失業者の割合(=公式の失業率)
  • U-4:U-3にディスカレッジド・ワーカー(職探しを諦めた人)を加算
  • U-5:U-4に縁辺労働者(家事や育児との兼業などで働けない人等)を加算
  • U-6:U-5にフルタイム求職にも関わらずやむを得ずパートタイム労働の人を加算
Investopedia等より

自発的な失業率も低下してきました。これも、労働市場がひっ迫していたため「転職すれば給料がすぐ上がる」という環境でしたが、そうもいかなくなってきたので、退職に踏みとどまるという人が増えてきたのかと思います。

このように、この1年ほど懸念されてきた労働市場のひっ迫が緩和されてきたように見えます。そのため、中央銀行幹部からもソフトランディング期待が高いような発言も相次いでいます。

FRB当局者らの自信強まる、米経済のソフトランディングは可能だ
米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らは、経済に強い痛みを感じさせずにインフレを抑え込むことができると、楽観的な見方を強めている。

注目されるのは次回FOMC(ドットチャートも出ます)です。一時期は利上げ確率が20%まで上昇しましたが、上記の雇用統計を受けて、現在は6%程度で推移しています。

年内はというと、意外と利上げorステイが50:50のようです。

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