国の借金が1000兆円でも大丈夫?MMTの話。

金融知識

MMT(Modern Monetary Theory)、日本語に訳せば現代貨幣理論、を聞いたことあるでしょうか。MMTの内容を簡単に言えば

自国通貨で借金(国債発行)できて、それを国内で消化できる国は、財政赤字や政府債務の大きさを気にせず継続的に財政出勤できる

というものです。

つまり、”国は借金し放題“ということ。

MMT支持派が増加

米民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員がMMTに支持を表明したことや、 MMTの提唱者の一人であり、米ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授が、 「MMT(現代貨幣理論)はよい経済を生み出す」 米メディアのインタビューで語ったことから、MMTという言葉は一般にも聞こえるようになってきました。

アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は、2018年の米中間選挙において29歳で下院議員当選・最年少下院議員になった経歴を持ち、若者の支持を集めています。

アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員

ステファニー・ケルトン教授は、2020年の大統領選に野党民主党からの出馬を表明したバーニー・サンダース上院議員の政策顧問です。

ステファニー・ケルトン教授

話は脱線しますが、よくトランプ大統領とバトっているナンシー・ペロシ下院議員長(民主党)といい、米国は女性の名前がよく出ますよね。日本は片山さつき議員くらいでしょうか・・・。

ナンシー・ペロシ下院議員長

MMTとは

MMTは、マクロ経済学の一つの考え方です。

マクロ経済学と言えば、財政政策や金融政策などの”経済を安定化させるための政府の手段”を考察する上で良く出てきますね。この辺はIS-LM分析の復習になります。

IS-LM分析

財政政策

財政政策は国債を発行する・公共事業に投資することによりお金をばらまき、強引に経済を活性化させます。

IS曲線 (財市場)

一方で、マネーが世の中に過剰に出回るので、インフレリスクや、金利上昇によりお金の流動性を阻害してしまい財政政策の効果が薄まる”クラウディングアウト”を誘発してしまいます。

また、国債発行により国の借金が増えるので、負担は将来の持ち越してしまいます。

金融政策

9月に各国で金融政策が実施されています。メジャーなところでいうと米国は0.25%の利下げ、EUもマイナス金利を△0.4%から△0.5%に引下げました。

日本は現状維持となりましたが、円高の行方によっては10月に何かしらの対応を実施する可能性が高い見込みです。

日本経済新聞より(2019/9/29)

金融政策は、 中央銀行が市場の金利を間接的に引き下げることでお金の流動性を高め、経済活動を促します。

LM曲線(貨幣市場)

例えば金利が3%から1%になると、お金を借りるとき(企業で言えば社債発行)の金利もこれも連動するので、お金を借りやすくなります。そうすると企業は投資を増やし、経済が活発化するという効果が生じます。

すでにマイナス金利を深堀したEUでは、マイナス金利で社債を発行する企業(独シーメンス等)も出てきました。

日本経済新聞より(2019/9/25)

金融政策は財政政策ほどのリバウンドはないと言われていますが、金利の低下水準には限界がありますから、やりすぎると使えるカードがなくなってしまいます。

日銀・EUはもうマイナス圏になってしまい、もともと中央銀行の金利で利益を稼いでいる銀行の収益を悪化させ、巡り巡って経済の不安定化を招いてしまうリスクや、超低金利でお金を借りれるため効率的な経営をしていない会社がいつまでも市場に残り続けるといった弊害があります。

MMT

MMTに話を戻します。MMT自体は1990年代に提唱されたもので、国の借金の償還期限がきたら、その分国債を発行すればいい、というものです。

しかし、際限なく国債を発行して市場にお金を流してしまうとインフレが起こるというのが経済の考え方です。

しかし、MMTではインフレも政府がコントロールできるとしていて、もし歳出増によりインフレが起こるのならば、増税するなりしてインフレを抑制できるというものです。

また、国債を発行し続けると、国債の過剰供給により金利が上がる(債券の価格が下がる)という懸念もあります。これも、その都度中央銀行が市場で買えばよい、とMMTでは言っています。

ただ、こうした考え方が成り立つためには政府が必ず国債を償還してくれるという信頼関係が必要であり、例えば国債の保有者が国内(身内)であることが肝心です。

他国の保有者が多い場合、少しでも経済危機の懸念があると一斉に国債を手放しますから、もちろん金利のコントロールはできなくなりますし、その状態で国債を発行しても買い手がいません。

MMTを実践している国

MMTを実践していると言われている国が世界に一つあります。

世界1位の国債発行残高(GDP比)である我が国”日本“。その額は1000兆円を超え、GDPの2倍を超えています。

毎日新聞より(2019/1/6)

平成30年度の国の一般歳入(国債発行除く)が65兆円ですから、年収500万のお父さんが、8000万円の借金をしているくらいのインパクトです。2010年に財政破綻が懸念されたギリシャですら当時150%程度

産経新聞(2018/9/21)

この先、日本は破綻しないのでしょうか。MMTをまさに実践しているがごとく、1000兆円の借金の貸手は日本銀行や国内銀行・生保と身内がほとんどです。

財務省ホームページより

いまのところ、日本が財政破綻する兆しも見えませんしね。

もちろん、日本は税収と国債発行・償還を切り離していないし、政策の枠組みが異なるので、「日本がMMTを実践している」というわけではありません。

先に述べたように、世界では金融緩和の動きが活発になっています。金融緩和は経済に対する痛み止めみたいなもので、あまり使いすぎると効き目が薄くなってしまいます。切れるカードが減ってきており、金融緩和限界論が強まっています。

MMTの実効性は困難だとしても、これだけ注目が集まっているということは、世界経済が難しい局面を迎えているということなのでしょうか。

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