運用評価ではどの収益率を使うのが良いのか。時間荷重収益率と金額荷重収益率の違い。

CIIA・証券アナリスト
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運用の評価において、収益率(利回り)の算定方法は複数あります。

恥ずかしながら、私も CIIA(国際公認投資アナリスト) を受験するまでちゃんと理解しておらず、「途中のキャッシュフローを簡便に見るか、細部までこだわるかの違い」くらいかなと思っていました。

CMA(証券アナリスト)の問題で出題されているかは記憶にないのですが(私が覚えていないということはあんまり出てないんじゃないかと思います)、CIIA(国際公認投資アナリスト)では比較的出題されるので、今回まとめたいと思います。

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収益率の種類

ちなみに今年のCIIA試験(2019年3月)でも出題されました。

過去問を解いていて、良く出るキーワードは以下の通り

これらの収益率の違い・使う場面の区別は、良く出る問題です。

  • 金額荷重収益率(MWR)
  • 時間加重収益率(TWR)
  • 内部収益率
  • (修正)ディーツ法
  • 厳密法

試験でも、過去に3回出題されています。

  • 2019年3月
  • 2017年3月
  • 2016年3月

金額荷重収益率と時間荷重収益率の違いは、キャッシュフロー(途中の入金・出金)を考慮するかしないかです。

例えばAさんが3年間で以下のような投資をしたとします。
NISA口座を作って、徐々に投資金額を増やしていったと考えてください。

ぱっと見ですと、1年目は投資額10万円に対して期末は8万円と、マイナスリターンになっていますね。
一方で3年間でみると、投資額合計が160万円(10+50+100)に対して、期末残高160万円と、20万円のプラスリターンとなっています。

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金額荷重収益率

内部収益率

まずは、金額荷重収益率(r)。キャッシュフローのタイミングに対して、以下のような算式になります。

この3次方程式を解くと、 約8.4%になります。
なお、期間が長くなっていくと(キャッシュフローの増減のタイミングが増えていくと)、高次の方程式を解くことになり、 収益率の算定が複雑になっていくことに気づくかと思います。

実は内部収益率も(修正)ディーツ法も金額荷重収益率の仲間です。

  • 金額荷重収益率を厳密に算出することが、内部収益率(IRR)※上記8.4%
  • 金額荷重収益率を簡便的に算出することが、(修正)ディーツ法

ディーツ法と修正ディーツ法

続いてディーツ法と修正ディーツ法を用いて計算してみたいと思います。まずは、ディーツ法の計算式は以下の通りです。rの3乗にしているのは、年率で算出したいからです。

これに数字を当てはめると、右辺=180万円÷160万円となり、ディーツ法による収益率(年率)は約4%になります。内部収益率の8.4%から大きく下がってしまいました。

同じ収益率なのになんで?と私も当初は考えていましたが、こういったところが様々な収益率が存在する理由です。

ディーツ法の場合、”キャッシュフローのタイミングを全て期初に行った”と見るからです。

上記の表でいうと、3年目に投資した100万円も、期初(1年目の最初)から投資していたと見なされるため、本来は1年で高い収益率を稼いでいたのにもかかわらず、3年間に薄められてしまうのです。

これを少し補正したのが修正ディーツ法です。算式は以下の通り。

期中平均とは「投資期間」で荷重平均した値を使います。つまり、1年目に投資した10万円は3年間のうち3年間投資しているので10万円、一方で3年目に投資した100万円は1年間しか投資していない(ポートフォリオに属していない)ので、1/3を乗じることとなります。

ちなみに、あまり数年単位で計算することは少ないので、基本的にはn/365を乗じることが一般的です。

そうすると期中平均キャッシュフローは、(10万円×3+50万円×2+100万円×1)÷3=76.7万円となり、修正ディーツ法による収益率(年率)は約8.0%になります。

分母の計算式は、分子に合わせて期末残高の中のキャッシュフローを、単純平均から期中平均に変換したと考えてください。(私がこれ以上よい解釈が思い浮かばず・・・)
だいぶ内部収益率の8.4%に近づきましたね。

※修正ディーツ法は、時間荷重収益率の一種だという意見もありますが、個人的にキャッシュフローを勘案するので金額荷重収益率に分類したほうが分かりやすいと考えています。

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時間加重収益率

時間加重収益率は、金額荷重収益率に比べて単純で、キャッシュフローの流れを完全に無視します。具体的にいうと、キャッシュフローのタイミングごとに期間を区切ってしまって、最後合計します。

3年間の累計は0.80×1.034×1.125=0.9306、年率にならすと 約△2.4%になります。
上記のようにキャッシュフローの生じるタイミングを全てとらえ、かつ全期間組み合わせる方法を時間荷重収益率といいます。上記の例では1年に1回キャッシュフローが発生していますので、1年毎に区切っていますが、毎日キャッシュフローが発生する場合でも同様にキャッシュフローの発生毎に区切って算出します。

本当に毎時でも毎分でもキャッシュフローの発生を捉えるものをまさに厳密法、日次にまとめてしまうものを日次法といったります。

やはり、キャッシュフローのタイミングを全てとらえるのは実務上難しいため、ある期間の内部収益率を算定し、それを組み合わせる簡便法という方法も存在します。

あれ?マイナスリターンになってしまいました。金額荷重収益率だと年率約8%だったのに。この違いがまさに金額荷重収益率と、時間荷重収益率の違いになります。

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金額荷重収益率と時間荷重収益率の違い

金額荷重収益率の場合、1年目の金額が10万円と小さいため、1年目のマイナスリターンが全体の収益率に与える影響が小さくなります。加えて、金額が大きくなった3年目のプラスリターンが全体に大きく影響して、全体の収益率が約8%という結果になります。

一般的な「資産全体の収益率を見たい」ということになると、金額荷重収益率が適しているかと思います。時間荷重収益率は、1年目のマイナスリターンが全体(3年間)の収益率を押し下げてしまっています。

逆に言えば、金額の大きさに関係なく該当期間の収益率を算定していることになります。これが何を意味するかというと、時間荷重収益率は運用者の運用能力を評価(比較)できることになります。

例えば運用者にAさん、Bさんの2名がいたとします。二人には上記同様、3年間で合計160万円の運用を任せるとします。

AさんとBさんのキャッシュフロー、期末残高は同じ(180万円)なので金額荷重収益率は同じです。

「ならば、運用能力は同じだからどちらに任せても結果はあまり変わらないでしょ」と思ってしまいます。しかし、時間荷重収益率を比較すると2人で大きく異なります。

運用者パフォーマンス(年率)
Aさん△2.4%
Bさん10.2%

分かりやすくいうと、キャッシュフローに変化を付けず、毎年100万円ずつ投資すると3年後(元本300万円)にはAさんは286万円、Bさんは365万円と80万円近いパフォーマンスの違いが生じることになります。

時間荷重収益率は、「投資額が多い時に起こした奇跡的なワンチャン(ハイパフォーマンス)」を平均化することができるため、運用者のパフォーマンスを評価するときに使用されます。

上記で言えば、金額荷重収益率だけでみると、Aさんの3年目のハイパフォーマンスだけが目立って、逆に1年目の失敗が投資額が少なかったためにごまかせたというところでしょうか。

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