金が上昇しています。ドルベース(SPDR Gold)だと年初来で25%ほど上昇しており、円高となっている円ベースでも15%ほど上昇しています。国内株はもちろん、外国株式、先進国株式がマイナスの中、圧倒的なパフォーマンスを出しています。

基本的に金への投資は以下の目的のために行われます。
- インフレ対策
貨幣価値が下がっても、金は「希少性」を維持するため価値が下がりにくい - 安全資産
戦争・金融危機などの非常時に価値が上がる傾向(例:2008年、2020年) - 分散投資
株や債券とは異なる値動きをするため、ポートフォリオの安定化に役立つ - 実物資産としての信頼
発行体リスクがない(倒産しない)
一方で為替リスクがあったり、債券や株のように金利や配当が出ないため、長期で保有すると機会損失になることも想定され、どの程度保有するかは悩むところです。
個人的には「債券や株のように金利や配当が出ないため、長期投資に不利」ということを気にしていたため、全く金投資はしていないのですが、過去の実績を見ると
危うく株式がリターンで抜かれそうになっている
ほどのパフォーマンスでしたので、少し金投資を検証してみようかと思います。
実績は過去5年、過去10年で検証しましたが、意外と金のリターンが高くて驚きました。また安定資産と言われる金ですが、意外とリスクが高かったです。債券(AGG)のリスクが5~7%に対して、余裕で二桁標準偏差でした。
過去5年 | 過去10年 | |
リターン | SPX : 13.68% GLD : 11.59% | SPX : 11.71% GLD : 8.57% |
リスク | SPX : 18.03% GLD : 14.26% | SPX : 15.28% GLD : 14.04% |
投資効率 | SPX : 0.7583 GLD : 0.8127 | SPX : 0.7668 GLD : 0.6099 |
分散効果を測る相関係数については、一般的に株式と分散効果がある債券と比較して、金に分がありました。
米国株との相関 | GLD | TLT | AGG | IEF |
5年 | 0.246 | 0.342 | 0.559 | 0.341 |
10年 | 0.085 | 0.119 | 0.364 | 0.118 |
実際のショック局面の騰落率を比較すると、金の「逆の動き」が顕著ですね。特に最近は株式と債券の同時下落が発生している中で、金のほうがしっかり分散効果を果たしている状況です。

株価急落時、市場関係者は「資金の逃避先」を探します。2010年ごろ以降、その資金の逃避先と目されるNY金先物、米国債ともに、ショック時の上昇率は低下しはじめました。特に米国債を選ぶ動きは、NY金先物を選ぶ動きに対して弱くなっています。ショックがあった場合でも、米国債が選ばれにくくなっています。
急落時の避難先、金(ゴールド)はポートフォリオの何%が最適解か? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア(写真:OsakaWayne Studios/Getty Images)※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。「急落時の避難先 金(ゴール…
なお、金にも下落局面が存在し、2011年8月23日に記録した最高値(ピーク)から
2015年末にかけて約45%下落
しました。(ドルベース)そこからの回復には約 4〜5年間かかっています。

この間、S&P500は60%以上の上昇を記録しています。為替は1ドル約80円から120円に推移したため、かろうじて金は円ベースで約10%下落で済んでいます。しかし、もし海外株式(当時は米国株式一本の投資信託がない・・・)に投資していたら同じ期間で2.4倍になっていたわけですが。

金相場を支えるニュースとして、各国・地域の中銀が金を購入しているというものです。
ゴールドマン・サックスのアナリストの推計によれば、各国・地域の中銀は月間約80トン、現行相場で約85億ドル(約1兆2200億円)のペースで金購入を進めている。その大半は秘密だが、中国が多くを占めることがデータで示唆されており、スイス経由で金を買っている複数の未確認の買い手もある。
各国・地域の中銀が積極的に金購入-月間80トン、85億ドルのペース世界各国・地域の中央銀行が金の記録的な強気相場の原動力となっている。実際の購入規模は謎に包まれているが、金買いの流れがストップすることはないと予想されている。
世界最大の金保有はやはりFRBであり、約8,133トン保有しています。この金は、米財務省が所有し、ニューヨーク連邦準備銀行などが保管しています。

しかし、FRB(米連邦準備制度:Federal Reserve Board)は近年金を購入していません。
アメリカの金保有量は 1970年代以降ほぼ変わっておらず、約8,133トンで維持されています。
一方で、中国が2015年と2022年に大規模な購入を実施したことや、ロシアが2014〜2019年にかけて積極的に金を買い増ししています。

足元はトランプ大統領の関税政策による”ドル”の信用不安から金価格が上昇しているように思え、インフレヘッジ・安全資産と言えどリスクは高く、歴史的にも右肩上がりに上昇してきたことではないことが分かりました。一方で株式との分散投資効果は否定できないことを考えると、10%程度は保有することがポートフォリオの安定化につながるように思えました。
金下がらないかなぁ。